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「トヨタ クラウン」は見た目も走りも大きく変わった(岡崎五朗レポート)

「トヨタ クラウン」は見た目も走りも大きく変わった
「トヨタ クラウン」は見た目も走りも大きく変わった

この記事は、 4 分で読めます。

日本を代表する高級セダン・トヨタクラウン。いまだにその人気は衰えないが、ユーザーの高齢化と輸入車の攻勢を受け、2018年6月に登場した15代目はスタイルも走りも大きく舵を切った。吉と出るか凶と出るのか?岡崎五朗さんの試乗レポートをお届けしよう。

日本代表にも悩みあり

日本代表にも悩みあり

クラウンと言えば日本を代表する高級セダンだ。それは台数的にたくさん売れているということだけでなく、社会的なポジショニングにおいてもそう。クラウンに乗っていればどこに行っても恥ずかしくない。それでいて「あいつは生意気だ」というようなやっかみを受けることもない。高級だけど高級すぎないその絶妙なさじ加減こそがクラウンの真骨頂。日本という社会でオーソライズされた唯一の高級車と言ってもいいだろう。

そんなクラウンにも悩みがあった。ユーザーの平均年齢がどんどん上がっているのだ。スポーティーグレードのアスリートの投入で一時は若返りに成功したが、その後平均年齢は再び上昇に転じ、このままでは先細りになっていくしかないという状況になっていた。なんとかして若いユーザーに振り向いてもらわなければ将来はない。そんな危機感の発露が先代で登場したピンククラウンだったわけだが、ピンクに塗ってみたところで若年層が振り向くわけもなく、むしろBMWやアウディを買っているような30代、40代の人なんかは「引いた」のではないだろうか?

 

筋金入りのクラウンファンが作った新型

筋金入りのクラウンファンが作った新型

そんななか登場したのが15代目にあたる新型だ。開発責任者の秋山さんは「クラウンが好きで、クラウンを作りたくてトヨタに入った」という人。そんな筋金入りのクラウンファンが下した結論は、ある意味クラウンらしさからの離脱とも言える大胆なものだった。

まず、ロイヤル、アスリート、マジェスタという3つの個性をなくし、1つに集約。そのうえで、クラウンの伝統である王冠エンブレムを配した太いCピラーをグンと細くしてそこに窓を組み込んだ。この「6ライト」と呼ばれる形状はクラウンとしては初の試み。クラウンらしさが薄れた、クラウンに見えないというネガな反応が出ることを承知の上で、新しさや乗降性を高めるために採用したという。

攻撃的な顔や絞り込んだリアも、クラウンらしさという点では退化と言っていい。しかし、オヤジセダンというイメージから脱却するにはこのぐらいの思い切った変化が必要だったのだと思う。

 

インテリアに残るクラウンらしさ

インテリアに残るクラウンらしさ

インテリアに残るクラウンらしさ②

インテリアに残るクラウンらしさ③

インテリアに残るクラウンらしさ④

一方、インテリアにはクラウンらしさが残っている。運転席ドアにあるトランク開閉スイッチは「お約束」だし、エアコンのスイングルーバーも実にクラウン的おもてなし。ナビゲーションも、ドイツ車やレクサスのような手元スイッチでの操作でなく、ツインディスプレイとすることで、タッチパネル式に慣れた既存ユーザーに配慮している。

 

出来が良いのは2Lターボ

出来が良いのは2Lターボ

エンジンは2L直4ターボ、2.5Lハイブリッド、3.5Lハイブリッドの3種類。売れ筋は2.5Lハイブリッドだが、乗っていちばん楽しいのは軽い2Lターボだ。3.5Lハイブリッドは速いことは速いがちょっと粗っぽいし、コーナーでは鼻先の重さを感じる。2LターボのRSグレードの走りは驚くほどスポーティーだ。

といってもガチガチに固めた足とクイックなステアリングという表面的なスポーティーさではなく、しなやかなでありながら揺れの少ない足と正確無比なステアリングの組み合わせという、まるでよくできたドイツ車のような方向性。BMWから乗り換えても不満を感じない仕上がり、と言えばわかってもらえるだろうか。

ほぼ同時にデビューしたカローラ・スポーツに乗って「こんなに運転が楽しいカローラは初めてだ」と感じたが、同じことがクラウンにも言える。

イメージは一夜で覆されないが・・・

思い切った若返り策を講じてきたクラウンだが、伝統のブランドということもあり、オヤジの乗るセダンというイメージが一夜で覆されることはないだろう。しかしクラウンは外観も中身も確実に変わった。従来のクラウンユーザーが新型に乗り換えたら、周囲の若い人たちの反応が今までとは違うことに気付くはずだ。

もしかしたら商工会議所の若手から「今度運転させてください」なんて言われるかもしれない。あるいは息子さんが「オヤジ、次の週末クラウン貸してくれよ」なんて言ってくるかもしれない。いや、その可能性はかなり高い。ブランドはそうして次世代へと引き継がれていくのである。

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※記事の内容は2018年8月時点の情報で執筆しています。

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