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5代目となるホンダCR-Vがようやく日本でも発売された。全世界で毎月6万台以上を販売するミドルクラスSUVの大ヒットモデルの日本導入はずいぶん遅くなったが、同じく発売が後回しになった欧州仕様ベースのものとなり、素晴らしい出来栄えになったようだ。岡崎五朗さんのレポートをお届けしよう。
世界で月に6万台が売れるホンダの3本柱のひとつ
シビック、アコードと並ぶホンダの3本柱の一角をなすのがCR−V。2016年に発売されるや72万台を販売。続く2017年の世界販売は76万台に達した。世界的なSUVブームを差し置いても、1ヶ月6万台というセールスはちょっと驚きだ。事実、CR−Vは世界でもっともたくさん売れているSUVだという。しかも76万台という数字は北米と中国がメインで、欧州と日本は含まれていない。欧州と日本での発売は2018年までずれ込んだからだ。
後回しになったぶん、一番イイのは日本仕様 !?
日本ブランドのクルマなのに、なぜ日本市場が後回しなのか? 開発責任者に軽くクレームを言うと、待ってましたとばかりにこんな返事が返ってきた。「岡崎さん、たしかに日本での発売は最後になりましたが、その分、熟成に熟成を重ねたモデルを投入できたと思っています。ぜひ乗ってみて下さい」。
CR−Vは地域によって様々な役割があるという。北米では女性が日常の足として使うケースが多く、中国ではプレミアムカーとして受け入れられている。では欧州では? ドイツに試験車を持ち込んで走り込むと、高速直進性やコーナリング性能など、いろいろな部分に手を入れる必要があることがわかった。そこでボディ剛性やサスペンションのセッティングなど様々な部分を練り込んだのが欧州仕様。それをベースに、最新のハイブリッドシステムなどを加えてきたのが日本仕様車だ。
まずまず合格点の1.5Lターボ+CVT
まずは1.5Lターボに乗る。最新のダウンサイジングターボらしく低回転域から太くフラットなトルクがでるため、動力性能には十分合格点が付く。トランスミッションは僕が嫌いなCVTだが、トルクに余裕があることに加え、制御が巧みなため、CVTにありがちなラバーバンドフィールをかなり封じ込めているのに好感がもてた。これならCVTでもいいかなと思ったほどだ。
ただし積極的に回していったときのエンジンフィールには注文を付けたい。ザラついた感触と、サウンドではなくノイズと表現できる音が聞こえてくる。トップエンドのパンチ力も物足りない。燃費性能を重視したロングストロークエンジンにそんな性能を求めるのは酷かもしれないが、ホンダ車にはついついそんなプラスαの魅力も求めてしまう。
走りと燃費のバランスが絶妙なハイブリッド
ハイブリッドは、アコードやオデッセイ、ステップワゴンと同じi-MMDと呼ばれる2モーター式。詳細は割愛するが、トヨタのTHSよりはモーター走行領域が広く、日産のe-powerよりは狭い。走行性能と走行感覚、燃費を高度にバランスさせた良システムだ。穏やかな発進から40km/hぐらいまではエンジンはかからない。強力なモーターのみで静かに走るEV感覚はなんとも新鮮だ。
アクセルを深めに踏み込むとすかさず2Lエンジンが始動。エンジンとモーターがタッグを組んで強力に加速していく。価格は張るが、燃費だけ出ない魅力があると考えれば購入検討する価値は大いにあるだろう。
ホンダ車でもっとも素晴らしい乗り心地
シャシーの仕上がりもいい。乗り心地はジェイドと並んでホンダ車中トップレベルの出来映えだし、重心の高さを感じさせない軽快なハンドリングも楽しめる。北米仕様には乗ったことがないが、開発責任者が胸を張って主張するように、このあたりは欧州を走り込んでボディから見直した効果だろう。
伝統を引き継ぐ巧みなパッケージング
CR-Vの魅力は走りだけじゃない。歴代CR-Vがもっていたパッケージングへのこだわりも大きなポイントだ。全幅があと5㎜小さかったらうちの駐車場にも収まったのに・・・という人が出てくるのは残念なところだが、4605㎜というSUVとしては比較的コンパクトな全長で広々した室内空間と大きな荷室空間を確保した空間設計には脱帽する。短距離用と割り切る必要はあるが、3列7人乗り仕様も選択できる。
価格の高さが指摘されているが、先進安全機能やナビが標準されていること、またクルマの出来映えを考えれば決して高すぎるとは思わない。ただしいまどきあの小さな画面のナビはちょっと、とは思う。
※記事の内容は2018年11月時点の情報で執筆しています。