日本ではコンパクトSUVが人気を集めるが、世界的にはミドルクラスのSUVに注目が集まっている。そんな世界を舞台に戦うのがマツダCX-5と日産エクストレイルだ。今年2月に2代目に切り替わったばかりのCX-5と、6月に自動運転支援技術「プロパイロット」を採用して話題のエクストレイル、ベストな選択はどちらだ?
世界中で人気なのはミドルクラスのSUV
いま新車で人気上昇中のボディタイプといえばSUV(スポーツユーティリティビークル)でしょう。アウトドア派はもちろん、最近では視界の良さやカッコ良いという理由で街乗りメインの方もチョイスすることが増えてきています。日本では一躍ベストセラーとなったトヨタC-HRにホンダヴェゼルが対抗するコンパクトSUVが話題を集めていますが、いま全世界で熱いのは、もう少し大きなミドルサイズSUV。国産車で該当する車種は日産エクストレイル、マツダCX-5などです。
この2台は世界戦略車ですが日本国内でも安定した人気があります。2017年上半期(1月~6月)の新車販売台数を見ると、コンパクトカーやミニバンに混じって日産エクストレイルは2万9383台で第18位、マツダCX-5は2万2844台で24位と善戦しているのがわかります。
今回は今年2月にフルモデルチェンジされたばかりのCX-5と、同じく6月に高速道路同一車線自動運転技術「プロパイロット」を搭載したエクストレイル、このミドルサイズSUVの人気モデル2車種を徹底比較し、どちらが買いかを紹介しましょう。
トレンドに乗ったスタイルと3列シートが武器
まず、日産エクストレイルです。現行型のエクストレイルは3代目となります。先代までの直線的で道具感のある外観デザインから、他社のSUVのトレンドに沿って曲線を多用したモダンなデザインに変更されたのが現行型の特徴です。また従来は2列シート5人乗りのみでしたが、現行型は3列シート7人乗りがガソリン車に用意されていることもアピールポイントでしょう。
搭載されるエンジンは最高出力147ps、最大トルク297Nmを発生する2L直列4気筒ガソリンエンジンと、そのエンジンに最高出力41ps、最大トルク160Nmを発生するモーターを組み合わせたハイブリッドの2種類となっています。2Lエンジンそしてハイブリッドともに高出力と優れた燃費性能を両立しており、JC08モード燃費は2Lガソリン車が15.6~16.4km/L、ハイブリッド車がさすがの20.0~20.8km/Lとなっています。
トランスミッションがCVTなので市街地ではスムーズですが、踏み込んでいくと特に非力な2Lエンジンはややダイレクトさに欠ける印象です。
定評ある4WDシステムは最新バージョンに
走行性能の面では最新の電子制御システムの採用がトピックです。特にエンジン出力などを制御することで、路面状況に関わらず上下動を抑える「インテリジェントライドコントロール」は、従来エクストレイルの弱点とされていた乗り心地の改善への貢献を感じさせてくれます。またコーナーやブレーキ時にCVTを変速させエンジンブレーキを作動させる「インテリジェントエンジンブレーキ」もドライバーの操作負荷低減に効果が確かにあります。
定評のある4WDシステムは搭載したコンピューターが走行条件に応じて、前後のトルク配分を100:0から約50:50まで瞬時に切り替えることで、滑りやすいやすい路面でも高い安定性を発揮する「ロールモード4×4i」に進化しました。最新システムらしく軽量化も実現し、燃費の悪化を最小限にとどめています。
「タフギア」はインテリアに健在
インテリアは全てのシート、フロア、ラゲージに防水仕様を採用。エクストレイル伝統のタフギア感はしっかりと受け継がれています。さらに、2017年6月にマイナーチェンジを行い、内外装のデザイン変更。リアバンパー下に足先を入れて引くだけで、バックドアの開閉が可能なハンズフリー機能付きリモコンオートバックドアを追加装備しました。
話題の「プロパイロット」をセレナに続き採用
しかし1番のニュースはセレナに採用され話題となった、高速道路においてアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動的に制御し、ドライバーをサポートする高速道路同一車線自動運転技術の「プロパイロット」を搭載したことでしょう。このプロパイロットの搭載によって従来のエクストレイルのもつタフギア感にオンロードでの先進性と快適性が加わりました。プロパイロットもあくまで「サポート技術」ですので、完全な「自動運転」ではないのですが、その「入口」の世界を体感することができるのは魅力です。
より低くワイドになった2代目CX-5
一方のマツダCX-5は2012年に初代モデルが登場、マツダの新世代技術群、「スカイアクティブテクノロジー」をフル搭載した第1弾として話題を集めました。そして2017年2月にフルモデルチェンジを行い2代目となったばかり。ボディサイズは全長4545mm×全幅1840mm×全幅1690mmで、好評だった先代モデルとほとんどサイズは変わっていません。CX-5は5人乗り2列シート車のみなので、7人乗りを用意しているエクストレイルと比べると全長は145mm短い一方で、全幅は20mm幅広く、全高は50mm低い、ワイド&ローのスタイリッシュな外観が持ち味です。
最新流行を取り入れ上質になった内装
また2代目CX-5のもうひとつの進化は内装の質感でしょう。ダッシュボードの低い位置に水平基調のラインを作る最新流行を取り入れ、手が触れる部分の素材に柔らかいものを使用するなど、欧州プレミアムと呼ばれるブランドたちに近づいた印象があります。
主力のディーゼルエンジンにも着実な改良が
CX-5に搭載されているエンジンは3種類。最高出力175ps、JC08モード燃費17.2~18.0km/Lという高出力と低燃費を両立した2.2L直列4気筒ディーゼルターボが主力エンジンです。そして最高出力190ps(4WDは184ps)、JC08モード燃費14.6~14.8km/Lの高バランスを実現する2.5L直列4気筒ガソリンエンジン。そしてFF車のみに搭載され、最高出力155ps、JC08モード燃費16.0km/Lを実現する2L直4ガソリンエンジンもラインナップされています。
すべてのエンジンが高効率化されていますが、なかでも2.2Lディーゼルターボエンジンはアクセル操作に対しての反応を良くする「DE精密過給制御」やディーゼルエンジン独特の音であるカラカラというノック音を低減する「ナチュラル・サウンド・スムーザー」などによって静粛性を高めています。
ミッションは全てのエンジンに6速ATが組み合わされます。欧州市場などを意識してCVTではなくトルコンATなのは運転が好きな人には評価が高くなるポイントでしょう。
一気に進化した4WDシステム、マツダ独自の車両制御も魅力
駆動方式はエンジンによって2WDと4WDを用意。4WDは「i-ACTIV 4WD」というシステムを搭載。ドライバーが感じ取れないほどわずかなタイヤスリップをリアルにモニターし、積極的に駆動力を自動制御することで高い走行安定性を発揮します。それまでパッとしなかったマツダの4WD、しかしこの「i-ACTIV 4WD」は一気に先頭集団に入ったと言われている優れモノです。
加えて、CX-5にもマツダ独自の「Gベクタリング」と呼ばれる車両姿勢制御が採用されています。これはドライバーが意識することなく、カーブでのクルマの傾きを抑え、揺れの少ない快適な乗り心地を実現する制御機能のこと。もっとわかりやすく書くと、コーナーで急にハンドルを切るなど「運転が上手ではない人」の助手席に乗ったとしても、クルマがカバーしてくれるので酔いにくいというメリットがあります。運転が上手くない人はあまり自覚がない(?)のでアピールが届きにくいのが難点ですが、これも優れモノの技術です。
先進安全運転支援装置も盛りだくさん
安全装備も「i-AVTIVESENSE」という先進安全技術群を搭載。走行状況に応じて照射範囲を変化させる「アダプティブLEDヘッドライト」をはじめ、0km/hから設定速度の間で先行車両に合わせて加速・ブレーキを行う「全車速追従機能付きマツダレーダークルーズコントロール」、衝撃軽減ブレーキシステムの「アドバンスドスマートシティブレーキサポート」などを一通り採用しています。
実力伯仲の2台、価格も同水準
オンオフ問わない走行性能そして優れた燃費性能。さらに充実した先進安全装備というポイントで見るとエクストレイルとCX-5は実力伯仲といえるでしょう。運転支援システムという点では高速道路を走行中にハンドルを修正し、車線の真ん中を走行させる「プロパイロット」を搭載している点ではエクストレイルのほうがリードしています。しかし、エクストレイルはプロパイロットをはじめとした先進運転支援システムがオプションとなっているのに対して、CX-5はプロアクティブとLパッケージには標準装備となっているのは美点といえます。
エクストレイル価格表
グレード 駆動方式 JC08モード燃費(km/L) 車両本体価格(東京) 20Xハイブリッド(5人乗り) 4WD 20 309万8520円 2WD 20.8 289万2240円 20Sハイブリッド(5人乗り) 4WD 20 279万6120円 2WD 20.8 258万9840円 20X(7人乗り) 4WD 15.6 282万7440円 2WD 16.4 262万1160円 20X(5人乗り) 4WD 15.6 275万5080円 2WD 16.4 254万8800円 20S(5人乗り) 4WD 16 240万4080円 2WD 16.4 219万9780円
CX-5価格表
グレード 駆動方式 JC08モード燃費(km/L) 車両本体価格(東京) XD Lパッケージ 4WD 17.2 352万6200円 2WD 18 329万9400円 XD プロアクティブ 4WD 17.6(17.2) 322万9200円 2WD 18 300万2400円 XD 4WD 17.6(17.2) 300万2400円 2WD 18 277万5600円 25S Lパッケージ 4WD 14.6 321万3000円 2WD 14.8 298万6200円 25Sプロアクティブ 4WD 14.6 291万6000円 25S 4WD 14.6 268万9200円 20Sプロアクティブ 2WD 16 268万9200円 20S 2WD 16 246万2400円 ( )は19インチホイール装着時
車両本体価格はエクストレイルが219万4080~309万8520円。CX-5は246万2400~329万9400円です。数字だけ見るとCX-5のほうが高く見えますが、オプション装備のプロパイロットを装着するとほぼ同じ水準になってしまいます。
オススメのグレードはエクストレイルが2Lガソリンエンジン搭載する20Xの7人乗りです。2Lガソリンエンジンは実走燃費の性能が高く、ハイブリッド車の価格差は安全装備の充実に投資したほうがいいでしょう。しかも3列シート7人乗りはエクストレイルしか選べないポイントです。
一方、CX-5は年間の走行距離が多い人はディーゼルのXDプロアクティブがオススメです。そして街乗り中心で雪道もほとんど行かないという都心に住むユーザーは2Lガソリンエンジンを搭載した20Sプロアクティブでも満足度は高いでしょう。人気のSUVとはいえ、使い方にあわせたエンジン種類、駆動方式を選ぶことが大切です。
SUV本来の使い方をするならCX-5
さて実力伯仲したこの2台ですが、結論を出しましょう。SUV本来の使い方である遠出をしたときのことを考えると、力強いディーゼルエンジンと組み合わされる賢い6ATを持つCX-5を私はおすすめします。ただ両車ともグローバルマーケットを意識して開発された実力車ですので、どちらを選んでも満足度は高いと思います。
※記事の内容は2017年10月時点の情報で執筆しています。