軽自動車で人気を集めるN-BOXやタントなどのスーパーハイトワゴンの波がコンパクトカーにも押し寄せている。小さなボディに最大限の室内空間を実現し、便利なスライドドアがその人気の秘密。今回はこのジャンルのパイオニア・スズキソリオと、ライバルのダイハツトール、トヨタルーミー&タンクを比較してみよう。
軽自動車では主流となったスーパーハイトワゴンのコンパクトカー版
軽自動車ではホンダN-BOXやダイハツタント、スズキスペーシアといったリアにスライドドアを採用したスーパーハイトワゴンが人気モデルとなっています。しかし、小型車では2010年に3代目のスズキソリオが登場するまでコンパクトハイトワゴンはニッチなカテゴリーでした。ところが2015年にソリオがフルモデルチェンジを行い、新開発のボディを採用した4代目ソリオを投入すると、たちまちスマッシュヒット。2016年の年間新車販売台数は4万8814台で18位にランクインします。
このソリオのひとり勝ちにストップをかけるべく、ダイハツトールをベースにしたトヨタルーミー/タンク、スバルジャスティの4兄弟車が2016年11月に登場。2017年の上半期の新車販売台数はトヨタルーミーが3万9111台で12位、トヨタタンクも3万4780台で15位にランクイン。いっぽう元祖のスズキソリオも2万6738台と健闘し、コンパクトハイトワゴンの市場は大きく拡大しました。今回はブームとなりつつあるコンパクトハイトワゴンの人気の秘密に迫ってみましょう。
さすがスズキ、室内空間の効率や使い勝手は抜群
コンパクトハイトワゴンのパイオニアである4代目にあたる現行型スズキソリオは2015年8月に登場しました。スタンダードのソリオと押し出し感を強めたソリオバンディッドの2種類が設定されています。新開発された軽量・高剛性のプラットフォームを採用し、従来と同じサイズをキープしつつながら、室内空間を拡大させているのが特徴です。
ソリオのボディサイズは全長3710mm×全幅1625mm×全高1745mmです。全長の短さが目立ちますが室内長はクラストップの2515mmを確保し、前後の乗員間距離は1080mmとゆとりたっぷりです。フロントシートとリアシート間の移動が可能なセンターウォークスルーも可能です。2480mmというロングホイールベースながら、最小回転半径は軽動車並の4.8mという取り回しの良さを実現しています。このあたりはスペースの制約が厳しい軽自動車での経験が生かされています。
なんとハイブリッドを2種類も用意するソリオ
搭載するパワーユニットは熱効率を高めた1.2L直列4気筒エンジンをはじめ、その1.2Lガソリンエンジンにモーター機能付発電機(ISG)と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたスズキ独自のマイルドハイブリッド、そして2016年11月には1.2Lガソリンエンジンに発電も可能な駆動用モーター(MGU)を組み合わせたスズキ独自のストロングハイブリッドシステムを搭載したモデルも追加しました。このストロングハイブリッド車にはキビキビとした走りが特徴の標準モードと、モーターだけによるEV走行の頻度を高めたエコドライブをサポートするエコモードを設定。両モードで約60km/h以下でのEV走行を一定速走行時に可能としています。
JC08モード燃費は1.2Lガソリンエンジンが22.0~24.8km/L。1.2LエンジンとISGを組み合わせたマイルドハイブリッドが23.8~27.8km/L。1.2LエンジンとMGUを組み合わせたストロングハイブリッドはなんと32.0km/Lを達成しています。
人も検知する自動ブレーキなど安全装備も充実
駆動方式は2WDを中心にガソリン車とマイルドハイブリッド車には4WDも用意しています。安全装備はフロントガラスに内蔵されたステレオカメラによってクルマの動きだけでなく、人の動きも捉えるデュアルブレーキサポートを搭載。衝突回避軽減ブレーキの自動ブレーキ機能をはじめ、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能など、非常に充実しています。
ソリオの車両本体価格は145万4760~206万2800円となっています。ソリオのオススメグレードはディスチャージヘッドライトやナノイー内蔵のフルオートエアコン。そしてワンアクションパワースライドドアを標準装備したマイルドハイブリッドのMZ。ちなみにソリオは三菱にOEM供給されデリカD:2としても販売されています。
ダイハツが持てる技術を惜しみなく投入した4兄弟
続いてはトヨタルーミー/タンクです。この2台は前述のようにダイハツが軽自動車で培った技術力と生活密着型の商品提案を小型車にも展開したダイハツトールがベース。加えて、スバルにもOEM供給されジャスティとして販売されています。モデル体系はいずれも標準モデルとエアロ系モデルの2本立てで、ルーミー、ルーミーカスタム。タンク、タンクカスタム。トール、トールカスタム、ジャスティ、ジャスティカスタムの8モデルが設定されています。
ルーミー/タンクは軽ハイトワゴンのダイハツムーヴで採用した技術を応用した高剛性ボディと、高速走行時の直進安定性を高め、ハンドルを操作した際のクルマの傾きを抑えるDサスペンションと呼ばれる足回りのセッティングが施されています。
ソリオを研究したクルマ作り
ボディサイズは全長3700mm(カスタムは3725mm)×全幅1670mm×全高1735mmです。室内長は2180mmを確保し、前後乗員間距離はソリオを上回る1105mmを確保しています。こちらも軽自動車で培われた使い勝手の良さが継承され、前後左右のフロントシートウォークスルーや、前席348mm後席366mmという低床フロアにステップランプや乗降用大型アシストグリップを採用することで優れた乗降性を実現しています。そして最小回転半径はソリオを上回る4.6m(15インチホイールは4.7m)という小回り性能を実現。あちらこちらにソリオを強く意識したクルマ作りがなされています。
燃費の点ではソリオに追いつけていない
搭載するエンジンは1L直列3気筒DOHCと1L直列3気筒DOHCターボの2種類。1L直3DOHCエンジンの最高出力69ps、最大トルク92Nmを発生。JC08モード燃費は22.0~24.6km/Lを実現しています。一方の1L直3ターボエンジンは最高出力98ps、最大トルク140Nmを発生。
JC08モード燃費は21.8km/Lを達成。ただハイブリッドを展開するソリオに比べると燃費性の点では少々物足りません。ミッションは全車CVTを採用し、駆動方式は自然吸気エンジンが2WDと4WD。ターボが2WDのみとなります。
こちらも安全装備はコンパクトカーの水準以上
安全装備はカメラとレーザーレーダーそしてソナーセンサーを組み合わせた衝突回避支援システム「スマートアシストII」を採用。衝突回避支援ブレーキ機能をはじめ、車線逸脱警報機能、誤発進抑制制御機能などによってドライバーの負担を軽減します。
ルーミー/タンクの車両本体価格は179万2800~200万8800円です。おすすめグレードはLEDヘッドライトや衝突回避支援パッケージ、スマートアシストIIを標準装備したカスタムG“S”です。
使い勝手のルーミー・タンクか、燃費と走りのソリオか
先行して発売したソリオに対して、後発モデルのルーミー・タンクは取り回しの良さや防汚シート付多機能デッキボードを備えたラゲージスペースなどユーティリティの面でリードしているポイントが多いです。しかし、ソリオは新設計のボディの採用をはじめ、パワーと燃費を両立したマイルドハイブリッドそしてストロングハイブリッドなど多彩なパワーユニットを用意しています。うれしいことに両車とも安全装備はコンパクトカーの標準より充実しています。
クルマの実力だけでなく価格面でもまさに実力伯仲のコンパクトハイトワゴン。個人的にはスズキソリオが燃費の良さで一歩リードですが、総合的にその差は少ないとも感じています。
※記事の内容は2017年11月時点の情報で執筆しています。