マツダの人気SUV、CX-5が現行型となって通算5度目の商品改良を受けました。今回の改良は見た目に大きな変化はなく、主力のディーゼルエンジンの出力向上やAT制御の改良、センターディスプレイの大型化など、比較的地味な内容にとどまっているように見えます。しかし、乗ってみるとその進化の幅はかなり大きかったようです。萩原文博さんの試乗レポートをお届けしましょう。
この4年間で5回目の商品改良
マツダCX-5はスカイアクティブテクノロジーをフル搭載した新世代商品として、2012年に初代モデルが登場。現在のマツダ商品ラインアップにおけるデザイン、走行性能、先進技術などの礎となったモデルです。2016年12月に2代目となる現行モデルが登場。マツダのグローバル販売台数の4分の1を占める基幹車種となっています。
このCX-5が2020年12月に商品改良を行いました。現行モデルの販売開始以降、実に5回目の商品改良となっています。マツダは国産メーカーには珍しく、主要車種に対して年次改良と呼ばれる毎年の商品改良を行っています。商品改良でもその規模は内外装の変更を伴う大きなものから、装備の追加などにとどまる小さいものまでさまざまです。CX-5が今回行った商品改良は中規模レベルで、走行性能と利便性の向上によって「走る歓び」の進化を図っています。
メインはディーゼルエンジンの出力向上とAT制御の改良
今回は主力エンジンとなっているスカイアクティブDと呼ぶ2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンの出力向上が行われました。最高出力を従来の190psから200psへと向上、さらに発生する回転数を4500回転から4000回転へと下げることにより、高速道路での合流や追い越し加速などのシーンでパワフルな加速を持続的に発揮します。
エンジンの改良に合わせ、アクセルペダルの操作力を最適化することで、ディーゼルターボエンジンの強力なトルクを精度よく、加減速コントロール性をより意のままにコントロールできるようになっています。
また、スカイアクティブドライブと呼ぶマツダ独自の6速ATの制御技術もアップデートが加えられました(2.5Lガソリンターボエンジン搭載車を除く)。素早くアクセルを踏み込んだ時は、クルマが「ドライバーは早く加速したい」と判断し、従来モデルよりも素早く変速を行います。この結果、ドライバーが欲しい加速力を素早く発揮できるようにサポートしてくれます。
ディスプレイ大型化やコネクティッドサービスの拡充などで今どき感も補充
走りだけでなく快適性の向上も行われました。センターディスプレイのサイズを従来の8インチから8.8インチ、もしくは10.25インチへと大型化。さらに、すべてのモデルに車載通信機を搭載し、マツダコネクティッドサービスとスマートフォンアプリ「MyMazda(マイ・マツダ)」との連携により利便性の向上を図り緊急通報サービスも提供します。24時間さまざまなシーンでユーザーをサポートする今どきな改良も加えられました。
見た目の変化がないのがマツダらしい
今回試乗したのは、エンジン+トランスミッションの制御が変更された2.2Lディーゼルターボエンジンを搭載したCX-5 XD Lパッケージ2WD車(車両本体価格は352万円)です。Lパッケージは本革シートを標準装備した上級グレードとなっています。
商品改良を行った試乗車のCX-5を見て「マツダらしいな」と思いました。その理由は見た目が従来モデルと全く変わらないからです。商品改良というと内外装を変更することが多く、走行性能に手を加えるようなことはあまり一般的ではありません。多くのユーザーにとって見た目の違いの方がわかりやすく「新しくなった」と思うからでしょう。
しかしマツダは多くのモデルに毎年行う商品改良によって、走行性能や安全性能のアップデートを図る自動車メーカーです。これは少しでも最新のテクノロジーを市販車にフィードバックしたいという真摯な姿勢と言えるでしょう。ただし、頻繁にアップデートを行うと買うタイミングが難しいという側面もあります。今回のCX-5の商品改良も見た目はほぼ変わらないので一見、非常に地味なものに感じます。しかし実際に試乗してみるとなかなか中身の濃い改良でした。
まるでガソリン車のように軽快!
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べると最新のクリーンディーゼルであっても加速フィーリングに「重さ」を感じるものです。それはこれまでのマツダの2.2Lディーゼルターボエンジンも例外ではなく、非常に出来の良いエンジンですが、やはりガソリンエンジンと比べると重さを感じたものです。しかし、今回の商品改良でエンジン出力の向上とトランスミッションの制御を変更したことで、アクセルペダルを踏んだ時の応答性が素早くなり、なにより吹け上がりのフィーリングがガソリン車のように軽快になりました。
元々このディーゼルエンジンは最大トルク450Nmを低回転域で発生するため、発進加速などは文句なしでした。しかし、ドライバーがアクセルを踏む感覚と加速フィーリングの微妙なギャップはやはりあって、ガソリン車に比べると気持ちの良さと言う点では見劣りしていました。今回、エンジン出力の向上と、トランスミッションの制御に加えて、ペダルの重さまでこだわった改良の成果ははっきりと体感できます。
走りの充実ぶりは円熟の域
ホントに地味(重ね重ね失礼ですが)な変更ですが、新しいCX-5はドライバビリティが大幅に向上しクルマを操る楽しさがより味わえるようになりました。センターディスプレイは10.25インチと拡大したため、視認性や操作性も向上。さらにコネクティッドサービスも受けられるようになり、ホスピタリティも大幅に向上しています。今回の商品改良によってCX-5は走りについては円熟の域に達したのではないでしょうか。
※記事の内容は2021年2月の情報で制作しています。