ミニバンやSUVに押されて存在感が薄まっているステーションワゴン、その中にあって孤軍奮闘するのがスバルレヴォーグです。昨年登場した2代目は2020-2021の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝き、走りの質感や先進安全性能の高さで専門家から高い評価を得ています。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める岡崎五朗さんにレヴォーグの魅力を詳しくレポートしてもらいましょう。
ありとあらゆる部分にこだわりが満載
北米マーケットのニーズに合わせるべく大型化したレガシィ。その穴を埋めるべく2014年にデビューしたのが初代レヴォーグだ。2代目となる新型ではプラットフォームを新世代のSGPに換装するとともに、ボディ剛性をさらに高めるべくスバル独自のフルインナーフレーム構造を採用。フルインナーフレーム構造とするには生産設備を改修する必要があったが、スバルは「走行性能と快適性をより高い次元で両立するためには必要だ」と判断し巨額の投資判断を下した。さらに、電動パワーステアリングに性能は高いが高価なデュアルピニオン式をおごったり、ボディ各部に剛性を高めるためのさまざまな対策を施したりと、とにかくありとあらゆる部分にこだわりが満載されている。
クルマなんて壊れずに走ってくれればそれでいい、と思っている人にとっては???という話だろうが、スバルが狙っているのはクルマの走りにプラスαの要素を求めるユーザー。そういう人たちに「ああ、やっぱりスバルは違うよね」と思ってもらえるかどうかがスバルの生命線であることを誰よりもよく理解しているのがスバルなのだろう。
頼もしいエンジン、CVTの中では最良のダイレクト感
エンジンは新開発の1.8L水平対向4気筒ターボ。177psという最高出力に物足りなさを感じる人も多いだろうが、今の時代、燃費性能を無視するわけにはいかない。モーターの助けを借りずエンジンのみで16.6km/Lというそこそこ優れた燃費を実現するべく、このエンジンには多くの最新技術が投入されている。
とはいえ、低燃費エンジンにありがちなスカスカした印象はない。低回転域から発生する太いトルクによって、実際に試乗すれば、むしろ177psという数字以上の頼もしさを感じるはずだ。欲を言えばCVTではなく切れ味のいいトルコン式ATかDCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)だったら最高なのにな、とも思うが、レヴォーグのCVTは数あるCVTの中では最もダイレクト感が高い。他のCVTから乗り換えたら、その小気味よい加速&変速フィールに驚くだろう。
スイッチひとつで、ゆったり快適からスポーツカーのような走りまで
足回りはGT系がノーマルダンパーに17インチタイヤの組み合わせ。上級かつスポーティーなSTIバージョンには可変ダンパーと18インチホイールが付く。GT系のナチュラルな乗り味も悪くないが、より楽しいのはスイッチひとつでゆったりした足からギュッと締め上げた足まで特性が大きく変化するSTIスポーツだ。
スプリングの固さは一定でダンパーの減衰力のみをこれほど大きく変化させるとどこかで違和感が出てしまいがちだが、そこはさすがスバル。4段階用意したドライブモードセレクトすべてをきっちり煮詰めてきている。普段はコンフォートモードかノーマルモードでゆったりと快適に走り、ワインディングロードではスポーツモードかスポーツ+モードでスポーツカーのような走りを楽しめる。
これはもうたっぷりと時間をかけながら徹底的に煮詰めていったのだろうと思いきや、開発陣によると「驚くほどあっさり」とセッティングが決まったという。また「開発の初期段階でボディ剛性を徹底的に高めたことが功を奏した」とも。巨額の投資をしてフルインナーフレーム構造としたのは正解だった。
注目のアイサイトXは「振る舞い」でも世界トップレベル
優れた走りの価値をさらに高めているのがアイサイトXだ。衝突回避サポートや運転支援といったアイサイトの機能に加え、高精度マップや高精度GPSを使ったハンズオフ(自動車専用道路での渋滞時)、アクティブレーンチェンジアシスト(自動車専用道路での70〜120km/h走行時)といった最新のテクノロジーを備える。
ここで強調したいのはその自然な動作特性。前方で渋滞が始まったときのブレーキングのタイミングや強さ、再加速の自然さ、違和感のないステアリングアシストなど、アイサイトXは機能だけでなくその振る舞いでも世界トップレベルにある。走りにこだわるスバル。その運転支援機能もまたこだわりの結集なのだ。
※記事の内容は2021年2月の情報で制作しています。