持ち込み車検(ユーザー車検)は業者に依頼するよりも安価で済むため、車検費用を節約するために検討している方も多いのではないでしょうか。そこで、持ち込み車検の方法や、メリット・デメリットについて解説します。持ち込み車検には知識や技術が必要なので、正しい知識を身につけましょう。
この記事のPOINT
- 持ち込み車検では、整備だけでなく書類などの事前準備が必要
- 車検費用は安く済むが、手間がかかる
- 持ち込み車検では、整備不良のため車検が通らない可能性がある
持ち込み車検を受けるための事前準備
持ち込み車検とは、ユーザー自身が運輸支局あるいは軽自動車検査協会に車を持ち込んで受ける車検のことです。代行業者を利用することなく、ユーザー自身が車検を受けることから、「ユーザー車検」と呼ばれることもあります。
持ち込み車検はユーザー自身で車の整備を行うなど、多くの事前準備をしなければなりません。そこで、持ち込み車検を受けるために必要となる書類や費用、自動車の整備ポイントを詳しく解説します。
持ち込み車検に必要な書類は8種類
車検業者に依頼する場合は、車検証や納税証明書、自動車損害賠償責任保険証明書などが必要となりますが、持ち込み車検では8種類の書類が必要になります。なお、印鑑は必須ではありませんが、あれば手続きがスムーズに行えることもあるので、持参しておくといいでしょう。
〈持ち込み車検の必要書類〉
軽自動車 | 普通車 | |
---|---|---|
(1)車検証の原本 | ○ | ○ |
(2)自動車税(種別割)納税証明書 | × | ○(条件を満たせば省略可能) |
(3)軽自動車税(種別割)納税証明書 | ○ | × |
(4)点検整備記録簿 | ○ | ○ |
(5)自動車損害賠償責任保険証明書 | ○ | ○ |
(6)継続審査申請書 | ○ | ○ |
(7)自動車重量税納付書 | ○ | ○ |
(8)自動車検査票 | ○ | ○ |
(1)車検証の原本
車の購入時に販売店から受け取る車検証(自動車検査証)は、その車が保安基準を満たしていることを証明する書類です。公道を運転する際には携行が義務付けられているため、車内に保管しておきましょう。
(2)自動車税(種別割)納税証明書
自動車税(種別割)納税証明書は、自動車税(種別割)を納付した際に控えとして渡される書類です。なお、自動車税(種別割)納税証明書は「過去の自動車税(種別割)を滞納していない」「自動車税(種別割)を納付してから3週間が過ぎている」という条件を満たすと省略可能です。
(3)軽自動車税(種別割)納税証明書
軽自動車を所有している方は、軽自動車税(種別割)納税証明書が必要です。普通車と違い、軽自動車税(種別割)納税証明書は必須となります。
(4)点検整備記録簿
点検整備記録簿は、法定12ヵ月点検や法定24ヵ月点検などの点検整備の内容が記録された書類です。消耗品の交換タイミングなどを判断する上で重要な参考書類となっています。
(5)自動車損害賠償責任保険証明書
自動車損害賠償責任保険証明書は、公道を運転する際に携行することが義務付けられています。そのため、車検証と同じくドアポケットやダッシュボードに保管しておきましょう。なお、車検時点で加入している自動車損害賠償責任保険証明書が必要になります。
(6)継続審査申請書
継続審査申請書は、普通車の場合は国土交通省、軽自動車の場合は軽自動車検査協会のホームページでダウンロードができますが、車検当日に窓口でもらうことも可能です。車検証を発行する際に必要となる書類であり、車検当日に記入すれば問題ありません。
(7)自動車重量税納付書
自動車重量税納付書には、持ち込み車検当日に車検を受ける車の重量に応じた税額を納付するともらえる「印紙」を貼り付けて提出しましょう。こちらの用紙も当日に窓口でもらえるため、前もって用意する必要はありません。
(8)自動車検査票
自動車検査票は、検査当日に窓口で配布されるので、必要事項を記入しておきましょう。持ち込んだ車が道路運送車両法の保安基準に合格すると、自動車検査票に合格印が押されます。
持ち込み車検に必要な4つの費用
持ち込み車検に必要な費用は、自賠責保険料・検査手数料・自動車重量税の「法定費用」と、予備検査料の諸経費の4つです。それぞれの費用について、詳しく見ていきましょう。
・自賠責保険料
自賠責保険料は、車の所有者が必ず加入しなければならない、自動車損害賠償責任保険の保険料です。自賠責保険更新と車検のタイミングを合わせると、同時に更新の手続きが行えて余計な手間がかかりません。そのため、自賠責保険の更新のタイミングは、車検と同じ24ヵ月もしくは1ヵ月長い25ヵ月を選ぶのが一般的です。
保険期間 | 37ヵ月 | 36ヵ月 | 25ヵ月 | 24ヵ月 |
---|---|---|---|---|
普通車 | 30,170円 | 29,520円 | 22,210円 | 21,550円 |
軽自動車 | 29,550円 | 28,910円 | 21,780円 | 21,140円 |
・検査手数料
検査手数料は、車検を受ける際に支払う手数料です。
車の種別 | 普通車 | 小型車(2000cc以下) | 軽自動車 |
---|---|---|---|
検査手数料 | 1,800円 | 1,700円 | 1,400円 |
・自動車重量税
自動車重量税は、所有している車の車両重量や経過年数によって税額が決まります。また、2021年4月30日まではエコカー減税が施行されており、対象車は自動車重量税が減免されます。
車両重量 | 2年自家用(継続検査時) | ||||
---|---|---|---|---|---|
エコカー | エコカー | エコカー以外 | |||
(免税) | (本則税率) | 13年未満 | 13年経過 | 18年経過 | |
軽自動車 | 0円 | 5,000円 | 6,600円 | 8,200円 | 8,800円 |
〜500kg以下 | 5,000円 | 8,200円 | 11,400円 | 12,600円 | |
〜1,000kg以下 | 10,000円 | 16,400円 | 22,800円 | 25,200円 | |
〜1,500kg以下 | 15,000円 | 24,600円 | 34,200円 | 37,800円 | |
〜2,000kg以下 | 20,000円 | 32,800円 | 45,600円 | 50,400円 | |
〜2,500kg以下 | 25,000円 | 41,000円 | 57,000円 | 63,000円 | |
〜3,000kg以下 | 30,000円 | 49,200円 | 68,400円 | 75,600円 |
・予備検査料
予備検査料は予備検査場で支払う検査料で、一般的に1,500〜3,500円程度となっています。
車の整備
持ち込み車検を受ける前に、必ず車の整備を行いましょう。持ち込み車検で不合格となると、再度車検を受けなければならないため余計な手間や時間がかかります。合格するために確認しておくべきチェックポイントについて紹介します。
・タイヤ
タイヤで確認しておくべきポイントは「溝の高さが1.6mm以上あるか」「亀裂・ひび割れがないか」のふたつです。どちらか一方でも満たしていないタイヤがあれば、交換しておきましょう。
・ガラス
フロントガラスや側面のガラスに、ひびや損傷などがないか確認しましょう。検査表彰(車検シール)や点検ステッカー以外のシールや、色がついたフィルムを貼っている場合ははがす必要があります。
・灯火装置
灯火装置のランプが切れていないかを確認しましょう。灯火装置には、ヘッドライト・テールランプ・ブレーキランプ・バックランプ・ナンバー灯・ウインカーなどがあります。
上記で挙げた項目以外は、エンジン内部や計測機器、車の足回り部品などであるため、車の知識に長けている人でないと整備が難しいでしょう。車を運転している中で、これらの項目に違和感がある場合は、自分で整備するのではなく車検業者に依頼するのがおすすめです。
持ち込み車検の流れ
整備や書類について理解できたら、実際に持ち込み車検を受ける場合の流れについて見ていきましょう。なお、普通車の持ち込み車検を行う運輸支局と、軽自動車の持ち込み車検を行う軽自動車検査協会の業務時間は、平日の日中のみとなっているので注意しましょう。
- インターネットで車検の予約
- 予備検査場で最終チェック
- 書類の提出と受付書類の記入
- 自動車重量税・検査手数料の支払い
- 自賠責保険の加入手続き・納税の確認
- 検査コースで車検の実施
- 車検証の交付
1. インターネットで車検の予約
まずはインターネットで持ち込み車検の予約を行います。普通車であれば国土交通省、軽自動車であれば軽自動車検査協会の予約システムから予約ができます。軽自動車の場合は、インターネット予約だけでなく電話予約も可能です。指定の検査場であれば全国どこでも車検が受けられるので、お近くの検査場を予約するといいでしょう。
2. 予備検査場で最終チェック
持ち込み車検を受ける前に、予備検査場で最終確認を行うのが一般的です。持ち込み車検を行う運輸支局、軽自動車検査協会の近くには、実際の車検と同じ内容のチェックをしてくれる予備検査場があります。
予備検査場では、「サイドスリップ検査・調整」「各ブレーキ・スピードメーターの検査」「ライトの光軸検査・調整」「排気ガス検査・調整」などを行ってくれます。予備検査を受けるかどうかは自由ですが、専門器具がないと調整できないものばかりなので、特別な事情がない限り予備検査を受けるといいでしょう。
万が一、予備検査場で調整できない不具合が発見された場合は、専門業者で修理をした上で車検を受けましょう。
3. 書類の提出と受付書類の記入
事前準備しておいた書類を提出し、当日窓口で配布される用紙を記入します。記入台の近くに見本があるので、間違いや漏れのないように記入しましょう。
4. 自動車重量税・検査手数料の支払い
場内にある印紙・証紙販売窓口で、自動車重量税と検査手数料の金額分の印紙・証紙を購入します。自動車重量税印紙は自動車重量税納付書、検査手数料印紙・証紙は自動車検査表に貼り付けましょう。
5. 自賠責保険の加入手続き・納税の確認
自賠責保険の継続加入手続きと、自動車税(種別割)の納税の確認を行います。自賠責保険の加入期間は、法律で定められているため車検期間より1日でも多く加入しなければなりません。
納税の確認は、普通車であれば自動車税(種別割)納税証明書、軽自動車であれば軽自動車税(種別割)納税証明書を提示して行います。前述した自動車税(種別割)納税証明書の省略条件を満たしている方は、納税の確認手続きは不要です。
6. 検査コースで車検の実施
実際に車に乗り、以下の流れに沿って場内の検査コースにて車検を実施します。
1)検査ラインに入る前の各種確認
車検証の記載内容と一致しているか、ボンネットを開けて車体番号などを確認します。車の外観や灯火装置に問題がないかなどの確認も行います。
2)サイドスリップ検査
サイドスリップ検査は、ホイールアライメントを確認する検査です。車を直進させたときの左右のずれを計測します。
3)マルチテスターでの検査
スピードメーターの精度やヘッドライトの光軸、ブレーキの制動力などが基準値内であるかを、テスターを使って計測します。
4)排ガス検査
一酸化炭素や炭化水素などの排ガスが、基準値以内の濃度に収まっているか検査します。
5)下回りのチェック
車を揺らして、オイル漏れや排気漏れなどがないかをチェックします。
7. 車検証の交付
無事に車検が合格であれば、検査結果が自動車検査票に記録され、合格印が押されます。その後、窓口にて新しい車検証と検査標章の交付を受け、持ち込み車検は終了です。
不合格になった場合は、2週間以内に再検査を受けることをおすすめします。2週間以内に再検査を受ける場合は、不適合となった検査項目のみの再検査で済みますが、2週間を超えると改めてすべての検査項目を受ける必要があるからです。
2週間以内に再検査を受ける場合は、限定自動車検査証の交付を受ける必要があるので、帰る前に忘れずに申請をしておきましょう。
持ち込み車検と車検代行の違いとは?
持ち込み車検と車検代行の違いは、誰が検査を受けに行くのかです。持ち込み車検は、当日の検査や手続きをすべて自分で行うのに対し、車検代行は運輸支局などの検査を受けに行く部分を業者が代行してくれます。10,000円から30,000円ほどで代行を依頼することが可能です。
実際に検査コースで車検を行う際、指定されたとおりに車の操作を行う必要があるため、車検を受ける車の運転に慣れていないと操作ミスで不合格になるかもしれません。そのため、実際に自分で車検場に持ち込むのは不安な場合、代行業者に依頼する方が多いようです。
しかし、車検代行では分解整備ができません。そのため、車検代行を依頼する場合でも、書類の準備や整備などは自分で行わなければなりません。万が一、分解整備が必要な検査項目を発見した場合は、代行業者ではなく、整備工場やディーラーなどの車検業者に修理を依頼しましょう。
車検費用を安く済ませるために持ち込み車検を検討しているのであれば、車検をやめて新車に乗り換えたほうがお得かもしれません。そんなお得な乗り方について知りたい方は、こちらのバナーをチェック!
持ち込み車検のメリットとデメリット
一般的な車検業者に依頼する場合と比べ、持ち込み車検は費用が安く済む分、多くの手間がかかります。そのため、手間をかけてでも車検費用を安く抑えたい方には向いているでしょう。しかし、持ち込み車検のリスクやデメリットを懸念している方も多いのではないでしょうか。そこで、持ち込み車検のメリットやデメリットについて詳しく解説します。
持ち込み車検のメリット
・車検基本料がかからない
車検費用は、大きくふたつに分けられます。1つ目は税金や保険などの法定費用、2つ目は車検基本料といわれる点検整備料や車検代行料などが含まれた、依頼する業者によって変化する費用です。持ち込み車検の場合は、整備も検査もすべて自分で行うため車検基本料がかかりません。各業者の車検基本料の相場については、以下の通りです。
〈車検基本料の相場〉
車検業者 | 車検基本料の相場 |
---|---|
ディーラー | 約35,000〜100,000円 |
整備工場 | 約20,000〜65,000円 |
ガソリンスタンド | 約15,000〜35,000円 |
カー用品店 | 約10,000〜45,000円 |
車検専門店 | 約10,000〜30,000円 |
・車や車検制度についての理解が深まる
技術があり整備をきちんと行う方であれば、持ち込み車検をすることで車への愛着がさらに湧き、安全への理解も深まるのではないでしょうか。また、車検に必要な行政手続きを経験することで、車検制度の理解も深まるといったメリットがあります。
持ち込み車検のデメリット
・手間と時間がかかる
車の知識が浅いと、車の整備などの事前準備に多くの手間と時間がかかります。素人では判断が難しい整備項目もあるため、結局車検業者に依頼することになり、整備に費やした手間と時間が無駄になる可能性もあります。
・車検に通らない可能性がある
持ち込み車検の経験がある場合は、検査項目のポイントや整備のコツなどを理解しているでしょう。しかし、初めて持ち込み車検に挑戦する方は、書類の不備や整備不良などで不合格になることもあるので、車検に通らない可能性も想定しておきましょう。
・追加で整備費用が必要になる可能性がある
持ち込み車検で不合格になってしまった場合、追加で整備費用がかかる可能性があります。自分で修理できる検査項目でなければ、業者に依頼しなければいけないためです。
・検査の受付時間が平日の日中しかない
持ち込み車検の受付時間は平日の日中のみです。土日祝日や年末年始は運輸支局、軽自動車検査協会ともに休日となっています。昼休みも受付を行っていないため、日程や時間には注意しましょう。
・安全面で不安が残る
車を運転する上で、忘れてはならないのは安全面であり、費用が安くなるという側面だけでは考えてはいけません。また、業者に車検を依頼する場合、多くは法定12ヵ月点検や法定24ヵ月点検などの法定点検もセットになっているため、重大な事故やトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
車を所有している以上、車を安全な状態で保つ責任があります。持ち込み車検に対して少しでも不安がある場合は、家族や周りの人の命を守るためにも、車検業者に任せるのがおすすめです。
カーリースなら車検費用込みで定額にできる!
持ち込み車検を検討している理由が、車検でまとまったお金が必要になるからという方もいるでしょう。メーカー保証期間も終了している5年目以降の車検では部品交換などで車検費用がかかる可能性もあります。
しかし、そもそも、車検でまとまった金額を支払わなければならないというのは、これまでの常識です。今人気のカーリースであれば、月々の支払いに車検費用もコミコミにできるため、まとまった費用がかからず、毎月の支払額を定額にできます。
さらに、カーリースの定額カルモくんのメンテナンスプランであれば、30,000店以上の大手提携業者で車検が受けられるので安心です。また、車検費用だけでなく、法定12ヵ月点検や一部のパーツ交換費用などもコミコミにできます。オイルやバッテリー交換など、突然の出費になることが多いメンテナンス費用も定額になるので、家計に優しい利用方法です。そんな定額カルモくんについて詳しく知りたい方は、こちらのバナーをチェック!
持ち込み車検には知識や技術が必要!安全に車に乗ることを最優先に考えよう
持ち込み車検をするためには、正しい車の知識や技術が必要です。費用の節約も大切ですが、車を安全な状態に保つことも重要です。ユーザー車検は難しいと感じながらも、費用を節約したい方は、定額カルモくんのメンテナンスプランを検討してみてはいかがでしょうか?
よくある質問
Q1:持ち込み車検とは?
A:ユーザー自身が運輸支局あるいは軽自動車検査協会に車を持ち込んで受ける車検のことです。代行業者を利用することなく、ユーザー自身が車検を受けることから、「ユーザー車検」と呼ばれることもあります。
Q2:持ち込み車検って安全なの?
A:持ち込み車検では、車検前の整備も自分で行わなくてはいけません。そのため、手間がかかるだけでなく、知識や技術が必要となります。安全面が不安な場合は、業者に依頼するのがおすすめです。
Q3:車検代行との違いは?
A:持ち込み車検は、当日の検査や手続きをすべて自分で行うのに対し、車検代行は運輸支局などの検査を受けに行く部分を業者が代行してくれます。10,000円から30,000円ほどで代行を依頼することが可能です。しかし、整備などは自身で行う必要があります。
※記事の内容は2021年2月時点の情報で制作しています。