現在の車の安全性は、事前に事故の危険を察知して事故の危険を減らしたり、被害を軽減させたりする予防安全性が中心になりつつあります。衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全技術の充実度は車種による差が大きいので、車選びの際にはしっかりと確認しておきたいポイントといえるでしょう。ここでは日産「シルフィ」の安全性能について紹介します。
この記事のPOINT
- シルフィは先進安全技術を搭載していない
- 一部のグレードにサイドエアバッグ・カーテンエアバッグを標準装備
- シルフィは「サポカー」ではない
シルフィの安全性能の特徴
2代目モデルとなる現行型のシルフィは2012年12月に販売開始されており、登場から8年程度が経過しています。発売当時は先進安全技術を採用している車種はそれほど多くない時代でしたが、近年の新型車には何らかの先進安全技術が搭載されるようになりました。
もちろん、シルフィのようにモデルライフの長い車はほかにもたくさん存在します。シルフィのライバル車ともいえるトヨタ「アリオン」や「プレミオ」もシルフィと同じく発売から長い年月が経過しているモデルですが、一部改良やマイナーチェンジのタイミングで衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全技術が搭載されました。
対して、シルフィは現在まで先進安全技術は搭載されていません。今となっては、これはかなりのマイナスポイントといえるでしょう。
日本では近年SUV人気が高まっており、セダンはかつてのような勢いを失いました。しかし北米市場などではセダンは一定の人気を保っていることからシルフィは「セントラ」という名称で販売され、2015年のマイナーチェンジのタイミングで衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などの先進安全技術が採用されています。
日本でも同じタイミングで導入すればよかったと思いますが、日本では2015年以降、セダン人気が盛り返すこともなく完全に市場の中心がSUVに移行しているような状態のため、売上台数が見込めないことから見送られたのだと考えられます。
しかし、シルフィのメインターゲットはセダンに愛着のあるシルバー世代。それであればなおさらのこと、先進安全技術の導入は必要なのではないでしょうか。せめて衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時急発進抑制装置程度は欲しいところです。
なお、現在は政府が先進安全技術を搭載した車「サポカー」の普及を推進しています。「サポカー」は搭載する先進安全技術の充実度によって4つの分類に分けられており、どの「サポカー」に認定されているかでその車の安全性がある程度判断できるようになっていますが、シルフィは先進安全技術を採用していないため「サポカー」には該当しません。
シルフィの安全技術
シルフィには、どんな安全技術が搭載されているのかを見ていきましょう。
オートライトシステム(「S」を除くグレードに標準装備、フロントワイパー連動、薄暮れ感知「おもいやりライト」機能付き)
周囲の明るさに応じて自動でヘッドライトを点灯。さらに夕暮れ時などの周囲が暗くなり始めた薄暮れ時やフロントワイパーを作動させた際に自動でヘッドライトを点灯させることで自車の存在を周囲に知らせ、歩行者や周囲の車のドライバーに注意喚起することによる事故低減効果が期待できる「おもいやりライト」機能が搭載されているのが特徴です。
交通事故が最も多い時間帯といわれる夕方、16時頃~18時頃までの時間帯はドライバーから歩行者が見えにくく、歩行者は車の接近に気付きにくいといわれています。日産はその時間帯にヘッドライトを早期点灯することで交通事故を削減する「おもいやりライト運動」を推進しています。
ワイドなヘッドランプの照射範囲(「S」「X」を除くグレードに設定あり)
上級グレードの「G」に加え特別仕様車の「Gルグラン」「Sツーリング」では、ハロゲンよりもより明るく前方を照らし出すキセノンヘッドランプを標準装備しています。
キセノンヘッドランプの配光特性を最適化することで照射範囲を広げ、路肩にいる歩行者などの早期発見に貢献し、夜間走行時の安心感を高めます。
VDC(ビークルダイナミクスコントロール)
各種センサーによって車両の挙動をモニタリングし、車輪の横滑りを検知するとブレーキ力やエンジン出力を自動制御して車両の安定性を向上させる機能で、コーナリング時やぬかるみなどの滑りやすい路面なドでの横滑りを防ぎ、安定した走行の維持に貢献します。
ABS(アンチロックブレーキシステム)+EBD(電子制御制動力配分システム)+ブレーキアシスト
シルフィは乗車人数に合わせて制動力を自動的に最適配分するEBD(電子制御制動力配分システム)と急ブレーキを踏み込んだ際にタイヤをロックしにくくするABS(アンチロックブレーキシステム)、さらにドライバーがブレーキを踏んだ際のブレーキ踏力をアップするブレーキアシストを採用し、万が一の危険の際にもしっかりと車両をコントロールして危険を回避できるように配慮されています。
エアバッグシステム
シルフィでは運転席・助手席のエアバッグはもちろんのこと、「G」と「Gルグラン」には前席のサイドエアバッグと、前後席の乗員の頭部を保護するカーテンエアバッグが装備されています。
安全性能に関しては注意が必要
セダンの種類がしぼられてきつつある今、シルフィはセダンを愛する層にとっては貴重な存在の一台といえますが、安全性能に関しては前時代の装備内容といわざるをえません。今どき衝突被害軽減ブレーキすらない車種はほとんどないといえる状態なので、ライバル車と比較しても見劣りする状態です。
スタンダードなセダンが欲しい方には魅力的なモデルですが、選ぶ場合は先進安全装備がないことを理解しておく必要があるといえるでしょう。
よくある質問
Q1:シルフィには先進安全技術は全車に標準装備されているの?
A:いいえ、シルフィには衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術は採用されていません。
Q2:シルフィに搭載される安全技術にはどんなものがあるの?
A:周囲の明るさに応じて自動でヘッドライトを点灯させる「オートライトシステム」やコーナリング時や滑りやすい道での横滑りを防止して車両の安定性向上に貢献するVDC、万が一の危険に遭遇した場合に急ブレーキを踏んでも車両がコントロールできる状態を保つようABSやEBD、ブレーキアシストなどが搭載されています。
Q3:シルフィはグレードによって安全性能が異なるの?
A:はい、上級グレードの「G」と特別仕様車「Gルグラン」「Sツーリング」はキセノンヘッドランプが採用されており、ヘッドライトの照射範囲が広くなっています。さらに「G」「Gルグラン」には前席のサイドエアバッグとカーテンエアバッグが追加されます。
Q4:シルフィはどの「サポカー」に該当するの?
A:シルフィは先進安全技術が採用されていないため、どのグレードも「サポカー」には該当しません。
※記事の内容は2021年2月時点の情報で執筆しています。