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三菱のコンパクトSUV、エクリプス クロスが大幅な内外装の変更を受けると同時に待望のPHEVモデルを追加しました。アウトランダーPHEVの登場からはや8年、しかし今でもその実力はピカイチ。しかもエクリプス クロスならではの良さも失っていないようです。岡崎五朗さんの試乗レポートをお届けしましょう。
ミツビシのPHEVはいまでもライバルに対して技術的な優位性を保っている
発売から3年弱。エクリプス クロスにようやくPHEVが加わった。エクリプス クロスとアウトランダーは同じプラットフォームを使っているため(ホイールベースも同じ)、アウトランダーが積むPHEVシステムをエクリプス クロスに積むのはミツビシとしてはワケないことだったはずだ。にもかかわらずディーゼルとガソリンターボのみとしたのは、エクリプス クロスをよりスポーティーで安価なモデルとして訴求したかったからだ。実際、その走りは軽快そのもので、カタログから落ちてしまったランサー・エボリューションの代わりになるといえば嘘になるものの、クルマ好きを納得させるに足る楽しさを提供してくれた。
しかし、マーケットがその想いを受け容れたかといえば残念ながらノーだった。そこで目を付けたのが得意技術であるPHEVだ。今でこそ欧州メーカーを中心にPHEVを搭載したモデルが増えてきているが、アウトランダーPHEVが登場した2012年当時、ミツビシのPHEVは画期的であり、何度かの小改良を加えられながら8年経ったいまでもライバルに対して技術的な優位性を保っている。これはすごいことだ。
高度なPHEVを搭載していることを考えれば大バーゲン価格
加えて近年の電動化ブームでPHEVに注目が集まっていることも決断の後押しになったはずだ。ディーゼルが廃止となったのは残念ではあるが、PHEVの設定を歓迎する人は多いと思う。EV走行57.6kmを可能とする13.8kWhという大容量バッテリーを搭載するだけに価格は高くなったが、それでもこれだけ高度なPHEVを搭載していることを考えれば384.9万円〜という値付けはかなりリーズナブルだ。それどころかむしろ大バーゲン価格と言っていいだろう。
全長を140㎜も伸ばして大型化
変わったのはPHEVの搭載だけじゃない。「アウトランダーよりもスポーティーで安価なモデルとして訴求する」というコンセプトが変わったのに合わせ、ボディ形状にも大きな手を入れてきた。大きな特徴だったリアの分割式ウインドウを廃止しオーソドクスな1枚ウィンドウへと変更。加えて全長を140㎜も伸ばして大型化した。特に105㎜伸びたリアオーバーハングをラゲッジスペース拡大に充てることで、よりたくさんの荷物を搭載できるようになった。
前後オーバーハングを極限まで切り詰めることでSUVらしからぬデザインと高い運動性能を与える、というオリジナルのコンセプトには個人的に共感を覚えていただけにちょっと残念な気もするが、背に腹は代えられないということだろう。むしろここは、今回の変更によってエクリプス クロスにどんな魅力が加わったのかを解説するべきだろう。
日常的なシーンでエンジンがかかるケースはほぼ皆無
第1の魅力はもちろんPHEVだ。充電さえしておけば基本的にエンジンをかける必要がなく、なおかつバッテリーがなくなったらエンジンをかければ走り続けることが出来る汎用性の高さがPHEVのメリット。実際、日常的なシーンでエンジンがかかるケースはほぼ皆無だ。前後2つのモーターだけで交通の流れをラクにリードできるし、モーターならではのレスポンスのよさや優れた静粛性も味わえる。
一方、エンジンで走ったほうが効率が高くなる高速一定巡航時にはエンジンを始動するが、注意深く観察していなければエンジン始動に気付かないほどにその挙動は穏やか。フル加速時にはエンジン回転数が高まるが、それでも騒々しくならないのもミツビシ製PHEVの長所だ。
その動きは明らかにキビキビしている
アドバンテージは他にもある。第2の魅力として挙げたいのがハンドリング性能だ。PHEVはガソリンターボ車(ディーゼル車は廃止)と比べると400kg近く重くなるが、それを感じさせない動力性能の持ち主であることもさることながら、ハンドリングにも光るものがある。前後2つのモーター間でのトルク配分にとどまらず、左右輪間でもトルク配分をすることで、「安定してよく曲がる」性能を実現しているのだ。
雪道での試乗はできていないが、ワインディングロードでも効果は絶大で、ボディの大型化と重量増を補って余りある運動性能を見せてくれた。しかも、どちらかと言えばゆったりした動きの安定志向に仕上げているアウトランダーPHEVに対し、エクリプス クロスPHEVの動きは明らかにキビキビしている。そう、PHEV化してもエクリプス クロスのコアバリューはきちんと残されているということだ。
コスパに優れるだけでなく独自の魅力がある
現在入手できるPHEVのなかでもっともコストパフォーマンスに優れたモデルであるだけでなく、その走りにおいても独自の魅力を放っているのがこのクルマだ。
※記事の内容は2021年1月時点の情報で制作しています。