車のバッテリーが上がった場合、車が動かせないだけでなく、状況によっては事故の原因になってしまうこともあります。車のバッテリー上がりへの対処法はいくつかありますが、適切に対応しないと別のトラブルにつながってしまうため、正しい知識を持っておくことが大切です。
車のバッテリーが上がったときの対処法や原因、バッテリー上がりの防止策を、クルマ専門家(自動車整備士)の若林由晃さんが紹介するポイントと併せて確認しておきましょう。
バッテリーが上がったときは、落ち着いて対応することが大切です。いざというときに焦らないよう、対処法を知っておきましょう。
この記事のPOINT
- 車のバッテリーが上がるとエンジンがかからず、ライトなども使えなくなる
- 対処法として、ジャンプスターターを用いる、ロードサービスを呼ぶなどがある
- 車のバッテリーが上がった場合に行ってはいけないことがある
車のバッテリーが上がった状態とは?バッテリー上がりを疑いたい車の不具合
「バッテリーが上がった」とは、バッテリーに蓄えられた電気がなくなり、エンジンがかからなくなった状態のことをいいます。
車を正常に走らせるためにはエンジン以外の装置でも電気が欠かせないため、バッテリーが上がってしまうと車の走行に必要な機能の多くが失われてしまいます。特に、以下のようなトラブルの場合には、バッテリーが上がっている可能性が考えられます。
エンジンがかからない
車のエンジンをかけるためには、スターターモーターと呼ばれるパーツに電気を流す必要があります。しかし、バッテリーが上がってしまうとスターターモーターに電気を供給できず、エンジンをかけようとキーを回したり、ボタンを押したりしても反応しません。
ライトがつかなかったり、ラジオ・スマートキーが使えなかったりする
バッテリーの役割は車全体に電気を供給することです。そのため、バッテリーが上がるとメーターランプや室内灯、ヘッドランプ、ウインカーが光らなかったり、ラジオなどのオーディオ機器が使用できなくなったりします。
また、スマートキーが使えなくなり、車の鍵が開かなくなってしまうこともあります。こうした問題が生じるため、バッテリー上がりには十分な注意が必要です。
エンジンがかからないことに気付いたら、バッテリーが上がったことが原因かどうか確認するためにもライトが点灯するか、オーディオが使用できるかを見てみましょう。こうした異常があるようなら、バッテリー上がりの可能性が非常に高いです。
バッテリー上がりと勘違いしがちな不具合もあります。詳しくはこちら
車のバッテリーが上がったときの対処法
車のバッテリーは、上がってしまうと自然回復することはありません。ただし、対処法を知っていればエンジンをかけて車を動かすことができます。安全な場所に車を移動させるためにも、以下の3つの方法を押さえておきましょう。
他の車から電気を分けてもらう
バッテリーが上がってしまったときは、ジャンピングスタートという方法を使って他の車から電気を分けてもらうことで、エンジンをかけられます。ジャンピングスタートにはバッテリー同士をつなげるブースターケーブルが必要なので、日頃から車に積んでおくと安心です。ジャンピングスタートの具体的な手順は次の通りです。
〈他の車から電気を分けてもらう手順〉
- 救援車のエンジンを止める
- 赤いケーブルをバッテリーが上がった車のプラス端子に接続する
- 赤いケーブルの反対側を救援車のバッテリーのプラス端子に接続する
- 黒のケーブルを救援車のマイナス端子に接続する
- 黒のケーブルの反対側をバッテリーが上がった車の金属部分に接続する
- サイドブレーキがかかっていることを確認し、救援車のエンジンをかける
- しばらく救援車のエンジンをかけたままにする
- バッテリーが上がった車のエンジンをかけてみる
- エンジンがかかったらケーブルを逆の手順で外す
ジャンピングスタートは、あくまでも応急処置のようなものです。ジャンピングスタート後にバッテリーに十分なエネルギーを充電するためには、エンジンを回してオルタネーター(充電器)を稼働させる必要があります。
充電は、エンジンの回転数が多いほど効率的に行えるため、そのまましばらく走行すると効果的でしょう。
ただし、3年程度交換していないバッテリーの場合は、劣化が進んでいる可能性があります。ジャンピングスタート後はそのまま近隣の業者に車を見てもらうことをおすすめします。
バッテリーに十分な充電を行うには、しばらくエンジンを作動させる必要があります。ジャンピングスタート直後にエンジンを止めると再始動できなくなる可能性が高いことに注意しましょう。
エンジンをつける小型のバッテリーを使う
ジャンプスターターと呼ばれる小型のバッテリーを準備しておけば、救援車がなくてもエンジンをかけることができます。
ジャンプスターターについている赤いケーブルをプラス端子に、黒いケーブルをマイナスの端子に接続して、電源をオンにします。1分ほど時間を空けてから、エンジンをかけてみましょう。
エンジンがかかったらジャンプスターターの電源を切り、黒いケーブル、赤いケーブルの順に取り外します。他の車から電気を分けてもらうときと同様、しばらくエンジンをかけた状態にしてバッテリーに蓄電しましょう。
なお、ジャンプスターターはカー用品店で購入できます。価格は10,000〜30,000円程度。バッテリーが上がったときに慌てず対処できることを考えれば、準備しておいて損はないでしょう。
ただし、ジャンプスターター本体に十分な電力が蓄えられていないと、もしもの際に使用できないため、充電しておく必要があります。
ロードサービスを呼ぶ
救援車がいなかったり、ジャンプスターターが手元になかったりする場合は、ロードサービスを呼びましょう。ロードサービスは一般的に電話かメールで依頼できます。バッテリー上がりの場合はジャンピングスタートを行い、エンジンがかかれば作業終了です。
ちなみに、JAFを利用した場合、一般道路でのバッテリー上がりによる救援は非会員で13,130円かかります。夜間の場合は割増されて15,230円となるため、昼間より高額になります。
ロードサービスは、加入している任意保険(自動車保険)によっては無料で利用できます。保険の内容を事前にチェックしておきましょう。
さらなるトラブルの可能性も!車のバッテリー上がりでやってはいけないこと
車のバッテリー上がりで誤った行動をとると、事故や車の故障を招く可能性があります。より大きなトラブルに発展させないよう、車のバッテリーが上がっても以下のことは行わないようにしましょう。
何度もエンジンをかけようとしない
車のエンジンは、スターターモーターが回転を始めることによって始動します。このスターターモーターを動かすには大量の電力が必要で、繰り返しエンジンスタートを試みるほど電力を消費し、エンジンがかかりにくくなってしまいます。
数回試してもエンジンがかからない場合は、それ以上エンジンを始動させようとするのは避けましょう。
長時間そのままにしない
バッテリーが上がった状態の車を、長時間放置することも避けましょう。
バッテリーが上がってしまうと電圧が低下するので、そのまま放置すると自然放電によって残っている電気が少しずつ減っていき、さらに電圧が下がります。その結果、バッテリーの劣化を早めてしまうのです。
バッテリーの劣化が進行すると蓄電量が減り、充電しても十分な電気を蓄えることができなくなります。そうなると、またすぐにバッテリー上がりが起きてしまうため、バッテリーを交換しなければならなくなるでしょう。
無闇にひとりで対処しない
バッテリー上がりの適切な対処法がわからないときや、復旧を試みてもエンジンがかからない場合は、それ以上自分だけで対処しないようにしましょう。無闇に車の電装部品にさわると感電するおそれがあり、危険です。
また、対処法としてジャンプスターターを使った方法をご紹介しましたが、配線や手順を誤ると感電したり、別のパーツが故障したりする可能性があります。
正しい対処法がわからないときは手をつけずに、JAFなどのロードサービスを呼ぶことをおすすめします。
ジャンプスターターは、本体に損傷があったり、ケーブルが断線していたりする場合も感電のリスクが伴います。使用についてはあくまで、臨時措置と考えましょう。
本当にバッテリーが上がったことが原因?勘違いしがちな車の不具合
エンジンがかからなかったり、室内灯がつかなかったりすると「バッテリーが上がった」と判断しがちですが、実は他の要因で車に不具合が起きていることもあります。適切に対処するために、バッテリー上がり以外の要因や違いの見分け方についても知っておきましょう。
スターターモーターが故障している
エンジンがかからない原因のひとつとして、スターターモーターの故障が考えられます。
スターターモーターは、エンジンをかけるためのパーツです。
エンジンは、バッテリーからスターターモーターに電気が供給されることで回転します。このとき、スターターモーターからはキュルキュルと音が鳴ります。しかし、スターターモーターそのものが故障すると、バッテリーに異常がなくてもエンジンがかからず、音も鳴りません。
そのため、エンジンがかからないからといってすぐにバッテリーが上がったことを疑うのではなく、メーターランプや室内灯がつくかどうかも確認しましょう。
エンジン以外で電気が必要な機能が使える場合には、バッテリー上がりではなく、スターターモーターが故障している可能性があります。
ガス欠になっている
ガス欠もバッテリー上がりと似たトラブルを引き起します。
ガソリンが空になっていてバッテリーに異常がない場合、先ほど紹介したスターターモーターは正常に作動します。そのため、エンジンをかけようとしたときに、キュルキュルと音が鳴ります。音が聞こえるにもかかわらずエンジンがかからないときは、ガス欠の可能性を疑いましょう。
ハンドルにロックがかかっている
盗難防止のために、車はキーを抜いた状態でハンドルを回すとハンドルにロックがかかるようになっています。ハンドルがロックされている状態では、エンジンはかかりません。
そのため、エンジンがかからないときはハンドルを回してみて、ロックされているかどうかを確認してみましょう。ハンドルを左右にうまく回せないなら、ロックがかかっているかもしれません。
この場合は、シフトレバーがパーキングに入っていることを確認して、ハンドルを左右どちらかに回したままキーを回すとロックが解除され、エンジンがかかります。
スマートキーの電池が切れている
スマートキーを使用している場合、スマートキーそのものの電池切れが原因でエンジンがかからないこともあります。スマートキーの電池交換が必要になりますが、交換の仕方は車種によって異なるため、取扱説明書のとおりに行いましょう。
シフトレバーが「P」に入っていない
メーターや室内灯が点灯しているにもかかわらずエンジンがかからない場合は、シフトレバーがパーキング(P)に正しく入っていない可能性が高いです。
車は一般的に、シフトポジションがパーキングでないとエンジンがかからないようになっています。シフトレバーがほかの位置にある場合には、パーキングに入れ直してエンジンをかけてみましょう。
シフトレバーをパーキングに入れてもエンジンがかからない場合は、シフトポジションを感知するセンサーが故障している可能性が高いです。この場合、エンジンはかからないため、レッカー移動や修理を行わなければならないでしょう。
車のバッテリーが上がってしまう原因
車のバッテリー上がりは、車の使い方次第で防げます。バッテリーが上がってしまう原因を確認しておき、バッテリー上がりにならないような乗り方をしましょう。
ヘッドライトや室内灯を消し忘れたり、半ドアになったりしている
ヘッドライトや室内灯は、バッテリーに蓄えられた電気によって点灯します。そのため、消し忘れるとバッテリー内の電気が供給され続け、バッテリー上がりの原因となります。
また、ドアが完全に閉まっていない半ドアの状態もバッテリー上がりの原因のひとつです。ほとんどの車はドアが開くと室内灯が点灯するしくみなので、半ドア状態が続くとバッテリー内の電気が消費されてしまいます。
こうした電力消費を防ぐためにも、ヘッドライトや室内灯を消し忘れていないか、半ドアになっていないかを確認する習慣をつけましょう。
停車中にエアコンを使用している
車のエアコンは電力を大量に消費しやすいため、バッテリーに蓄電できない停車時に長時間使用し続けると、バッテリーが上がる原因になります。車を走らせているとき以外でエアコンを使用する際は、最小限にとどめるよう心がけましょう。
運転する頻度が少ない
バッテリーは、車を走らせることで蓄電されます。また、車を運転していなくてもバッテリーからは少量の電気が放出され続けています。そのため、車の運転機会が少ないことも、バッテリーが上がる要因のひとつです。
久々のドライブに出かけようとしてエンジンがかからない場合は、自然放電によるバッテリー上がりが起きていると考えられるでしょう。
大きなスピーカーをたくさん使用している
オーディオ機器自体の消費電力はそこまで多くありませんが、後部座席にも大きなスピーカーをつないでいる場合は使用電力がかなり大きくなるため、バッテリー上がりの原因となることがあります。
特に、ワンボックスカーやSUVなどの大きな車では、後部座席にも聞こえるようにとスピーカーを増やした結果、消費電力が上がってしまいやすくなるので注意が必要です。
また、内蔵スピーカーを搭載したDVD機器なども、消費電力が多くなる傾向があります。
最近の車はカーナビなどの便利な機器が付属している一方で、何かと電気を消費しがちです。特に、ドライブレコーダーの駐車監視機能はエンジンを切っていても作動しており、バッテリー上がりにつながってしまうことがあります。
車のバッテリー上がりが起きる徴候
車のバッテリー上がりには、いくつかの徴候があります。次のような症状があれば、バッテリーの電圧が低下している可能性が高いです。
・エンジンがかかりにくい
・ヘッドライトが暗い
・ヘッドライトやウィンカーが点灯しない
・メーター類が光らない
・パワーウィンドウの開閉が遅い、または動かない
すぐにバッテリーが上がってしまうとは限りませんが、こうしたサインが見られたら、早めにバッテリーの状態を確認してもらうことをおすすめします。日頃から車の状態に気を配る習慣をつけることで、トラブルを未然に防ぐことにつながるでしょう。
最近のバッテリーはぎりぎりまで性能を維持できることが多く、定期的に交換していれば、バッテリーの寿命で突然エンジンがかからない、といったことは起こりにくいです。徴候に気を付けることで、バッテリー上がりを察知できる可能性が高まるでしょう。
バッテリーが上がるのを防いで、安全に車に乗る方法
バッテリー上がりは事故などのトラブルや出費につながるため、できる限り避けたいものです。そこで、バッテリー上がりを防ぐための日頃の対策を紹介します。安全なカーライフを送るためにも、確認しておきましょう。
定期的にメンテナンスする
まず、定期的にバッテリーをメンテナンスすることをおすすめします。変形や破損がないか確認したり、ほこりやオイル汚れがあれば拭き取ったりと、外面に異変がないかチェックしましょう。
また、バッテリーに蓄えられている電解液をチェックするのも大切です。電解液は車を使用すると減っていきます。定期的に電解液の量を確認し、規定量に達していなければ補充しましょう。
電解液が少ない状態で車を使い続けると、本来の性能が出せなくなるのはもちろん、バッテリー内部が劣化して寿命を縮めてしまいます。
さらに、バッテリー内部の状態は、内部抵抗や電圧の落ち込みをバッテリーテスターで測定することでチェックできます。加えて比重計も使えば、バッテリーの放電状態もわかります。自分自身でバッテリー状態の良し悪しを判断できないときは、近くのガソリンスタンドをはじめとした点検業者に見てもらいましょう。
定期的に車を運転する
エンジン停止中も、バッテリーからは少しずつ電気が放出されています。バッテリーが上がるのを防ぐには、定期的に運転することが大切です。運転する時間がない場合は、週に1度、30分程度エンジンをかけるだけでも適度に蓄電できます。
バッテリーを充電する
バッテリー本体への充電も、バッテリー上がりを防ぐ方法のひとつです。エンジンのかかりが悪い、ヘッドライトが暗いという場合は、バッテリーの充電不足かもしれません。
カー用品店で購入できる車用のバッテリー充電器とブースターケーブルを用意し、以下の手順でバッテリーを充電してみてください。なお、充電器によって取扱い方が異なる場合があるため、詳しい手順は取扱説明書を確認しましょう。
〈バッテリーを充電する方法〉
- 近くでコンセントを利用できる場所に車を移動させる
- ボンネットを開ける
- バッテリーのプラス端子に赤いケーブルを、マイナス端子に黒いケーブルをつなげる
- 充電器をコンセントにさして電源を入れる
- 充電のアンペア数を設定する
- 充電量が90%を超えたら充電完了
バッテリーの充電量は100%に達することはないため、90%を超えたら充電を終えましょう。また、車内の電子機器の故障を防ぐためにも、充電する際は車からバッテリーを取り出して行うのが安全です。
もしも、バッテリーの取扱いに自信がない場合には、充電器が設置されているガソリンスタンドを利用するのがいいでしょう。
定期的にバッテリーを交換する
バッテリーは消耗品なので、車を運転していなくても少しずつ寿命が短くなっています。そのため、定期的な交換が必要です。
バッテリーの寿命はガソリン車、ハイブリッド車、EVでそれぞれ異なります。一般的なガソリン車は2~5年、アイドリングストップ機能搭載車は2~3年、ハイブリッド車は4~5年ほどが寿命の目安となるため、車検や定期点検のタイミングで交換を検討するといいでしょう。
なお、エンジンのかかりが悪くなった、バッテリー液の減りが早くなった、といった場合は早めに交換が必要です。
バッテリーは自分でも交換できますが、新品のバッテリー、ゴム手袋、レンチ、メモリーバックアップをそろえる必要があったり、難しい作業が必要だったりするので、自信がない方は業者に任せるのがおすすめです。
よくある質問
Q1:車のバッテリーが上がったらどうすればいい?
A:他の車から電気を分けてもらったり、小型のバッテリーから充電したりして対処しますが、専用の器具が必要です。準備していない場合は、ロードサービスを利用しましょう。
Q2:車のバッテリー上がりの原因は?
A:ライトの消し忘れや半ドア、停車中のエアコンの使用、オーディオ機器の使用などでバッテリーの消費電力が多くなることがおもな原因です。また、運転する頻度が少ないと、自然放電によるバッテリー上がりが起きることがあります。
Q3:バッテリー上がりを防ぐためにはどうすればいい?
A:バッテリーを消費する習慣を改め、定期的に運転するように心がけましょう。また、2~3年ごとにバッテリーを交換するのもいいでしょう。バッテリー交換は自身で行えますが、不安な方は業者に頼むのがおすすめです。
※記事の内容は2022年11月時点の情報で制作しています。