モータージャーナリストの島崎さんの愛犬「ハルくん」が、家族とともに1泊2日軽井沢ドライブに出掛けました。後編はマツダが誇る新エンジン「SKYACTIV-X」を搭載したCX-30で、軽井沢周辺の見所を巡った2日目の様子をお届けしましょう。
*前編はこちらから
2日目の軽井沢は朝5時半過ぎのお散歩からスタート
2 日目の朝、5時半過ぎ。日頃ハルの朝の散歩は家内に任せっきりなので、こういう時くらいは……とハルを部屋から連れ出した。空気が少しひんやりと感じ、朝霧が立っている中をハルと歩くのは気持ちよい。ちょうどホテルとは道を挟んだ斜め向かいにあるコンビニの前まで行き、店の前のグリーンベルトでハルが用(=大)をたしていると、6時が開店というコンビニの中からゴミ袋を出しにきた店のご婦人が出てたので、おはようございます、の挨拶を交わす。
まだ朝ぼらけの通り、果たして1969年以来、世界中でどれだけの人が同じことをしてきたのだろうか……の、アビイロード風のハルが横断歩道を渡っているところの写真を横から撮る。カルモマガジンはクルマの媒体なので掲載は自粛するが、掲載カットの前後では、まだほとんどクルマの往来のない道の真ん中で、ハルは“フセ”の姿勢でひと休みもしていた。飼い主に似て案外と体力がないのか、あるいは2代目で甘やかして育てたせいでワガママだからなのか。
せっかくのドッグランなのに
いつもより短めの距離と時間だけ散歩を済ませ、ホテルに戻って、まだ誰もいないドッグランを占有で使わせてもらう。できればハルが嬉々として疾走しているカットでも撮れたらと誘ってみたものの、ここでもハルは“フセ”。
これまで何度もカメラマンの手を焼かせてきたのだが、ハルは“ドッグランで走らない犬”でもある(家内が遊ばせながら何とか飛び上がっているカットは撮れたが……)。
朝食は前の晩と同じテーブルに通され、サラダや生ハムやフレンチトーストやスープなど、美味しくたっぷりと戴く。こういうゆったりとした朝食がとれるのも、旅先の朝ならではのことだ。ハルも今回は特別に、レストランに用意されたペット用のメニューからスコーンを戴く。普段は(アレルギー等を考えて)決めたフードしか与えていないが、軽井沢ということできょうだけは特別。もちろんハルは目を見開いて「うまうま!」と平らげた。
2日目は新エンジン「SKYACTIV-X」のCX-30で
2日目のアクティビティは、鬼押出しまでCX-30を走らせることと、キャベツ畑を見に行くことにし、ホテルをチェックアウト。手持ちのiPhoneにインストールした、離れた場所からクルマの状態の把握、ナビ設定などが可能なアプリ「MyMazda」の臨時の自車登録を確認、カーナビもセットした。
ちなみに写真に写っているハルが乗っているペットキャリアは、マツダのオプションとして用意されるアイテムのひとつ。定評ある「AIRBUGGY」の製品で、エアチューブタイヤの快適な乗り味、フレーム剛性の高いしっかりした造りは、ハルも何度か取材で“試乗”した経験がある。赤い“コット”と呼ばれる部分は脱着可能で、対応するショルダーベルト、ISOFIXベルトを使えば、そのままクルマのシート上に固定も可能。(なかなかいい値段なので)我が家のハルにはまだ買ってやれずにいるが、普段使いやドライブ、公共交通機関の移動時など、あれば重宝するアイテムのひとつだ。
居心地のよかったホテルを後ろ髪が1万本くらい引かれる思いでチェックアウト。僕らはCX-30で、一路、鬼押出し方面を目指すことにした。2日目のCX-30はSKYACTIV-X。何といってもディーゼルとガソリンの良さを併せ持つことで話題の世界初SPCCI(火花点火制御圧縮着火)にマイルドハイブリッドをプラスしたパワーユニットが注目のモデルで、その走りのパフォーマンスはどれほどか、楽しみにしていたクルマでもあった。
ジェントルな「SKYACTIV-X」、快適な「GVCプラス」
とはいえ今回は、後席にハルと家内を乗せての試乗……というか、リアルなドライブの中でのインプレということに。が、それでも想像以上で驚いたのは、SKYACTIV-Xの走りのジェントルさだった。モーターアシストにも助けられ出足はスッとスムースで力強いし、低速から高速巡航まで、アクセルレスポンスがよい上、常に期待を上回るパフォーマンスを返してくれるからだ。また乗り心地も、1日目に乗ったXDの滑らかさに、さらに重厚感をプラスした味わい。車重はXDに対し+30kgだが、クルマがより路面にしっかりと押し付けられている感があるといえばいいか。もちろんGVCプラス*の効果が発揮され、鬼押出しへ向かう山道もほぼ進行方向の加速Gだけを感じているだけでいいから、後席のハルも吹き出しをつけるなら「いつ乗ってもGVCプラスはいいねぇ」とばかりに、いつものように平然と乗っていた。
*GVCプラス(G-ベクタリング コントロール プラス)は、運転者の運転技量にかかわらずステアリング操作にエンジンやブレーキを協調させることで、不快な揺れなどを減少させるマツダ独自の車両制御技術。
CX-30は元々全長4395mm、全幅1795mmと手の内感のあるボディサイズで、個人的にも非常に身体になじんでいた。さらにSUVながら高すぎない着座高、Aピラーの着地点が手前に引かれていることによる車両感覚の掴みやすさが美点だ。
それと、レポーターは2年前に骨盤骨折を経験しており、以降、クルマによっては短時間でも腰まわりに痛みを覚えることがあるのだが、CX-30の今回のドライブではそれはまったくなかった。言葉で表現すると“身体を優しく包み込みながら支えてくれる”CX-30のシートの出来のよさは、だから文字通り身にしみてわかるというわけだ。
そういえばスタイリングも好きだ。全高が抑えられたことでSUVといっても威圧感がないし、リヤクォータービューのキュッとした見え方が実にカッコいい。ポリメタルグレーメタリック(1日目の試乗車の色)などノーブルにさえ見えて、自分で選ぶならこの色だな、と決めている(!?)ほど。池波正太郎の「おおげさがきらい」というタイトルのエッセイがあったが、まさしくさりげなく日常的にも乗りこなせるスマートさがCX-30にはある。ちなみにCX−30は、ドイツの自動車雑誌が主催するデザイン賞でSUVカテゴリー、オールクラスの2冠の快挙を達成している。アウディ、ランドローバー、フェラーリ、ポルシェを制しての受賞で、この評価はCX−30の姿のよさを改めて証明した。
キャベツ畑でつかまえて
話をドライブに戻すと、鬼押出しとともに軽井沢へ来たからには……とぜひ立ち寄ることに決めていたのが“キャベツ畑”だった。「J.D.サリンジャーはライ麦畑だけど僕らはキャベツ畑」と難解というか、またも意味不明な説明をしたため家内に「だから何なの?」と言われたがそれはいつものこととして、空気も美味しい広大な景色のなかに、しばしでも身を置けば、気持ちにも目にもいいはずに決まっている……と、ともかくCX-30を走らせてキャベツ畑を目指し、少し道に迷ったものの、晴れて到着。
農道にCX-30を(旅人なので遠慮がちに)停め、車外に降りてみると、靄がかかっていたが浅間山(らしき山)がうっすらと望むことができた。ハルはキャベツ畑にどれほど関心があったかどうかはわからなかったが、大人しくあたりを見回していた。スウィートでロマンチックなストーリーなら、ここで彼が「やっと来れたね」といい、彼女が「そうね」などと言うのだろう。
キャベツ畑で少しの時間を過ごし、僕らはCX-30を自宅に向けて出発させることにした。「帰るぞ」とハルに言葉を向けると、雰囲気を察したらしいカレは自分から後席ドアに歩み寄り見上げる素振りをしたので、抱きかかえてシートに乗せ、ハーネスの背中のDリングとシートベルトキャッチャーの双方を専用のベルトで繋ぎ、カチッと止めた。途中、鬼押ハイウェイを走っていると空が晴れて、CX-30の車窓から浅間山の姿を見ることができた。「見えた!」といい、家内がそれを自分のiPhoneのカメラで写真に撮った。
軽井沢の締めはやはり峠の釜めしで
家に帰るまでが遠足ではあるが、便宜上、あとは山を降りていき、碓氷軽井沢インターチェンジのETCレーンを通過すれば、今回の“非日常の旅”はおしまい。その前に……と、インター手前の“おぎのや”の売店に寄り“峠の釜めし”を買って帰るのは軽井沢を訪れた時の我が家のお約束だから、今回もそうした。
窓口で釜めしをふたつ買ってCX-30に戻ってきた家内が「レジ袋が有料になったんだって」と言い、横で寝ていたハルが目を覚まし、釜めしの入った袋にクンクンと鼻をたてた。
*写真:島崎 七生人
*取材協力:マツダ株式会社 https://www.mazda.co.jp/cars/cx-30/