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軽2シーターオープンスポーツカーとして2015年3月に登場したホンダS660。バブル期に販売されたホンダビートと同じく、ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)レイアウトを採用しています。スポーツカーの醍醐味である旋回性能にこだわり、前後の重量バランスはフロント45:リア55という理想的な配分。専用開発したボディに専用のターボチャージャーを採用したエンジン、そして当時軽自動車初となる6速MTや7速パドルシフト付きCVTで、スポーツカーらしいドライビングと日常での扱いやすさを両立しました。そんなS660が2020年1月に初のマイナーチェンジを受けました。その進化ぶりを萩原文博さんがレポートします。
変更点はそれなりにあれど見た目はあまり変わらない
今回のマイナーチェンジは「デザインの深化」がコンセプト。外観はボディカラー同色のフロントピラー、新デザインのアルミホイールの採用、そして国内初となる新色アクティブグリーン・パールを追加し、そのデザインに磨きを掛けています。インテリアはシート表皮アクセントの変更や、シートヒーターの追加などで快適性を向上させました。今回試乗したのは、新設定されたボディカラー、アクティブグリーン・パールを纏った「α」のCVT車です。
マイナーチェンジしたS660を目の前にすると、ビビッドなグリーンに目を奪われましたが、一見するとどこが変わったのかわからないというのが正直なところ。実は外観ではヘッドライト/サイドリフレクターの色が変更され、アクセサリーライトの追加(αのみ)、リアコンビネーションランプ/インナーレンズの色変更、フロントグリルのデザイン変更と、そのメニューは意外と多いのですが全体的なイメージはあまり変わりません。
装着されるアルミホイールが新デザインとなりサイズ以上の大きさに見えるので、前期モデルより少し低重心となったかな、ということが一番印象に残りました。
アルカンターラ採用でスポーティになったインテリア
内装ではステアリングやシフトノブの表皮に採用されたアルカンターラが目を引きます。アルカンターラはドイツ車やイタリア車など欧州車のスポーツカーによく使われ、スポーティな演出には欠かせないマテリアル。部分的な採用とはいえ、よりスポーティ感が強調されています。
アナウンスはされていないものの明確に変わった走り
今回はS660にとって初のマイナーチェンジとはいうものの、内外装の変更点は非常に少なめです。一般的にはマイナーチェンジというのは、新車として登場してから数年が経過し、商品力回復のために行うカンフル剤。パっと見で分かるような内外装の変更をはじめ、現在では運転支援システムのアップデートなどが行われます。一方、S660のようなスポーツカーは見た目の変更は比較的控えめにして、走行性能の向上などにパワーを割くことが多いのですが、今回のS660の広報リリースには走行性能に関する変更点は記載されていません。
ところが実際に走行してみると、その走りは前期型とはまったく異なっていました。これまでどちらかというとサスペンションが硬めのセッティングでスポーツカーらしいソリッドな乗り味だったS660は、良く言えばドライバーの操作に対して非常にリアルに反応するクルマだったのです。その反面、クルマの反応が良すぎてやや暴れ馬のような感じもあり、長距離ドライブするのに躊躇してしまう面もありました。
暴れ馬からサラブレッドに
しかし、マイナーチェンジしたS660は無駄な動きが大幅に抑えられ、しっとりしたセッティングとなっていました。ステイアリング操作に対しての反応がリニアな部分は変わっていませんが、暴れ馬のような落ち着きのない動きから、しっかりと調教されたサラブレッドのように従順な乗り味へと変更されていたのです。接地感も増したことで、アクセルを従来モデル以上に踏み込むことが出来るようになり、S660のもつ運転する楽しさや優れた旋回性能を、どんなシーンでも手軽に楽しめるようになりました。
大人のセカンドカーに最適
軽自動車としては高額な203万1700円〜232万1000円というプライスタグを付けるS660ですが、爽快なオープンボディにミッドシップエンジンの独特な走行フィール、専用開発のシャシーやエンジンであることを考えると、ボーナスプライスであると言ってもいいでしょう。マイナーチェンジによってキビキビした元気の良い走りから、シットリとした大人の走りへと変わったS660。ほかにファーストカーを所有している大人のセカンドカーとしてぜひおすすめしたい1台です。
※記事の内容は2020年8月時点の情報で制作しています。