軽自動車の人気カテゴリーであるスーパーハイトワゴンに投入された日産ルークス。王者・ホンダN-BOXをはじめ、スズキスペーシア、ダイハツタントと実力車揃いのこのカテゴリーに日産が送り込んだ期待のニューカマーです。果たして「後出しジャンケン」の甲斐はあったのでしょうか。萩原さんの試乗レポートをお届けしましょう。
先に結論を言いたい。ルークスはすごい!
コロナ禍における2020年5月の軽自動車の新車販売台数が発表されました。最も販売台数の多いホンダN-BOXでも対前年同月比52.4%と落ち込んでいますが、それでも首位をキープ。同じ軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるカテゴリーでは、スズキスペーシアが3位、2020年3月に販売を開始した日産ルークスが4位、そしてダイハツタントが8位と上位を占めています。今回は現在、軽自動車の主役を務めているスーパーハイトワゴンの最新モデル、日産ルークスに試乗したので、そのインプレッションを紹介します。
今回試乗したのは、ルークスの最上級グレード、ハイウェイスターG ターボ プロパイロットエディションで、車両本体価格193万2,700円です。最初に結論を言ってしまいますが、現在、軽スーパーハイトワゴンのホンダN-BOX、スズキスペーシア、ダイハツタント、そして日産ルークスを4強とするならば、走行安定性、静粛性、運転支援システムの精度などは、最後発モデルのルークスがほかのモデルより優れていて、おすすめのモデルであることは間違いありません。
後席の広さと工夫はデイズルークス以来の伝統芸
先代はデイズルークスという名称でしたが、現行モデルからはデイズファミリーから独立してルークス単独のモデルとなりました。2019年に登場したデイズのプラットフォームを採用し、大人4人がゆったりと過ごせる室内空間を実現。
特にリアシートのニールームは795mmもあり大人の男性でもゆったりと座ることができます。後席の室内高は1,400mmを確保しているので、小さなお子さんであれば、車内で立ったまま着替えることが可能です。また後席用のエアコン吹出し口を天井付近に設置する工夫など、リアシートへの配慮の多さはデイズルークスから引き継がれた美点でしょう。
運転席をはじめすべてのシートは、疲れを軽減する効果のある「ゼログラビティシート」を採用。さらに、フロントシートのヒップポイントを先代モデルより60mm高くしたことにより広い視界を確保、運転のしやすさにつなげています。
リアのスライドドアの開口幅は650mmを確保。小さなお子さんや年配者の乗り降りをサポートしてくれるオートステップをオプション設定するなど、誰にでも優しい仕様になっているのは高評価です。
リアシートは最大で320mmのスライド量を誇り、ラゲッジスペースは積載する荷物の大きさや長さによって多彩なアレンジが可能です。リアシートを一番前にスライドさせれば、675mmという長大な荷室が出現。48Lのスーツケースを4個積むことができるなど高い利便性をもっています。
モーターアシストが効果的、静粛性の高さはトップレベル
試乗した「ハイウェイスターG ターボ プロパイロットエディション」に搭載されているエンジンは最高出力64psを発生する直列3気筒ターボ。このエンジンに2kWを発生するモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用しています。
元々パワフルなターボエンジンですが、信号待ちなどの発進時にはモーターがアシストしてくれるので、エンジンの回転数を上げることなくスッとスムーズに加速してくれます。街乗りでも、高速道路でもエンジンの回転数が低く抑えられる上、エンジン周りやドア周りに吸音材を最適配置したことで室内の静粛性の向上も顕著です。その静かさは軽スーパーハイトワゴンの中でもトップレベルと言えるでしょう。
実力がさらに上がった「プロパイロット」
今回の試乗は街乗りよりも高速道路の割合を多めに行いました。その理由は運転支援システムの中でも、高速道路などでの追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロール(ACC)のテストを行うためです。ルークスのACCは「プロパイロット」と名付けられ、アクセル、ブレーキ、そしてステアリングの制御までを行ってくれる最新鋭のシステムです。
さらに、ルークスには「インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)」という機能を軽自動車として初採用しています。この機能は、前方を走行する2台前の車両の検知し、急な減速などにより、自車の回避操作が必要と判断した場合に警報によってドライバーに注意を促すものです。一般的には自分の直前の車両を検知してアラートを出すのですが、ルークスの場合は2台前のクルマの動きを検知するので、余裕のある対応が可能なはずです。
実際に高速道路でプロパイロットを多用しましたが、軽自動車に搭載されているACCの中では制御が最も安定していて、前方の変化に対して素早く反応しました。これならドライバーの負担は相当軽減されるでしょう。さらに試乗ルートの東京湾アクアラインは当日、風速15m/sを超える強風が吹いていましたが、プロパイロットはクルマを車線中央で走行させようと制御を行っていました。ACCを含めた運転支援システムの制御は安定感が抜群で、軽自動車では最も進んだシステムと言えます。
ベースとなる安全装備も大幅にレベルアップ
残念ながら、プロパイロットは「プロパイロットエディション」にしか設定されていませんが、単眼カメラとミリ波レーダーを使用した運転支援システムは全車に標準装備されています。また、もしもの事故の際の自動通報はもちろん、あおり運転や急病などの緊急事態では手動で通報できる「SOSコール」もハイウェイスターシリーズに標準装備となっています。
軽自動車スーパーハイトワゴンのベストバイ
予算に余裕があれば、ターボエンジン搭載車がおすすめですが、街乗り中心というのであれば、自然吸気エンジンを搭載した「ハイウェイスターX」でも十分満足できると思います。今回試乗したルークスは現時点において軽スーパーハイトワゴンの中ではベストバイのモデルと言えるでしょう。
※記事の内容は2020年7月時点の情報で制作しています。