2025年9月に2代目トヨタ「アクア」(248万6000円〜302万2800円)が初めてのマイナーチェンジ(トヨタは一部改良と表記)を実施しました。初代ほどの勢いはないものの、依然として販売台数TOP10の常連であるコンパクトハイブリッドカーの現行型「アクア」の車両解説と今回の改良ポイント、そして試乗インプレッションを自動車評論家の萩原文博さんがお届けします。
ハイブリッドカー普及の立役者、現行型の売れ行きはボチボチ?

低価格と低燃費でベストセラーとなった初代アクア(写真:トヨタ)
2011年12月に初代トヨタアクアが登場した当時は、ハイブリッド車はプリウスに代表される専用車が一般的で、エンジンを搭載した車種とは見た目からして差別化が図られていました。同じくハイブリッド専用車として戦略的な価格で登場したアクアは、高価だったハイブリッド車の裾野を広げて、多くのユーザーに低燃費と高い静粛性を提供、一躍ベストセラーモデルとなりました。日本国内におけるハイブリッド車の普及を加速させた一台がアクアであることは間違いありません。

2021年登場時の2代目アクア
初代の登場から10年が経過した2021年に初のフルモデルチェンジを行い、2代目となる現行型へと世代交代を行ったアクア。ハイブリッド車が主流となった国内マーケットにおいて初代ほどの勢いはないものの、販売台数ランキングではTOP10の常連です。

2025年9月に登場したアクア改良モデル
このアクアが2025年9月にマイナーチェンジ(トヨタは一部改良と表現)を行い、内外装の大幅変更に加えて、安全装備の拡充を行いました。ここでは現行型アクアの車両解説とともに、2025年9月に行った改良のポイント、さらにフロントマスクが変更された改良後のアクアの試乗インプレッションをお届けしましょう。
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5ナンバーをキープしながら少し長くなった現行型

2021年登場時の2代目アクア。ヤリスよりも少し余裕のある全長で後席の使い勝手の良さをアピール

サイドから見ると改良モデルの変更点は多くはない
現行型アクアのボディサイズは全長4,050mm×全幅1,695mm×全高1,485mmと初代モデル同様5ナンバーをキープしているのが特徴です。そのボディ骨格にはヤリスと同じTNGA GA-Bプラットフォームを採用していますが、ホイールベースは2,600mmで先代より50mm延長され、ヤリスや初代アクアと比べてもリアシートの居住性が大幅に改善されています。
新型バッテリーの採用でピカイチの燃費性能は変わらず

WLTCモードで30.0~34.3km/Lを達成した登場時の2代目アクアのエンジンルーム

改良モデルのエンジンルームの見た目は変わらず燃費も同一だが、明らかにスムーズさを増している
現行型アクアに搭載されているハイブリッドシステムは、最高出力91ps、最大トルク120Nmを発生する1.5L直列3気筒エンジンとモーターを組み合わせたもの。システム用バッテリーには世界初採用となる「バイポーラ型ニッケル水素」電池を採用しています。燃費性能はWLTCモードで30.0~34.3km/Lを実現しています。
バイポーラ型ニッケル水素電池は、従来型のニッケル水素電池と比べ、集電体などの部品点数が少なくなるのでコンパクト化できるのが特徴です。その結果、従来型電池と同等のサイズの場合、より多くのセルを搭載することが可能です。また、通電面積が広くシンプルな構造により、電池内の抵抗が低減することで、大電流が一気に流れるようになり出力の向上につながるのです。
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2代目からは待望の4WDモデルも設定された

ビジネスライクだった初代に比べるとずいぶん豪華になった2代目(登場時)

今回の改良モデルはディスプレイオーディオの最新化、新色の合皮シート追加などの変更を受けた
駆動方式は初代モデルが2WD(FF)車のみだったのに対して、現行モデルはE-Fourと呼ぶ電気式の4WD搭載車を設定。発進時や雪道などスムーズに4WD状態に切り替えることで、発進性、走行安定性をアシストするシステムです。また4WDシステムを小型軽量化したことで車両後方に配置可能となり、低燃費に貢献しながら、足元スペースやラゲッジ容量もゆとりを確保しています。さらに4WD車のリアサスペンションは、ダブルウィッシュボーン式に変更されています。
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登場時からクラストップレベルだった運転支援機能

2代目は登場時から全グレードで最新の予防安全パッケージである「Toyota Safety Sense」を標準装備していた

今回の改良で運転支援の機能向上が図られ、ホールドモード付きの電動パーキングも追加された
現行モデルの登場時、運転支援機能は全グレードで最新の予防安全パッケージである「Toyota Safety Sense」を標準装備。交差点での右左折時の事故にも対応させたプリクラッシュセーフティをはじめ、高速道路での負担を軽減する「全車速追従型レーダークルーズコントロール(ACC)」や操舵を支援する「レーントレーシングアシスト」などクラストップレベルの運転支援機能を搭載しています。また、全グレードにオプション装備として、駐車をする際の操作すべてを車両が支援してくれる「トヨタチームメイト アドバンスパーク」や、警報とブレーキ制御で接触回避を支援する「パーキングサポートブレーキ」を用意していました。
2022年11月にGR SPORTを追加

2022年11月に現行型アクアは一部改良と同時に新グレードGR SPORTを設定。新グレードのGR SPORTはGグレードをベースに剛性アップパーツ、サスペンション、電動パワーステアリング制御、フロントバンパー&ロア加飾バー、ラジエターグリル、リアバンパーロアカバー、ロッカーモールディング、タイヤ&アルミホイール、スポーティシートなどの専用品を標準装備した走りに磨きを掛けたグレードとなっています。
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今回の変更でフロントデザインを刷新、内装もアップデート

プリウスにも似た先進的なフロントマスクとなった2代目アクア改良モデル

小動物を思わせるフロントマスクだった登場時の2代目アクア
2025年9月に現行型アクアはフロントデザインの変更を含む、ほぼマイナーチェンジと言っていい内容の大幅な一部改良を行いました。外観ではハンマーヘッドをモチーフとしたフロントデザインを全グレードに採用したのをはじめ、バックドアガーニッシュ(ピアノブラック塗装)を追加しています。

ブラックのバックドアガーニッシュでクールさを増した改良モデル

シンプル路線だった登場時のリアビュー
そのほか新デザインの16インチアルミホイールの設定や新色のボディカラーを追加しました。

改良モデルに加わったメーカーオプションの新色シート

登場時の2代目アクアのフロントシート
内装では大型マルチインフォメーションディスプレイの標準装備に加えて、ディスプレイオーディオを最新のコネクテッドナビ対応に変更したのをはじめ、センタークラスター下部にHDMI入力端子を標準装備。Zグレードにオプションとして合皮パッケージに新色(ライトグレー)を追加しています。
電動パーキングブレーキなど運転支援も一段と進化

運転支援機能では、電動パーキングブレーキ・ブレーキホールド機能を標準装備したことをはじめ、運転支援機能のプリクラッシュセーフティーの対象物にバイクを追加。また出会い頭による衝突回避機能を追加、プロアクティブドライビングアシスト機能(PDA)に車線内走行時の常時操舵支援機能を追加するなど基本性能が向上しています。
そのほか、停止直後の車両の揺れ動きを抑え、乗員の姿勢変化を低減するよう補助するスムーズストップを採用、またドアミラー全開時の車幅を30mm縮小し、取り回しのしやすさを向上させるなど細かい部分にまで及んでいます。今回の一部改良では、外観が大きく変更されただけでなく、細かい部分まで見直されているのが特徴です。
アクアも今や300万円超えに

今回試乗したのは、車両本体価格282万4800円のZ 2WD車。オプションとしてLEDリアフォグランプ1万1000円をはじめ、3万9600円の195/55R16タイヤ+16インチアルミホイール、8万1400円のパーキングサポートブレーキ(周囲静止物)/トヨタチームメイト(アドバンスドパーク)/カラーヘッドディスプレイ、6万2700円の合成皮革+コンフォートパッケージ、1万9800円の寒冷地仕様。そして2万5850円のフロアマットの合計24万350円のオプションを装着し、総額306万5150円という仕様です。
日本市場でのアクアの存在価値

改良モデルに加わったメーカーオプションの新色シート

登場時はダーク系のインテリアだったが、その後の一部改良時にブラック×オレンジやブラウン系のインテリアも追加された
ヤリスやカローラスポーツといった5ドアのハッチバック車にもハイブリッドがラインアップされているのに、専用車のアクアの必要性はあるの?と思う人も多いでしょう。しかしアクアの存在価値は大いにあります。現行型ヤリスは思い切った「断捨離」をしており、リアシートの居住性は必要十分とはいえません。またカローラスポーツは3ナンバーサイズということもあり、5ナンバーのアクアの存在感は日本市場において非常に大きいのです。

2代目は全長を延ばしたことによりラゲッジも拡大された(写真は改良モデル)

リアシートを畳んだ際のラゲッジスペースも2代目は拡大されている(写真は改良モデル)
日本の道路事情にマッチしているということもあり、レンタカーやカーシェアで多く導入され、若者の欲しいクルマの上位にアクアがランクインしています。これは乗ったことがあり運転しやすいという指標となっていると思います。
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クールな外観、スムーズさを増したハイブリッド

ハンマーヘッドというデザインに変更されたアクアですが、これまでのフレンドリーな印象からクールで先進的なイメージへと方向転換しました。改良したポイントには触れられていませんが、従来以上にハイブリッドシステムはシームレスになり、エンジンとモーターの切替はエネルギーフローを見ていてもわからないほどスムーズです。
バイポーラ型ニッケル水素電池を採用したハイブリッドシステムは、街乗りでは7割モーターで走行するというほどEV走行のカバー率が高いのが特徴です。またエンジンとモーターが切り替わる際の振動や騒音もほとんど感じません。これは静粛性や制振対策が施されており、上質さを追求しています。また、軽く街乗りをしただけでも、リッター当たり27kmという優れた燃費性能を発揮しました。
乗り心地の改善は驚きのレベル

改良後のアクアに乗って最も驚いたのが、乗り心地の良いことです。荒れた路面を走行しても乗員にはフラットな乗り心地を提供してくれます。ハンドリングも穏やかで、安定性の高さを感じました。特にリアの安定感が抜群で、ドライバーだけでなく、乗員全員に安心と安全を提供してくれます。

コンパクトカーながら、パワーシートも選ぶことができますので、ビギナーだけでなく、子育てが終わって大きなクルマが必要なくなったユーザーにピッタリと言えるクルマでしょう。
(写真:萩原文博)
※記事の内容は2025年12月時点の情報で制作しています。
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