衝突被害軽減ブレーキをはじめとする車の先進安全技術は各メーカーが競い合うように開発を進めている分野であり、新型車には次々と新しい機能が搭載される時代になっています。しかし先進安全技術は同じ機能であってもメーカーによって名称が異なることも多く、わかりにくい部分があるのも事実です。
ここではホンダ「フィット」の安全性能について、わかりやすく解説します。
この記事のPOINT
- ホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」が全車に標準装備
- フロントワイドビューカメラと前後のソナーセンサーによる3つの検知システムを採用
- フィットは「サポカーSワイド」に該当
フィットの安全性能の特徴
ホンダには、ホンダ自慢の安全運転支援システム「Honda SENSING」があります。2020年2月に登場した現行型のフィットには「Honda SENSING」が全車標準装備されているのはもちろんのこと、「Honda SENSING」に新たな機能を搭載させて先代型よりもさらに安全性能を向上させています。
フィットには広い水平画角で側方に対する検知能力を高めたフロントワイドビューカメラと前方・後方のソナーセンサーによる3つの検知システムで車両の周囲の状況を検知する新システムを採用。自転車や夜間歩行者の検知にも対応し、安全運転をサポートします。
フィットに搭載される「Honda SENSING」の内容
ここからは、フィット全車に搭載される「Honda SENSING」に含まれるおもな機能について見ていきましょう。なお、2022年10月のマイナーチェンジで追加された機能については後述します。
衝突軽減ブレーキ
システムが車両や歩行者、人が乗って移動する自転車を検知し、衝突の危険があると音とディスプレイ表示で警告を発し、ドライバーに衝突の危険を知らせます。
警告を発している状態でさらに対象物との距離が近づくと、自動で軽いブレーキをかけて減速し、衝突回避を図ります。それでも衝突が避けられないとシステムが判断した場合は、強力なブレーキを作動させ、衝突の回避や被害軽減をサポートします。
誤発進抑制機能(前方・後方)
進行方向に壁などの障害物を検知している状態で、アクセルペダルを必要以上に踏み込んだ場合、音とディスプレイ表示で警告するとともにエンジンやハイブリッドシステムの出力を抑制して急発進や急加速を防ぐ機能です。
近距離衝突軽減ブレーキ(前方・後方)
フロント/リアのセンサーが進行方向の障害物を検知します。障害物と衝突のおそれがあるとシステムが判断した場合には警告を発するとともにブレーキを作動させて衝突の回避や被害の軽減を支援します。
約2~10km/hの低速で走行している際に作動します。
路外逸脱抑制機能
フロントワイドビューカメラが車線や草、砂利などの道路境界を検知します。ウィンカー操作なしに車線を逸脱する危険がある、または境界へ車両が接近したとシステムが判断した場合はディスプレイ表示とステアリングの振動でドライバーに危険を知らせ、回避操作を促します。
それとともに車線逸脱を防ぐ方向にステアリング操作をシステムが支援し、車線を逸脱しないようサポートします。
歩行者事故低減ステアリング
システムが車線と歩行者を検知し、路側帯の歩行者との接触の可能性があると判断した場合には音と表示で警告を発するとともにステアリング操作をアシストして回避操作を促す機能です。
状況によっては、衝突軽減ブレーキの作動が優先される場合もあります。
車線維持支援システム
システムが左右の車線を検知して、ステアリング操作を支援することによって車線中央付近の走行をサポートする機能です。
約65km/h以上で高速道路などの自動車専用道路を走行中に作動します。
渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール
フロントワイドビューカメラが先行車と自車の距離を計測し、システムが加減速をサポートして設定車間距離を維持しながら先行車に追従走行したり設定した車速で定速走行をしたりして、ドライバーの運転負荷を減らし、安全運転に貢献するシステムです。
渋滞追従機能付きなので、先行車の停車を検知すると自車も自動で停止します。先行車が走り出した際には、ドライバーのアクセル操作やスイッチ操作で追従走行を再開します。
先行車発進お知らせ機能
約10m以内の先行車を検知し、先行車が発進しても自車が発進せず停車し続けた場合、音とディスプレイ表示でドライバーに先行車の発進を知らせます。
信号待ちなどでの出遅れ防止をサポートしてくれる機能です。
標識認識機能
フロントワイドビューカメラが道路標識を認識し、標識によって最適なタイミングでメーターに道路標識情報を表示することで標識の見落としを防ぐ機能です。
最高速度とはみ出し通行禁止、一時停止、車両進入禁止の4種類の道路標識の認識が可能です。
オートハイビーム
夜間走行時、システムが前方の車両や周囲の明るさを検知し、状況に応じてハイビームとロービームを自動で切り替える機能です。
手動切り替えの手間を軽減し、切り替え忘れを防止します。
このほか、駐車時などに障害物の接近を知らせてくれる「パーキングセンサーシステム」もあります。また、一部グレードにはオプションで、バックで出庫する際に接近車両を検知する「後退出庫サポート」や、斜め後ろを走る車を検知して車線変更時の安全確認をサポートする「ブラインドスポットインフォメーション」などが追加可能です。
マイナーチェンジで新たに加わった機能
2022年10月に実施されたマイナーチェンジでは、専用サスペンションを採用して走る楽しさを高められるグレード「RS」が新設されたほか、先進安全技術も追加されました。
急アクセル抑制機能
障害物の有無に関係なく、ペダルの踏み間違いやアクセルペダルの踏み込みすぎなどによる急加速を検知すると、アクセルペダルを戻すように警告し、加速を抑制します。
この「急アクセル抑制機能」は全車に搭載されていますが、使用するには別途ディーラーでセッティングする必要があります。
トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)
自動車専用道路での渋滞時に、ステアリング操作を支援してくれる機能です。渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロールと合わせてドライバーの負担を大幅に軽減してくれます。
トラフィックジャムアシストは車線維持システムがONの際に作動します。自車速が65km/h以上になると車線維持システムが作動し、車速が50km/h以下になるとトラフィックジャムアシストに切り替わります。
充実した先進安全技術を搭載し、高い安全性を持つフィットで安全なカーライフを
2017年4月から経済産業省や国土交通省が高齢ドライバーの事故防止につながる先進安全機能を備えた車に「セーフティ・サポートカー(サポカー)」の愛称を付け、普及を推進しています。サポカーは搭載する先進安全機能によって4種類に分けられていますが、フィットはその中でも最も上位の分類である「サポカーSワイド」に該当します。
さらにサイドエアバッグシステムやサイドカーテンエアバッグシステムも全車に標準装備し、衝突安全性にも配慮が見られます。
もしもの危険を減らしたり、被害を軽減したりしてくれる車の安全性能は重要な車選びのポイントとなる部分なので、細かい部分まで確認して納得のいく安全性能を持つ車を選ぶようにしましょう。
よくある質問
Q1:フィットはどの「サポカー」?
A:フィットはホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」を標準装備し、全車が「サポカーSワイド」に該当する安全性を有しています。
Q2:フィットにはどんな先進安全技術が搭載されているの?
A:車線からはみ出す危険がある場合はステアリング操作をサポートして逸脱回避を促す「路外逸脱抑制機能」や路側帯の歩行者との接触回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」、標識の見落とし防止をサポートして安全運転に貢献する「標識認識機能」などがあります。
Q3:新たに追加された「急アクセル抑制機能」ってどんなもの?
A:アクセルとブレーキの踏み間違い、またアクセルの踏み込みすぎをシステムが認識すると、障害物の有無に関係なく加速を抑制する機能です。なお、急アクセル抑制機能をONにするには、別途ディーラーでのセッティングが必要です。
※この記事は2023年3月時点の情報で制作しています