最近、注目を集めている軽スーパーハイトワゴンのクロスオーバーモデル。元祖スズキ「スペーシアギア」、ダイハツ「タントファンクロス」、三菱「デリカミニ」に続いて、王者N-BOXにもついに「N-BOX JOY」が追加されました。外観、内装などの詳細に加えて、新型スペーシアギアとの試乗比較なども紹介します。
ついにN-BOXにもクロスオーバーモデルが追加
全国軽自動車協会連合会が発表している2024年10月の新車販売台数を見ると、1万6831台でホンダ「N-BOX」がトップ。2位には1万4234台のスズキ「スペーシア」、3位には1万609 台のダイハツ「タント」がランクイン。いすれも現在の軽自動車の売れ筋といわれるスーパーハイトワゴンが上位を独占しています。
軽自動車のベストセラーモデルとなっているスーパーハイトワゴンですが、新たな潮流が生まれています。それはアウトドアのギア感をプラスしたクロスオーバーモデル。山登りや本格的なキャンプに行くわけではないけれど、アウトドアブランドの機能性の高い服やアイテムをファッションとして取り入れていることと同じで、悪路走破性を高めるというよりは、アクティブさを強調するというイメージです。
スズキ「スペーシアギア」を皮切りに、ダイハツ「タントファンクロス」、そして三菱「eKクロススペース」改め「デリカミニ」と、各社がスーパーハイトのクロスオーバーモデルを設定してきました。そしていよいよこのセグメントのトップセラーモデルであるホンダN-BOXにも「N-BOX JOY」が追加されました。
【外観】道具感を際立たせたアクティブな雰囲気
2024年9月26日に発表されたN-BOX JOYは、人々の暮らしや働き方が多様化する中、「アウトドアを手軽に楽しみたい」「じぶんだけのくつろぎの空間がほしい」といったユーザーのニーズに応え、誰でも気軽にリラックスした時間を満喫できるクルマを目指して開発されました。
標準車のN-BOXをベースにしつつ、N-BOX JOYの外観デザインは立体感のあるヘッドライトや、ブラックとボディカラーのコンビネーションバンパーなどで道具感を際立たせたアクティブな雰囲気が特徴です。
ヘッドライトは、ハウジングを表面に模様を施したシルバーで仕上げ、先端にシルバーリングを採用。異なるシルバーの組み合わせにより、立体感を強めると同時に精緻でタフなイメージを演出しています。フロントグリルのアッパーグリルも金属板をプレス成型したような塊感のある造形をブラックで表現しながら、ミドルグリルは中央部に凹みを与えることで力強さを感じさせるデザインとなっています。
フロント&リアのバンパーは、N-BOXの特徴である安定感のある四角いフォルムを損なわないように、コーナーをブラックで引き締めています。これにより踏ん張り感のあるスタンスの良さを強調すると同時に、ブラックのバンパーやドアロアーガーニッシュと統一感を持たせました。ブラックのドアロアーガーニッシュは、タフなイメージを創出するだけでなく、視覚的な重心を下げ、安定感のある走りを感じさせてくれます。また、電動格納式リモコンドアミラー、アウタードアハンドルなどもブラック塗装となり統一感はもちろん、引き締まったイメージに効果的です。
【内装】撥水素材のチェック柄ファブリックと「ふらっとテラス」
インテリアは、シート表皮に、撥水素材のチェック柄ファブリックを全グレードに採用。自然吸気エンジン車はトリコットと撥水ファブリックのコンビシート。ターボエンジン車は合成皮革のプライムスムースと撥水ファブリックのコンビシートを採用し、バリエーションを持たせています。
撥水素材の生地は、各シートの座面や背もたれといったメイン部に加えて、フロントシートアームレスト、リアシート背面、スライドボード上面にも採用しています。またカラーリングは、汚れの目立ちにくいベージュに、オレンジやブルー系の色をミックスすることで落ち着いた雰囲気となっています。
インテリアにおけるN-BOX JOYの大きな特徴が「ふらっとテラス」です。後部座席をダイブダウンするだけで、リラックスした時間を過ごせるテラスのような空間が出現します。N-BOXやN-BOXカスタムに対して、フロア後端を80mm高く設定することで、足を伸ばしてくつろげるフラットに近い座面を実現しています。
また、快適な座り心地を追求するため、リアシート背面にプレートを追加し凹凸を削減したほか、フロアのストラップ機構にヒンジ式リッドを設けフロアの凹凸も削減することで、ストレスのない過ごしやすい空間を追求しています。さらに、快適装備としてフロア後端に約18Lという大容量を確保したフロアアンダーボックスを採用、ボックスの左右には浅底のポケットも備えています。このフロアアンダーボックスのフタは汚れても洗える樹脂製のフロアエンドボードを採用しているのが特徴です。
【比較試乗】柔らかなN-BOX JOY、しっかりしたスペーシアギア
今回試乗したのは、車両本体価格が最も高額なN-BOX JOY ターボ2トーン4WD車です。このグレードにHONDAロゴが際立つフロントグリルとバンパー周りを引き締めるLEDフォグライトをセットにしたアクティブフェイスパッケージ7万4800円を装着。そのほかマルチビューカメラシステムをはじめ、9インチナビゲーションなど約50万円のオプションが装着されている仕様です。
ちょうどライバルと言えるスズキスペーシアギアと同時に試乗することができました。スズキスペーシアが安定感を高めるためにやや硬めの足回りのセッティングとなっているのに対して、N-BOX JOY ターボは、やや柔らかめのセッティングと言えます。ただ誤解してもらいたくないのは、N-BOX JOY ターボの足回りが柔らかくて安定感が悪いというのではありません。
サスペンションの一部であるショックアブソーバーがよりスムーズに動き質感の高い走りを実現しているのがN-BOX JOY ターボなのです。しっかりとサスペンションが仕事をしてくれるので、段差を超えた時などの路面からの入力もいなしてくれますし、カーブなどでのクルマの傾きも穏やかな印象です。
スペーシアがしっかり感を強調してフラットな乗り味を実現しているのに対して、N-BOX JOY ターボはサスペンションが仕事をしてできるだけ無駄な動きを抑えようとしていると言えます。これはどちらが良いか、悪いかではなく、ドライバーの好みで分かれると言えます。
【総評・価格】迫るスペーシアを引き離せるか?
N-BOX JOYは見た目をクロスオーバー化するだけでなく、N-BOX JOYで出掛けた先でくつろぎの時間を過ごせるようにインテリアまでしっかりと手が加えられているモデルです。
2023年にフルモデルチェンジを行って以降、販売台数No.1を続けているN-BOXですが、前年比の販売台数はマイナスが続き、スズキスペーシアに肉薄されています。このN-BOX JOYの追加は、再び揺るぎないトップセラーモデルへの復権のカギになると言えそうです。
なお、N-BOX JOYの車両本体価格はN-BOX JOYモノトーン2WD車の184万4700円~N-BOX JOY ターボ2トーン4WD車の226万500円となっています。
※記事の内容は2024年11月時点の情報で制作しています。