LLサイズミニバンの人気モデル、トヨタアルファード/ヴェルファイア。2020年3月の新車販売台数は1万台オーバーと相変わらずの人気ぶりです。そんなアルファード/ヴェルファイアを超えるフルサイズワゴンが2019年12月より販売開始されたトヨタグランエースです。今回はグランエースの4列シート8人乗り「G」グレードを評論家の萩原さんが公道へと連れ出しました。その試乗レポートをお届けしましょう。
全長5.3m、もはやミニバンではない
グランエースがミニバンではなく、フルサイズワゴンと呼ばれる理由はその大きなボディにあります。グランエースのボディサイズは全長5,300mm×全幅1,970mm×全高1,990mm。アルファード/ヴェルファイアが全長4,935mm×全幅1,850mm×全高1,935mmなので、グランエースの圧倒的な大きさがわかるでしょう。
この大きなボディは当然広い室内空間を生み出します。室内長3,290mm、室内幅1,735mmというゆとりのある空間にGグレードは4列8人乗り、上級グレードのプレミアムは3列6人乗りのレイアウトを採用。プレミアムはオットマンや快適温熱機構が付いた専用のエクゼクティブシートを採用しています。
搭載されるエンジンは最高出力177ps、最大トルク450Nmを発生する2.8L直列4気筒ディーゼルターボで、組み合わされるミッションは6速ATとなります。駆動方式はアルファードヴェルファイアとは異なり、エンジンを縦置きとした後輪駆動のFRを採用。燃費性能はより実走行に近いWLTCモードで10.0km/Lを実現しています。搭載するディーゼルエンジンはDPF尿素SCRなどを採用し、高い環境性能を実現。その結果、エコカー減税で免税となっています。
高い位置にある運転席、演出は控えめ
全長5.3mの長く大きなボディ、そしてメッキパーツを多用した大きなフロントグリルによって、グランエースは圧倒的な存在感を放ちます。運転席が高い位置にあるので、乗り込む際はレバーを掴んで登るようになります。
ドライバーシートに座り、見えるインパネ回りの光景はエアコンの吹き出し口などにメッキ加飾は行われているものの、アルファード/ヴェルファイアに比べると演出は抑えめといった印象を受けます。8人乗りGグレードのセカンドシートはオットマン付きのキャプテンシートを採用。3列目〜4列目はハイエースほどではないもののシンプルなシートとなっています。乗車した人全員がラグジュアリーさを求めるならば6人乗りのプレミアムがおすすめです。
Gはセカンドシートを100点とすると、3列目は90点。4列目は70点と差があります。また、4列目シートの影響でフル乗車した際のラゲッジスペースはかなり少なめです。やはり、たくさんの人を乗せる!ということを優先しているクルマだということはラゲッジルームを見て実感しました。
都心で乗るにはやはり大きさが気になる
グランエースを実際に試乗してみると、大きなボディにしては最小回転半径が5.6mと取り回しは悪くありません。しかし、都心で乗るには「とにかく大きい!」と感じる場面が多いのは正直なところ。ドライバーのシートポジションも高く、アップライト気味のコクピットレイアウトなので、乗用車を運転しているというよりもやはり、ビジネス車に乗っているという感覚を強く受けます。
印象の良いエンジン、そうでもない足回り
搭載されている2.8L直4ディーゼルターボは1600回転という低回転域から最大トルク450Nmを発生するので、車両重量約2.7トンもあるグランエースをスムーズに加速させます。信号待ちなどの発進加速も非常に滑らかですし、ディーゼル特有のカラカラ音もほとんど聞こえることはありませんでした。そういった点では、高いホスピタリティを確保していると言えます。
ただボディが大きいため、剛性感がアルファード/ヴェルファイアと比べると物足りない感じがしますし、リアサスペンションもトレーリングリンクなので、段差を乗り越えた時の衝撃の収まりやカーブを曲がった際などクルマの傾きなども大きめとなっています。
運転するより、運転してもらった方が幸せになれる
アルファード/ヴェルファイアもハイヤーなどで使用されていますが、やはりパーソナルユース重視での快適さはアルファード/ヴェルファイアのほうが上です。グランエースは送迎用として多くの人を快適に運ぶというビジネスユースに向いており、クルマのキャラクターが大きく異なっています。
※記事の内容は2020年5月時点の情報で制作しています。