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【試乗】マツダ「ロードスター」大幅改良で熟成がまた一歩進んだ(島崎七生人レポート)

【試乗】マツダ「ロードスター」大幅改良で熟成がまた一歩進んだ(島崎七生人レポート)
【試乗】マツダ「ロードスター」大幅改良で熟成がまた一歩進んだ(島崎七生人レポート)

4代目となる現行のマツダ「ロードスター」ND型は2015年の発売以来、歴代で2番目となる生産台数を誇る人気モデル。2023年10月に大幅な改良を受けた最新のロードスターの実力を、初代NA型のオーナーでもあった島崎七生人さんが試しました。

初代以来の売れ行きを誇る現行モデル

初代以来の売れ行きを誇る現行モデル

現在のND型ロードスターが登場したのは2015年のこと。「もう9年も経ったのかぁ……」とは、チコちゃんに叱られるような生き方しかしてこなかった筆者の個人的な受け止めとして、今年4月までの生産台数は実に31万7862台。この台数はさすがに初代NA型の43万1506台にはまだ届いていないものの、NB型(29万0123台)、NC型(23万1632台)を凌ぐ数字になっている。

見た目だけでなく電子プラットフォームの刷新なども含む大幅な商品改良

見た目だけでなく電子プラットフォームの刷新なども含む大幅な商品改良

そんな現行ND型ロードスターで知られているのは、ほぼ毎年、何らかの商品改良が行なわれてきたということ。直近の大幅商品改良が実施されたのは2023年10月のこと。内容は実は大がかりなもので、このタイミングでいわゆる電子プラットフォームが刷新され、MRCC(マツダ・レーダー・クルーズコントロール)、SBS-RC(スマート・ブレーキ・サポート 後退時左右接近物検知機能)などを追加。さらにフレームレスの8.8インチセンターディスプレイ採用のマツダコネクトの進化、ランプ類、ホイールなどの意匠変更も実施。それと“アシンメトリックLSD”の採用、電動パワーステアリングの改良、国内のハイオクガソリンに合わせたことによる1.5Lエンジンの性能向上(+4ps)といった項目も新しい。

見た目だけでなく電子プラットフォームの刷新なども含む大幅な商品改良

ちなみに電子プラットフォームの刷新は、最新のWP29(自動車基準調和世界フォーラム)のCS(サイバーセキュリティ)法規の型式認定要件UN-R155に対応するために実施されたもので、OTAのための通信機器も搭載されるなどした。アーキテクチャーそのものはCX-60のそれをベースに、ロードスターでも“使える”ようにモディファイが加えられたものだそう。

シットリさを増した操舵感の手応え

シットリさを増した操舵感の手応え

そんな最新のロードスターに試乗した。借り出したのはソフトトップ、RFの2台で、ソフトトップは“SレザーパッケージVセレクション”、RFは“RS”グレード。年初にプレス向け試乗会の案内があり、本来はその時に乗りたかったのだが都合で参加がままならず、ならば寒さが和らぎ、季節がよくなってから改めて……と時期的には桜の咲く頃に試乗車を借り出した次第。もちろん1人で2台を一度に借り出す訳にいかず、ソフトトップ、RFと続けざまに借り出せる予定を組んでもらうことで試乗が叶った。

シットリさを増した操舵感の手応え

実車だが、乗った印象をひとことで言うと“ロードスターの熟成がまた一歩進んだ”といったところ。もともと筆者は(とくに最近はお年ごろもあり)クルマをつま先立たせて走らせるよりも、日常的な走りの中でいかに快適か、心地いいか、気持ちいいかを重視するタイプ。その点で新型の走りは、非常になじめるものになった印象だ。ソフトトップのほうで言うと、まず実感したのがステアリングを切る/戻すの操舵感が今まで以上にシットリといい手応えになったこと。安心感が増し、こちらの操作に対して早過ぎず遅過ぎず齟齬のない反応になっているといえばいいか。ともかくこれだけでもロードスターのアップグレード感が味わえる、そんな印象だ。

アシンメトリックLSDがもたらす接地感、スムースさもサウンドも良くなったエンジン

アシンメトリックLSDがもたらす接地感、スムースさもサウンドも良くなったエンジン

もう1点、アシンメトリックLSD(6速MTの試乗車には標準)の採用も実感できる。それほどの速度域ではなくても、コーナーリング中にフッと速度を落とすなどした場合、リヤタイヤが浮つくことがなく、4輪の安定した接地感を感じながら走らせていられるのが、多分、その効果なのだろう。KPC(今回も標準)が採用された際の、ジワッと安定して踏ん張るコーナリング姿勢もよかったが、駆動力のかけ方の如何を問わず4本のタイヤが路面に吸い付いたような感覚は、多分、今までのロードスターとはまた違う味わいだと思う。

アシンメトリックLSDがもたらす接地感、スムースさもサウンドも良くなったエンジン

ちなみに車両姿勢が安定しているところから、我が家のシュン(柴犬・オス・2歳、乗り心地・NVH評価担当)も乗車姿勢が崩されずに心ゆくまで初のオープン走行を堪能していたようだった。

アシンメトリックLSDがもたらす接地感、スムースさもサウンドも良くなったエンジン

1.5L(136ps/15.5kgf・m)エンジンはスペック上5psの向上だが出足の低回転から扱いやすさが増し、回転とスピートを上げていく際のスムースさも向上した印象。例の吸気音をキャビンに取り込む演出装置が聞かせる音もやや殺伐としたものから、粒立ちのいい小気味よく自然なサウンドになっている。それと試乗車はレザーパッケージだったが、センターコンソールにステッチが施されるなどし、より質感の高い風合いが楽しめた。

RFはアダルトでジェントル

RFはアダルトでジェントル

一方でRFも試乗車は6速MTでアシンメトリックLSDは標準。KPCも標準で、ビルシュタインのダンパーを装着する仕様だ。こちらは2Lエンジン(184ps/20.9kgf・m)を搭載、車重は今回の試乗車同士だとソフトトップ+80kgの車重1110kgとなり、もともと落ち着きのある挙動、乗り味が特徴だったが、今回もトップのオープン/クローズにかかわらずジワッとしたサスペンションストロークと手応えのシッカリしたステアリングとで、アダルトでジェントル(!)な味わいが楽しめるクルマになっている。

RFはアダルトでジェントル

RFはアダルトでジェントル

RFはボディ色も新色のエアログレーメタリックで、ソリッド色のようにも見えるスノッブなところが個人的には好みだった。

楽しかったこと、気持ちよかったことしか思い出せない初代ロードスター

楽しかったこと、気持ちよかったことしか思い出せない初代ロードスター
ところで個人的に好み……といえば、筆者は初代のNA型に登場後半年くらい経ってから、ふと乗りたくなり、自分のクルマとして所有していた経験がある。今からもう30年以上前の話だ。思い返せば楽しかったこと、気持ちよかったことしか思い出せないくらいで、いかにロードスターというクルマが当時の自分の生活スタイルの中でアクセントになっていたか……と懐かしい思いでいっぱいだ。まだ30歳代のころで今よりもずっと若かったから、徹夜仕事で原稿書きをして朝を迎え、海が見たくなりそのまま湘南方面を目指したり、夏のお盆時期に、焚かれた迎え火の煙のにおいがする中、とある山の中の集落を抜けてワインディング路を走ったりもした。意気揚々と夜の高速道路をオープンで走り出すも、助手席に乗る当時の女友達から「髪の毛が爆発する!」と大ブーイングをくらったり……。

楽しかったこと、気持ちよかったことしか思い出せない初代ロードスター

あるいはアルミホイール(エンケイ・アライフ)や足回り(コニのダンパーとレーシングビートのスプリング)、ステアリング(モモ・モンツァとナルディ・ウッド)、ドアミラー(ビタローニ)。それと車名エンブレムを“Miata”のステッカーに替えたり(外したエンブレムは今でも手元に残してある)、当時のショップ特製の純正よりも10kg軽かったボディ同色2ペイントしたFRPのハードトップを載せた姿を楽しんだり……。それとタミヤのプラモデルを作ったり、ミニチュアカーも43分の1のダイヤペットや87分の1のヘルパなどを集め、これらは今でも仕事部屋に置いてある。筆者はどちらかというとスタイルや雰囲気をより楽しみたいと思うタイプだが、ロードスターにとことん楽しませてもらった一時期は、今でもとても懐かしい。  

いつまでも現役でいてほしい

いつまでも現役でいてほしい
初代マツダ(ユーノス)ロードスターの発売から、今年で実に35年。この間にNA型、NB型、NC型、ND型と計4世代のロードスターが誕生。2000年には、2人乗り小型オープンスポーツカー生産累計世界一として初めてギネス世界記録認定、そのほか2016年には1989年4月の生産開始以来27年で生産累計100万台達成など、ここではフォローしきれないが幾多の記録も残してきた。そんな日本の、マツダのロードスターは、いつまでも現役でいてほしいと思う。

(写真:島崎七生人)

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※記事の内容は2024年5月時点の情報で制作しています。

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