新しいコンパクトSUVとしてホンダが投入した「WR-V」について、外観・内装・パワーユニット・燃費・安全性能・グレード構成・燃費まで、まとめて解説。2024年3月22日に発売予定のWR-Vの魅力をわかりやすくご紹介します。
【概要】ホンダ「WR-V」は戦略的な価格でワンランク上の安全性と利便性を実現したコンパクトSUV
ホンダ「WR-V」は2023年12月21日に発表され、2024年3月22日から発売されるコンパクトSUVです。全長/全幅/全高は4,325/1,790/1,650mmで、コンパクトといっても同じホンダの「ヴェゼル」(4,330/1,790/1,580mm)とほとんど変わりません。
WR-Vの最大の特徴は209万8800円から、最も高いグレードでも248万9300円という価格の安さ。既存車種のパワーユニットやシャシーを活用し、海外で生産することでコストを抑えています。安いとはいえ運転支援やコネクティッド機能など先進装備に手抜きはありません。直線基調のスマートな外観とコンパクトとは思えない室内空間の広さも魅力です。
コンパクトSUVではトヨタ「ライズ」/ダイハツ「ロッキー」(全長/全幅/全高:3,995 /1,695/1,620 mm、価格:171万7000円〜)が低価格で人気を集めていたものの、不正認証問題で販売を停止していました(2024年3月4日からガソリン車のみ出荷再開)。他にもトヨタ「ヤリスクロス」(全長/全幅/全高:4,180/1,765 /1,580mm、価格:190万7000円〜)など強力なライバルがひしめく激戦区ですが、ホンダ「WR-V」はハイブリッドや4WDの用意こそないものの、ライズ/ロッキーやヤリスクロスよりも一回り大きなボディサイズと戦略的な価格、魅力的な内外装によって、このマーケットで存在感を示す可能性は十分あります。
【価格・グレード・発売時期・納期】発売は2024年3月22日、価格は209万8800円~248万9300円
ホンダWR-Vは2023年12月21日に発表され、2024年3月22日から発売されます。グレードは3種類、最も価格の安いグレードはXの209万8800円、最も高額なのがZ+の248万9300円です。WR-Vの駆動方式は全車2WD(FF)のみとなっており、搭載するパワーユニットも最高出力118ps、最大トルク142Nmを発生する1.5L直列4気筒エンジン+CVTの1種類で、グレードの違いは装備差となっています。
【グレード一覧】エンジン、駆動方式は全車共通で価格差は装備の違い
〈WR-V 主要諸元〉
グレード | X | Z | Z+ |
---|---|---|---|
駆動方式 | 2DW(FF) | 2DW(FF) | 2DW(FF) |
トランスミッション | CVT | CVT | CVT |
ボディ | 5ドア | 5ドア | 5ドア |
乗車定員 | 5名 | 5名 | 5名 |
価格(税込) | 209万8,800円~ | 234万9,600円~ | 248万9,300円~ |
排気量 | 1.496 cc | 1.496 cc | 1.496 cc |
燃費 (WLTCモード・国土交通省審査値) | 16.4 km/L | 16.2 km/L | 16.2 km/L |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | 無鉛レギュラーガソリン | 無鉛レギュラーガソリン |
全長/全幅/全高 | 4,325/1,790/1,650 mm | 4,325/1,790/1,650 mm | 4,325/1,790/1,650 mm |
最低地上高 | 195 mm | 195 mm | 195 mm |
車両重量 | 1,210 kg | 1,230 kg | 1,230 kg |
WR-Vの納期については2024年2月中旬、現在で6カ月と公式ホームページで案内されています。WR-Vは海外で生産され、輸入されているモデルなので、今後も納期が早まるとしても3カ月ぐらいでしょう。
【外観】逞しく頼れるSUVとして力強さを追求した外観デザイン
WR-Vのデザインコンセプトは、「MASCULINE(マスキュリン:逞しさ)&CONFIDENT(コンフィデント(自信)」です。柔軟な発想で生活の自由度を拡げて、新たな可能性を追求する人々に寄り添う存在を目指して開発されました。SUVとしての力強さを、キャラクターラインや複雑な造形に頼ることなく、骨太感のあるきわめてクリーンなデザインで表現しています。その結果、人に自然と寄り添える押しつけ感のないシンプルさと逞しさを両立させています。
外観デザインは、ベルトラインが高く体幹を貫くようなしっかりとした厚みのあるボディと、優れた走破性を体現する地上高の高いスタイリングで信頼感と安心感、風格を表現しました。
WR-Vのフロントデザインは、ボンネットを車両前端まで伸ばし、先端のワイドなクロームメッキ・フロントグリルガーニッシュとスクエアなフロントグリルと合わせて、ノーズの厚さを強調しています。さらに、フロント上面の両端を一段と隆起させた形状にすることで、外観の力強さと車幅感覚をつかみやすさを両立したロングノーズデザインを採用しています。
WR-Vのサイドは上下幅の広いドアパネルを中心に、フロントノーズからリアセクションまで体幹を貫くようなデザインにより、乗員を守る頼もしいSUVらしさを表現しました。またフェンダーは筋肉を感じさせるような丸みを持たせて、大きく張り出させることで力強さを表現しています。そしてスクエアな形状とし大型化することで、タイヤの存在感が際立つ引き締まったサイドビューとなっています。
WR-Vのリアデザインは、高く配置したテールランプにより、SUVらしいベルトラインの高さを表現しています。またリア全体を水平基調とすることで、ワイド感を強調しながら、切り上がったシルバーバンパーロアーガーニッシュにより高いロードクリアランスを強調しています。
WR-Vの最低地上高はクラストップレベルの195mmを確保。未舗装路や段差を走行する際のストレスを軽減しています。
【内装】運転のしやすさや使いやすさを追求
WR-Vのインテリアは、水平基調のインストルメントパネルと柔らかいパッドに包まれる安心感のある空間。そして先進装備の最適配置、優れた視界により、安心感と運転のしやすさを追求したくましさを感じられるデザインとなっています。
ノイズのないスッキリとした視界を確保するため、フロントウインドウのラインを水平・垂直に交わるようにしてコーナー部も直角とすることで、車体の傾きや向きを把握しやすくなるようにデザインしています。また、ドアミラーとフロントピラーの間に隙間を作り、歩行者などの見やすさにも考慮しています。
WR-Vのインストルメントパネルは、水平基調でおおらかな面で構成されたシンプルなデザインが特徴です。広さと力強さを感じる堂々とした存在感を表現しつつ、先進装備を最適配置することで使いやすさを追求しています。メーターパネルには、タコメーターとマルチインフォメーションディスプレイを表示する7インチの液晶パネル。そしてアナログメーターを組み合わせた大型2眼メーターを採用し、高い視認性を確保しています。またエアコンなどのスイッチ類は、センターパネルの手の届きやすい位置に集中的に配置しています。
WR-Vのフロントシートには、運転しやすく疲れにくいボディースタビライジングシートを採用しています。このシートは骨盤から腰椎までの体圧を面で受け止めてくれますクッションパッドの肉厚や乗員支持面を最適化し、優れたホールド性と柔らかな座り心地を提供します。
WR-Vの広い室内空間には、様々な収納スペースを配置しています。単にスペースを設けるだけでなく、カップへアクセスする際、セレクターレバーに干渉しにくいレイアウトや取り出し時に指が当たらないように開口部を拡げるなど使い勝手を配慮したデザインを採用しています。
上級グレードとZとZ+にはステアリングとセレクトレバーに手になじむ本革を採用。またシート表皮には、プライムスムース(合成皮革)とファブリックのコンビシートを採用しています。さらにフロントドアやセンターコンソールボックスにもプライムスムースをあしらい、上級モデルに匹敵する高級感を演出しています。
ラゲッジルームは、後席からの荷室長を確保するとともに、壁面をフラットに近い形状にしたり、床下収納を設けたりしたことで、クラストップレベルの458L(5人乗車時)を確保しています。
【試乗レポート】切れ味の良さとリラックスを両立した高レベルの走行性能
コスパの良さがセールスポイントのWR-Vですが、その走りの実力もなかなかのもの。1.5Lエンジン+CVTという平凡な組み合わせのパワーユニットながら、ホンダらしいスムーズなエンジンとリニアなCVTのおかげで切れ味の良い走りを披露します。さらに運転席からの視界の良さも相まって、初めてでもストレスなく運転することができると評論家の島崎七生人さんはレポートしています。
「いつも混んでいるに決まっている都内の道でも、WR-Vは、こともなげにごくスムースに走らせることができた。しかもずっと前から乗り慣れた自分の家のクルマのように。一般公道の初試乗でこれだけストレスなく走らせられるクルマはなかなかない。」
パワーユニットのみならず、高速道路から山道までリラックスできる足回りについて岡崎五朗さんも高く評価しています。
「フットワークも好印象だ。どんな状況でもハンドリングは素直で自然。ことさらハンドル操作に集中しなくても狙ったラインをスムースにトレースしていくから、高速道路でも山道でもリラックスして運転していられる。」
【パワーユニット&足回り】人間の感覚にマッチするように制御されたパワーユニットを搭載
WR-Vに搭載されているパワーユニットは最高出力118ps、最大トルク142Nmを発生する1.5L直列4気筒DOHC i-VTEC自然吸気エンジンと専用チューニングが施されたCVTの1種類です。ハイブリッドの設定はありません。
専用チューニングを施されたCVTはリニアで力強い加速フィールを実現するため、ローレシオギアを採用しレスポンスを向上させています。さらに、リニアな加速感が得られる「G-Design Shift」を採用。これはリニアで力強い加速フィールを実現させるための、ホンダ独自の協調制御技術です。アクセルペダルの開度にリニアに反応し、CVT特有の空走感を減少させています。
さらにWR-VのCVTは様々な走行シーンでドライバーの感覚にフィットする走りをもたらす緻密なシフト制御として、全開加速ステップアップシフト制御とブレーキ操作ステップダウンシフト制御を採用しています。
全開加速ステップアップシフト制御は、有段トランスミッションのように、リズミカルなエンジン回転数の変化とエンジノンで加速感とシンクロした心地良い走りを実現しています。一方のブレーキ操作ステップダウンシフト制御は、一定以上強くブレーキ踏み込んだ減速時、段階的にシフトダウンしてエンジンブレーキを効かせます。
コーナリング中は横Gを判断してエンジン回転数を高く保ちコーナーの立ち上がりでスムーズな走りを支援してくれます。
WR-Vのサスペンション形式はフロントがマクファーソン式、リアが車軸式を採用しています。フロントサスペンションは、スムーズに傾きながら高い安定性を保ち、キビキビしすぎずコーナリングできるようにセッティングすることでフラットかつ安心感のある乗り心地を追求しています。またリアサスペンションは、段差を乗り越えた時もクルマの姿勢を見出さないように設計されています。高速道路のコーナリングでもタイヤに急な負担を掛けずしなやかなセッティングとすることで快適な乗り心地と安心感を提供しています。
【燃費】ピュア内燃機関で16.2~16.4km/Lの燃費性能は及第点
WR-Vは1.5Lエンジン+CVTという1種類のパワーユニットを採用し、駆動方式は2WD(FF)のみというシンプルさです。燃費性能はWLTCモードで16.2~16.4km/Lとなっています。燃費差は装着しているタイヤによるもの。タイヤサイズはエントリーグレードのXは215/60R16、ZとZ+は、215/55R17と1インチアップしています。また、全幅1,790mmの3ナンバーボディながら最小回転半径は5.2mと取り回しの良さが特徴です。
【安全性能・先進運転支援】13の機能を採用したホンダセンシングを全グレード標準装備
WR-Vの安全装備は、衝突軽減ブレーキ(CMBS)をはじめ13の機能がパッケージ化された先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を全グレードに標準装備。フロントワイドビューカメラと前後8個のソナーセンサーを用いたシステムにより、安心・安全を追求しています。
また、WR-Vは車載通信モジュール「ホンダコネクト」を搭載し、ナビゲーションとオーディオをディーラーオプションとして設定しています。ボタン一つでオペレーターが対応する「緊急サポートセンター」をはじめ、車内でゲーム機やタブレットなどを使える車内Wi-Fiなど、安心・快適なカーライフをサポートする「ホンダトータルケアプレミアム」の充実したサービスが利用できます。
【まとめ】コンパクトSUVの台風の目となるか
ダイハツの認証不正問題によって、出荷停止となっていたコンパクトSUVのトヨタ「ライズ」、ダイハツ「ロッキー」そしてスバル「ジャスティ」のガソリン車だけが3月4日から出荷が再開されることとなりました。ライズ/ロッキー/ジャスティと同じコンパクトSUVに属するホンダWR-V。ライズなどが5ナンバーサイズなのに対して、WR-Vは3ナンバーサイズ。駆動方式はライズが2WDと4WDが選べるのに対して、WR-Vは2WDのみと一見すると不利な点も見受けられます。
しかし200万円台前半で購入できるコンパクトSUVの選択肢が増えるのはユーザーにとってメリットが大きいですし、なにしろ新しいモデルであるというのは魅力があります。そしてWR-VのエントリーグレードであるXでも装備的には充分満足できる内容なので、コンパクトSUVの台風の目となるのは間違いないでしょう。
(写真協力:ホンダ)