安全運転はすべてのドライバーに義務づけられていますが、それでもヒューマンエラーなどのさまざまな要因で交通事故は発生します。車にはできるだけ事故の被害を少なくしたり、事故を回避したりするための安全機能が搭載されていますが、その充実度は車種によって大きく異なります。
そのため、車を選ぶ際にはその車がどのような安全機能を搭載しているかを確認するようにしましょう。ここでは三菱「デリカD:5」の安全性能について紹介します。
デリカD:5には先進安全機能は搭載されず
デリカD:5は2007年に登場したモデルで、登場時以降ビッグマイナーチェンジは何度も行われていますが、フルモデルチェンジは一度も行われていません。デリカD:5がデビューした当時の2007年頃は先進安全機能を搭載した車も一部登場していましたが、現在のように一般的なものではありませんでした。
車に関する技術の進化はすさまじく、短い期間でも車の性能は大きく進化します。車の安全に関する考え方も変わり、シートベルトやエアバッグなどの衝突安全が車のおもな安全性能だった時代は過ぎ、現在の車の安全性能の主役は被害軽減(自動)ブレーキをはじめとする予防安全になっているといえるでしょう。
2017年春に国土交通省や経済産業省が推進する高齢運転者に対する交通事故対策の一環として始まった「サポカー」制度によって、被害軽減(自動)ブレーキなどの先進安全機能を搭載する車は一気に普及が広まり、近年の新型車には何らかの先進安全機能が搭載される時代になってきています。
先進安全機能を追加するためにマイナーチェンジをするモデルも少なくなく、今や先進安全機能は車になくてはならない機能といっても過言ではないでしょう。
しかし、デリカD:5では先進安全機能は搭載されていません。2007年に登場したモデルであり設計が古いという理由もあるのかもしれませんが、今の時代全く先進安全性能が搭載されておらず、オプションでも用意されていない、というのは少し時代に乗り遅れている感が否めません。
ミニバンはファミリーユースでの使用が多く、安全性能を充実させているモデルが多く存在します。最新鋭の運転支援技術を搭載しているモデルも少なくない中、デリカD:5はどうしても安全性能においては見劣りしてしまうでしょう。
デリカD:5のほかにもトヨタ「86」やスバル「BRZ」など、全く先進安全機能を搭載していないモデルも存在していますが、これらはサーキット走行が想定されているスポーツカーのため、あえて搭載していないのであってミニバンのデリカD:5とは背景が異なっています。
デリカD:5はミニバンの居住性の良さと本格SUVにも負けない悪路走破性を有したライバル不在の個性派モデルで、指名買いするファンも多い名車ですが、安全性能に関しては物足りないといわざるをえないでしょう。
デリカD:5の安全性能
ここからは、デリカD:5にはどのような安全機能が搭載されているのかを見ていきましょう。
アクティブスタビリティコントロール
4輪のブレーキやエンジン、4WDシステムを統合制御してスリップを防ぎ、安定した走行をサポートします。
また、雪道やぬかるみなどのすべりやすい路面で発進する際に駆動輪がスリップすると、スリップしたタイヤにブレーキをかけて駆動力の流出を防止するとともにエンジンやトランスミッションを制御し、スムーズな発進を支援します。
ABS(EBD付き)
スリップ時や高速走行中の急ブレーキ時のタイヤロックを防いで、ステアリング操作での危険回避能力を高めます。乗員や積載量に応じてブレーキバランスを自動的に調整するEBDと、急ブレーキの際に制動力を高めるブレーキアシスト機能も搭載しています。
アクティブコーナリングライト(後退時連動機能付き)
ステアリングの動きに連動して、進行方向を明るく照らし出して歩行者の早期発見に貢献する機能です。
また、ヘッドライトを点灯した状態でシフトレバーを「R」に入れると左右のコーナリングライトが点灯し、夜間の駐車時の視認性を向上させて安全確認をサポートします。
堅牢ボディ/リブボーンフレーム
デリカD:5では肋骨を思わせるような環状型の骨格構造のフレーム「リブボーンフレーム」を採用。さらにアンダーボディに大型のクロスメンバーを組み合わせることによってボディ全体の剛性を高め、衝突安全性、操縦安定性、静粛性を向上させています。
衝突安全強化ボディ(ライズ)
万一の衝突事故の際、乗員の十分な居住空間を確保することは非常に重要です。デリカD:5では高エネルギー吸収構造と高耐力キャビン構造で正面、オフセット、側面、後面の全方向での衝突安全性を高め、もしもの事故の際にも乗員をしっかりと守る三菱独自開発の衝突安全強化ボディ「ライズ」を採用しています。
歩行者傷害軽減ボディ/樹脂フェンダー
エンジンとボンネットの間に衝撃吸収スペースを確保したり、ウィンドシールド下部取り付け部やデッキガーニッシュなどを変形しやすい構造にしたりすることで、事故の際の歩行者の傷害軽減に配慮しています。
またフェンダーには柔軟性、復元性に優れた樹脂製フェンダーを採用。衝撃を和らげ、復元性を発揮することによって軽い衝撃による傷などを防ぎます。
ヒルスタートアシスト
坂道での発進時、ペダルを踏み換える瞬間の約2秒間ずり下がりを抑制する機能です。急な坂道でも安心して発進できるようサポートします。
エマージェンシーストップシグナル
急激に減速、もしくはABSが作動するなど、システムが急ブレーキと判断した場合にはハザードランプを自動で点滅させ、後続車に注意喚起する機能です。
時代に合わせた安全機能の搭載が待たれるデリカD:5
やはり公道を走る車であれば、最低でも被害軽減(自動)ブレーキは欲しいところ。そうした先進安全機能を搭載しないデリカD:5の安全性能は今となっては物足りないといえるでしょう。
今後、時代に合わせた安全性能を持つことが期待されます。
よくある質問
Q1:デリカD:5には先進安全機能は全車標準装備されているの?
A:いいえ、デリカD:5はどのグレードにも先進安全機能は搭載されておらず、オプションの設定もありません。
Q2:デリカD:5に搭載される安全機能はどんなものがあるの?
A:4輪のブレーキやエンジン、4WDシステムを統合制御してスリップを防ぎ、安定した走行をサポートする「アクティブスタビリティコントロール」や、ブレーキアシスト機能と状況に応じてブレーキバランスを自動的に調整するEBD機能付きのABS、ステアリング操作と連動して進行方向を照らす「アクティブコーナリングライト」などの安全機能があります。
Q3:デリカD:5はどのサポカーに該当するの?
A:経済産業省や国土交通省が普及を推進している先進安全機能を備えた「サポカー」は、搭載される機能によって「サポカー」「サポカーSベーシック」「サポカーSベーシック+」「サポカーSワイド」の4種類に分類されています。デリカD:5は被害軽減(自動)ブレーキなどの先進安全機能は搭載していないので、いずれのサポカーにも該当しません。
※記事の内容は2020年3月時点の情報で執筆しています。