2023年7月の乗用車全体(軽自動車を含む)の販売台数は32万997台、前年比は111.4%と前月より伸び幅は減少したものの7ヶ月連続で2桁の伸びを示しています。ブランドごと前年比はレクサス(255.6%)とトヨタ(138.4%)が引き続き好調、スズキとマツダも前年を上回ったものの、他の国産ブランドは前年比マイナスとなりました。
軽自動車を除く7月の新車販売ランキングは前月同様1位ヤリスから6位ヴォクシーまでトヨタ車が占めましたが、TOP10には7位日産ノート、8位セレナ、10位ホンダフリードが食い込んでいます。軽自動車(乗用車)は今秋のモデルチェンジが発表されたホンダN-BOXが首位を快走し、ダイハツタントが10ヶ月連続2位につけています。
今月も自動車評論家の島崎七生人さんに詳しく解説をしてもらいましょう。
落ち着きを取り戻してきた生産現場
「フル生産で順次お客様にクルマをお届けしている」(とある車種の開発関係者の話)といった声も聞かれるようになり、生産の現場も一時期に比べ、少しは落ち着きを取り戻せているようだ。とはいえ国産各社は自社ホームページで工場出荷時期の目処を公表しており(スズキは販社単位で伝えている)、これを見ると、メーカー、車種による違いはもちろんあるが、短ければ1〜2ヶ月、あるいは3〜4ヶ月、半年〜1年といった表示が並ぶ。ただし “詳しくは販売店にお尋ねください”と曖昧に記されている車種もある。
個々の事例だが、この記事の執筆時点(2023年8月8日現在)のマツダの“工場出荷時期目処のご案内”を見ると、CX-30、CX-5、CX-60のSUV3車種とロードスター/同RFについては注文受け付けの終了と、販売店での在庫がなくなり次第、現行車の販売の終了アナウンスも。ただこれは、いわゆる年次改良や価格改定(CX-60は8月1日に発表があり、装備体系の見直しも含む)に伴う生産切り換えに基づくもので、決して現行型の生産が終わるということではない。
レクサスとトヨタが牽引する7ヶ月連続2桁の伸び
一方で2023年7月の乗用車全体の販売台数は32万997台、前年比111.4%だった。これは6月の33万2033台、前年比123.9%から数字は落としたものの、前年比でいえば7カ月連続で2桁の伸びを維持していることになる。この数字で判断すると“好調組”はレクサス(255.6%)、トヨタ(136.4%)、スズキ(115.2%)、そしてマツダ(101.9%)に限られ、日産(98.3%)、ホンダ(94.5%)、三菱(92.2%)、ダイハツ(80.7%)、スバル(75.7%)は勢いが感じにくい。
国産乗用車販売台数 2023年7月(軽自動車を除く)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ヤリス | トヨタ | 18,854 | 100.9 |
2 | カローラ | トヨタ | 12,792 | 98.0 |
3 | シエンタ | トヨタ | 12,489 | 561.1 |
4 | ノア | トヨタ | 9,736 | 194.3 |
5 | プリウス | トヨタ | 9,206 | 403.6 |
6 | ヴォクシー | トヨタ | 8,661 | 214.7 |
7 | ノート | 日産 | 8,357 | 99.8 |
8 | セレナ | 日産 | 8,066 | 126.8 |
9 | アクア | トヨタ | 6,571 | 127.1 |
10 | フリード | ホンダ | 6,043 | 110.6 |
11 | ハリアー | トヨタ | 5,849 | 348.2 |
12 | ランドクルーザーW | トヨタ | 5,619 | 170.5 |
13 | フィット | ホンダ | 5,428 | 84.0 |
14 | ステップワゴン | ホンダ | 4,563 | 79.9 |
15 | ルーミー | トヨタ | 4,433 | 54.5 |
16 | ヴェゼル | ホンダ | 4,132 | 91.9 |
17 | ライズ | トヨタ | 3,977 | 65.0 |
18 | ソリオ | スズキ | 3,424 | 104.9 |
19 | RAV4 | トヨタ | 3,327 | 111.2 |
20 | クラウン | トヨタ | 3,200 | 1523.8 |
21 | アルファード | トヨタ | 3,096 | 100.4 |
22 | フォレスター | SUBARU | 2,797 | 107.4 |
23 | エクストレイル | 日産 | 2,758 | 107.7 |
24 | NX350H | レクサス | 2,493 | 836.6 |
25 | ジムニーW | スズキ | 2,401 | 260.1 |
26 | ZR-V | ホンダ | 2,364 | 23年4月発売 |
27 | スイフト | スズキ | 2,353 | 105.4 |
28 | CX-5 | マツダ | 2,158 | 95.3 |
29 | インプレッサ | SUBARU | 2,005 | 95.6 |
30 | パッソ | トヨタ | 1,932 | 63.8 |
31 | MAZDA2 | マツダ | 1,816 | 64.8 |
32 | CX-60 | マツダ | 1,625 | 22年9月発売 |
33 | ヴェルファイア | トヨタ | 1,617 | 1684.4 |
34 | キックス | 日産 | 1,570 | 122.3 |
35 | UX250H | レクサス | 1,532 | 450.6 |
36 | MAZDA3 | マツダ | 1,477 | 96.0 |
37 | CX-8 | マツダ | 1,434 | 148.4 |
38 | CX-30 | マツダ | 1,384 | 58.4 |
39 | デリカD5 | 三菱 | 1,274 | 86.3 |
40 | レヴォーグ | SUBARU | 1,264 | 56.8 |
41 | RX500H | レクサス | 1,097 | 22年11月発売 |
42 | ハイエースW | トヨタ | 1,004 | 106.7 |
43 | アウトランダー | 三菱 | 984 | 37.6 |
44 | シビック | ホンダ | 982 | 126.2 |
45 | カムリ | トヨタ | 946 | 355.6 |
46 | クロスビー | スズキ | 902 | 122.2 |
47 | C-HR | トヨタ | 862 | 105 |
48 | 86 | トヨタ | 854 | 83.0 |
49 | CX-3 | マツダ | 743 | 86.3 |
50 | エクリプスクロス | 三菱 | 700 | 109.9 |
※ 上記の台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含みます。
ヤリスが7ヶ月連続の首位をキープ、シエンタも好調
車種ごとの販売台数では、トップ10の顔ぶれは6月と変わらなかった。1位は7ヶ月連続で首位キープをはたしたトヨタヤリスで、6月の1万7710台から7月は1万8854台と、台数も手堅く伸ばした。その下に2位のカローラ(1万2792台)、3位のシエンタ(1万2489台)が僅差で付けているが、シエンタは前年比561.1%と好調だ。プリウスは6月の4位(1万1008台)から5位(9206台)へと、ここで順位、台数(前年比も6月の672.0%→403.6%)を下げたが、伸び代はこれからといったところかもしれない。
新型アルファード/ヴェルファイアはどこまで台数を伸ばすか
トヨタ車といえば6月に発表・発売となった新型アルファード/ヴェルファイアの動向も気になるところ。想像されるとおり、すでにデータでも強さは現れており、アルファードは6月の47位/826台から7月は一気に21位に浮上し、台数も3096台を記録。ヴェルファイアも、想定されるアルファード/ヴェルファイア合計の月販基準台数では約30%というところ、1617台を記録し33位にランクインした。一時はアルファードとの統合が囁かれただけに、新型ではどこまで台数を伸ばし、存在感を示すことになるか注目だ。
ほかに7月を販売台数で見渡すと、ホンダステップワゴンは6月の2835台(21位)から4563台(14位)へと、ここにきて伸長をみせた。トヨタルーミーも6月の2610台(23位)から4433台(15位)に、ホンダシビックは6月の660台(50位)から982台(44位)にジワリとポジションを上げたが、何でもタイプRが2万台のバックオーダーを抱えているという。
軽乗用車販売台数 2023年7月
車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 | |
---|---|---|---|---|
1 | N-BOX | ホンダ | 17,919 | 104.8 |
2 | タント | ダイハツ | 10,255 | 158.1 |
3 | スペーシア | スズキ | 9,804 | 115.5 |
4 | ハスラー | スズキ | 8,189 | 152.8 |
5 | ムーヴ | ダイハツ | 6,791 | 78.3 |
6 | ワゴンR | スズキ | 6,063 | 89.6 |
7 | アルト | スズキ | 5,519 | 108.1 |
8 | デイズ | 日産 | 4,336 | 113.1 |
9 | ミラ | ダイハツ | 4,301 | 156.9 |
10 | ルークス | 日産 | 4,033 | 65.1 |
11 | ジムニー | スズキ | 3,434 | 103.3 |
12 | デリカミニ/eK | 三菱 | 3,280 | 159.0 |
13 | サクラ | 日産 | 3,174 | 95.6 |
14 | N-WGN | ホンダ | 2,252 | 60.3 |
15 | タフト | ダイハツ | 1,678 | 30.1 |
※ 車名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計しています(アルト、ワゴンR、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
※eKにeKクロス EVは合算していません
※ 例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含んでいます。
新型が発表されても強いN-BOX
軽自動車では何といってもN-BOXがらみの話題が事欠かない。この8月3日には新型の情報公開、さらにホームページでは8月下旬から全国で先行展示会が開催されることも発表されている。「実際の発売は秋に入ってから」(ホンダ関係者)とのことだが、自他共に認める軽自動車の王者であるだけに、入念な戦略とロードマップが用意されているであろうことは想像に難くない。
そのN-BOXは7月も販売台数第1位の座を譲ることはなかった。台数も1万7919台と、6月の1万6040台に1879台も上乗せしている。こうなるとライバル車の歯が立たないというべきか、かろうじて1万台超で2位の座に留まったダイハツタント(1万255台)は7664台もの差をつけられている状況だ。
ハスラー好調、約2年ぶりの4位につける
順位では7月にはスズキスペーシアが台数を少し伸ばし、6月の4位から3位にランクアップ。入れ替わって6月には3位だったムーヴが5位に後退、台数も6月の1万1017台から6791台に落とした。ダイハツではほかにミラも台数と順位(6月の5323台/8位から4301台/9位)を落としている一方、タフトが7月には15位圏内に戻ってきている。片やタフトのライバル車のスズキハスラーは好調のようで7月は2021年8月(4位)以来の自己最高の4位につけ、台数も8189台とタフト(1687台)に大きく差をつけている。
三菱デリカミニ/eKは6月から順位をひとつ下げたものの、台数は3280台と奇遇にも6月の3270台とは10台差。日産サクラ(3174台)、スズキジムニー(3434台)なども台数もの変動幅が小さかった。スズキではワゴンRが6月より台数を上乗せ(5519台→6063台)し、順位も7位から6位に上げ、中堅どころの座をキープしている。
※記事の内容は2023年8月時点の情報で制作しています。