スバルの「アイサイト」で一躍メジャーとなった自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)。日本では2021年11月から国産の新型車への装着が義務付けられるなど、その注目度はますます高まっています。いまや必須の安全装備となった自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)について詳しく解説しましょう。
2021年11月から新型車に自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)義務付け
車載のカメラやレーダーなどによってクルマや歩行者との衝突が予測される場合、ブレーキが作動する自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が、新型車の場合は2021年11月(輸入車は2024年7月)から、継続生産車の場合は2025年12月(輸入車は2026年7月)から義務付けられることになりました。
スバルの「アイサイト」は追突事故発生率84%減少
先進安全装備のなかでも最も注目度の高い自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)ですが、そのトレンドの源流となったのが2010年に第二世代の「EyeSight(アイサイト)」を搭載したスバルレガシィです。国産車として初めて完全停止する衝突被害軽減用自動ブレーキの国土交通省認可を受けました(第一号は前年のボルボXC-60)。
「アイサイト」は「ぶつからないクルマ?」というキャッチーなCMと、約10万円という、それまでの衝突被害軽減ブレーキに比べ大幅に安くなった価格のおかげで大ヒットとなりました。実際、この装置の効果は非常に高く、スバルの調査によれば第二世代以降のアイサイトで追突事故発生率は84%減少、歩行者事故発生率は49%減少したとされています。
新車の大半に装着されているが
アイサイトの成功で他社も続々と自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の採用に乗り出し、現在販売されている新車のほとんどに自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が用意され、その装着率も9割近くとなりました。
ここまで自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)と長ったらしい表記をしているのには理由があります。この装置は100%衝突を回避できるものではなく、衝突前に自動でブレーキが作動することで「被害を軽減」するものだからです。つまり条件によってはぶつかることもある、でもノーブレーキで突っ込むよりははるかにマシ、というモノだということを念頭に置いておきましょう。
最新タイプは「ステレオカメラ」と「単眼カメラ+ミリ波レーダー」
各社が採用を進めている自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)にはいくつかの種類があります。スバルやダイハツ、一部のスズキ車が採用している「ステレオカメラ」、スバルとダイハツ以外のメーカー最新モデルに搭載されつつある「単眼カメラ+ミリ波レーダー」、そして少し古いタイプの「単眼カメラ+赤外線レーザー」「単眼カメラのみ」、さらにかなり古いタイプの「ミリ波レーダーのみ」「赤外線レーザーのみ」などです。
現在、最新タイプは「ステレオカメラ」と「単眼カメラ+ミリ波レーダー」です。最新タイプは自動車だけでなく歩行者や二輪車・自転車など対象物が増え、昼間だけでなく夜間の作動精度もアップしてきています。
同じメーカーのものでも車種によって違いが
各社とも自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を含む先進安全装備に「アイサイト」のように「トヨタセーフティセンス」や「ホンダセンシング」「スマートアシスト」などの名前を付けていますが、同じ名前が付いていても、その機能や性能には車種によって差があることには注意が必要です。
見分けるには前述のように装置が「単眼カメラ+ミリ波レーダー」なのか「単眼カメラ+赤外線レーザー」なのかを調べなければなりません。
さらに同じメーカーの同じ「単眼カメラ+ミリ波レーダー」でも性能に差があるので少々やっかいです。
最新かどうかを見極めるポイントは作動条件
これを見分けるには以下の作動条件に注目してみると良いでしょう。
・対象物は自動車、二輪車・自転車、歩行者のどこまで対応しているか
・夜間も作動条件に含まれているか
・作動速度域は何キロまでか(最新のものは上限が最高速度まで対応)
・対象物との速度差が何キロか(最新のものは自動車が50km/h、歩行者が40km/h前後)
作動プロセスもメーカーによって異なる
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を作動させた経験のある方はまだ多くないと思いますが、実は作動プロセスがメーカーによって異なります。
衝突の危険を察知すると、まず音とディスプレー表示で警告するまでは各社同じ(三菱やスズキは車種によって異なる)。そのあとのプロセスが3通りに分かれます。
・トヨタとマツダはその段階でブレーキを踏むと強力なブレーキアシストが行われ、さらに衝突の恐れが高まると強い二次ブレーキを作動させる
・ホンダや日産は弱めの一次ブレーキ(事前ブレーキ)が作動し、さらに衝突の恐れが高まると強い二次ブレーキを作動させる
・スバルとダイハツは事前ブレーキとブレーキアシストの両方とも作動させ、さらに衝突の恐れが高まると強い二次ブレーキを作動させる
ちなみにブレーキアシストはブレーキペダルを通常以上に利くようにする装置です。多くのドライバーにとって、ブレーキを思い切り踏み込むことが難しいという調査結果もあります。とはいえ二次ブレーキが作動するまでドライバーが気付かない可能性もあるわけで、事前ブレーキで減速していれば防げる事故もあるでしょう。そう考えるとスバルやダイハツのようにどちらも作動させる、という制御が最も安心ではないでしょうか。
公的機関でのテスト結果が年2回公表されている
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の性能については、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)による自動車アセスメント「JNCAP」のテスト項目に含まれており、年2回その結果が公表されています。動画コンテンツなども用意され、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)以外も各社の人気車種のさまざまなテスト結果を見ることができます。気になる車種がある方はぜひのぞいてみてください。
日進月歩の自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)
急速に普及が進んだ自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)ですが、まだメーカーや車種によって性能差が大きいのは事実です。ユーザーの安全装備への意識の高まりを受け、各社ともフルモデルチェンジを待たず、マイナーチェンジや年次改良のタイミングで自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)のアップデートを図っているので、購入を検討している方は最新の情報のチェックをおすすめします。
※記事の内容は2020年2月時点の情報で制作しています。