2013年12月に登場し、日本市場で約42万台を販売したホンダヴェゼル。2013〜2015年に続いて、2019年(暦年)でもSUV新車販売台数No.1に輝き、コンパクトSUVのロングセラーモデルとして存在感を示しました。ヴェゼルのベース車であるフィットがこの2月にフルモデルチェンジを行うことを考えると、ヴェゼルも年末から2021年前半には次期型に移行する可能性が高くなっています。クルマとしては完成の域に達したヴェゼルですが、2019年11月に新たなモデルが追加されました。それが今回試乗レポートをお届けする「ヴェゼルモデューロX」です。
正規ディーラーで買えるカスタムカーがモデューロX
ヴェゼルモデューロXは2019年1月に開催された東京オートサロンに参考出品されたモデルです。ホンダの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスが開発した専用のカスタマイズパーツを工場のラインで装着し、ホンダのディーラーが販売するコンプリートカーです。モデューロXは現行型ステップワゴンを皮切りに、フリード、S660、そして今回のヴェゼルで第4弾となります。
設定はターボ車とハイブリッド、ハイブリッドには4WDも
コンパクトSUVのヴェゼルは2013年に登場して以降、マイナーチェンジや仕様変更を重ねるなかでグレードが複雑化しています。2016年2月には1.5Lガソリンエンジンとハイブリッド車にRSという走りに磨きを掛けたモデルが、直近では2019年1月に1.5Lターボエンジンを搭載したツーリングが設定されました。これらのモデルはいずれも2WD(FF車)に設定されています。
今回のヴェゼルモデューロXは1.5Lターボエンジンを搭載したヴェゼルツーリングモデューロXと、ハイブリッド車のヴェゼルハイブリッドモデューロXの2種類が用意され、ハイブリッド車にはモデューロX初の4WD車をラインナップ、ヴェゼルの頂点といえるモデルとなりました。今回試乗したのは、そのヴェゼルハイブリッドモデューロX 4WD車です。
専用パーツで精悍になった外観
ヴェゼルハイブリッドモデューロXには、空力性能を高めて高速走行時の安定性に寄与するフロントグリルをはじめ、LEDフォグランプ、フロント&リアエアロバンパー、フロント&リアエアロロアガーニッシュなど多数の専用外装パーツが追加され、フロントマスクは特に精悍な印象となりました。
足回りにも専用パーツがもりだくさん。ドリキンこと土屋圭市氏がアドバイザーとして乗り味を決めた専用サスペンションに加えて、専用デザインの17インチ(4WD車。FF車は18インチ)のアルミホイールが装着されています。
内装もふんだんに専用パーツが
インテリアも黒で統一されたシックな専用のもの。シートヒーター機能の付いたフロントスポーツシートやリアシート、そしてフロアカーペットもエンブレム付きとなるなど多数の専用パーツが奢られています。
ドリキンが後席にも乗ってチューニングしたおかげで…
ヴェゼルハイブリッドモデューロXに乗って、すぐに感じるのはボディ剛性が強化されていることです。後でホンダアクセスの関係者に確認したところ、いわゆるボディ補強は行っておらず、ボディとサスペンションをつなぐブッシュと呼ばれるゴム製のパーツなどを変更しているだけとのこと。それだけで段差を乗り越えた時の衝撃の吸収が素早くなることには正直驚きました。
これまで販売されているモデューロXに共通する美点は、そのフラットな乗り味です。ただたんにドライバーが楽しく操れることを目指したサスペンションの設定だと、リアシートに乗っている人にとっては硬くて不快に感じることが多いものです。しかし、モデューロXはアドバイザーである土屋圭市氏がリアシートにも座ってセッティングを行いました。そのおかげでドライバーは楽しくクルマを操ることができ、乗員は快適に移動が楽しめるという絶妙な味付けがなされているのです。
圧巻のフラットライド、高い安定性
この点についてはステップワゴン、フリードとこれまでファミリーカーを中心にモデューロXを展開してきたことがプラスに働いています。SUVなので最低地上高が高く、やや腰高なヴェゼルですが、装着された専用サスペンションによって重心が下がった感じすらします。さらに、圧巻なのは、やはりフラットな乗り味です。カーブにおいてもクルマの傾きを最小限に抑えてくれることに加え、高速道路のつなぎ目などの段差の衝撃も早く収まるので、非常に高い安定感を誇ります。
ノーマル車よりも速く走ることが可能なのは、この安定感のある足回りのおかげで早いタイミングからアクセルペダルを踏めるからです。試乗車はヨコハマのスポーティブランドであるアドバンというハイグリップタイヤを装着していました。この高性能なタイヤにしっかりと荷重をかけて、その能力を遺憾なく発揮させることでスムーズなコーナリングを実現しているのです。
スポーツモードのリズムがよく似合う
そんなヴェゼルハイブリッドモデューロXの高いシャシー性能に合わせるために、今回走行モードはほとんどスポーツモードで走行しました。このモードにすると、エンジンをより高回転まで回してくれて、メリハリのある走りが可能となります。安定感とフラット感が向上したサスペンションセッティングにピッタリです。それでも街乗りでリッター15kmを少々下回るくらいの燃費性能は発揮しますので、まったく不満はありません。
価格に見合う価値は十分ある
ヴェゼルモデューロXの車両本体価格は346万7200円〜361万7900円と標準車と比べるとかなり高くなっています。しかし、専用部品による欧州車のようなシットリとした味付けの乗り味は、国産コンパクトSUVの中で秀逸の出来栄えです。しかも手放す時でもこのモデューロXならばその希少性から標準車よりも断然高い買い取り額が見込めます。
まさに満を持して投入されたヴェゼルモデューロX。4WD車も設定されているので、降雪地のユーザーにも朗報と言えるでしょう。
※記事の内容は2020年2月時点の情報で制作しています。