人気のミニバンの中でもミドルサイズのミニバンは特に人気の高いジャンルです。トヨタノア/ヴォクシー、日産セレナ、ホンダステップワゴンと各社入魂の実力車が揃う激戦マーケットで、いま人気上昇中のモデルがハイブリッドモデルのe-POWERを追加したセレナです。その実力を試すべく東京と滋賀県の近江八幡の往復1100kmのロングドライブに連れ出しました。萩原文博さんのレポートです。
激戦区のミドルサイズミニバンで大躍進中のセレナ
一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表した2023年6月の登録車の新車販売台数ベスト10を見ると、トヨタが7車種、日産が2車種、ホンダが1車種とトヨタが圧倒的な強さを誇っています。一方、ボディタイプで見ると5位に1万31台のトヨタノア、6位には8,739台でトヨタヴォクシー、9位にも7,898台で日産セレナといったミドルクラスミニバンが入っています。また、3位には1万1909台のトヨタシエンタ、10位にも7,248台のホンダフリードといったコンパクトミニバンがランクインしており、相変わらずミニバンがベスト10の半数を占めていて、その人気が衰えていないことがわかります。
シエンタ、フリードの2車種で独占しているコンパクトミニバンと6月にフルモデルチェンジしたアルファード/ヴェルファイアが圧倒的なシェアを占めているラージサイズミニバンとは異なり、ミドルサイズミニバンは、2022年にノア/ヴォクシー、ステップワゴン、そしてセレナと立て続けにフルモデルチェンジを行い、トップシェアのノア/ヴォクシーにセレナが肉薄している状況です。これはセレナで本命と言えるe-POWER車のデリバリーが開始されたことが大きく影響しています。そこで、今回はセレナが大躍進を果たす要因となったセレナe-POWERハイウェイスターVで約1,000kmのロングドライブを敢行し、その実力を測ってみました。
セレナはライバルよりも納車時期が早い
インプレッションの前に、最も皆さんが気になる納車時期に関して触れておきます。ノア/ヴォクシーはどちらも注文してから6カ月以上で、ハイブリッド車は1年以上となっています。ステップワゴンはガソリン車が1年以上、ハイブリッド車は半年以上と納車は長期化しています。一方今回試乗したセレナはガソリン車が1~2カ月、e-POWER車でも3~6カ月とライバルより納車時期が早いのが特徴となっています。
待望のe-POWERは4月の段階で2万台を超える受注
6代目となる現行型日産セレナは2022年11月にフルモデルチェンジを実施し、同年12月にガソリン2WD車を販売開始。そして2023年4月にe-POWER車を販売開始しています。e-POWER車は販売開始のタイミングで受注台数が2万台を突破しており、現行型セレナの主力グレードと言えるでしょう。ノア/ヴォクシー、ステップワゴンは全車3ナンバーサイズとなりましたが、セレナは従来同様、グレードによって5ナンバーと3ナンバーの2種類のボディを用意しています。
ボディサイズはXとXV(ガソリン車、e-POWER車)グレードは全長4,690mm×全幅1,695mm×全高1,870mmの5ナンバーサイズ。そしてハイウェイスターV、LUXION(以下ルキシオン)は全長4,765mm×全幅1,715mm×全高1,870(ルキシオンは1,885mm)の3ナンバーサイズとなります。乗車定員は8人乗りを中心にルキシオンだけが7人乗りとなっています。
e-POWERのカタログ燃費は18.4~20.6km/L、最上級グレードにはハンズフリーOKのプロパイロット2.0も
現行型セレナに搭載されているパワートレインは、最高出力150ps、最大トルク200Nmを発生する2L直列4気筒DOHCエンジン+CVT。そして最高出力98ps、最大トルク123Nmを発生する1.4L直列3気筒DOHCエンジンで発電し、最高出力163ps、最大トルク315Nmを発生するモーターで走行する新開発のe-POWERの2種類です。駆動方式は2WD(FF)中心に2Lガソリン車のみ4WDを用意しています。燃費性能はWLTCモードで2Lガソリン車は11.6~13.4km/L。e-POWER車は18.4~20.6km/Lを実現しています。
運転支援システムは、全グレードに「プロパイロット」を標準装備。さらに最上級グレードのe-POWERルキシオンには、高速道路などでハンズフリーが可能な「プロパイロット2.0」を標準装備しています。また、前方障害物を回避する際、ドライバーのステアリング操作を支援する「衝突回避ステアリングアシスト」や一度駐車した場所を駐車枠として記録するころができる、メモリー機能付き「プロパイロットパーキング」を日産車として初搭載しました。e-POWERルキシオンには、リモコン操作でクルマお台仕入が可能となる「プロパイロットリモートパーキング」を搭載し、狭い場所での乗り降りなどがスムーズに行えるのが特徴です。
現行型セレナの車両本体価格は276万8700円~479万8200円とかなり幅が広くなっていています。
オプション込み470万円の豪華仕様!
今回試乗したのは、セレナe-POWER ハイウェイスター8人乗り。車両本体価格は368万6100円です。発売以来、すでに5万台以上を受注しているセレナですが、e-POWER車の比率は直近では6割以上。ボディカラーはモノトーンではプリズムホワイト、2トーンではプリズムホワイト/スーパーブラックが人気ということで、今回の試乗車はまさに現行型セレナの最も人気の高い仕様です。
オプション装備として、100V AC電源(1500w)5万5000円をはじめ、7万7000円の2トーンカラー。9万9000円のステアリングヒーターやシートヒーターなどがセットとなったホットプラスパッケージ、そしてアダプティブLEDシステム+インテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェントルームミラー+アドバンスドドライブアシストディスプレイ+ニッサンコネクトナビゲーションシステム+プロパイロット(ナビリンク)+プロパイロット緊急停止支援システムなどのセットオプション55万1100円の合計78万2100円を装着し諸費用を含めた乗り出し価格は約470万円という豪華仕様です。
高速でのナビリンク機能付プロパイロットは非常にスムーズ、ただしブレーキは早め
今回のロングドライブは滋賀県の近江八幡まで1泊2日で行いました。往路はあいにくの雨となり、静岡県の新東名高速は速度規制が行われるほどの荒天となりました。安全性を考慮し、新東名高速を走行するのを諦めて、清水JCTで東名高速を利用して滋賀県に向かいました。不思議なことに同じ静岡県でも海に近い東名高速は雨がほとんど降っておらず、早速全車に標準装備となったプロパイロットのテストを行いました。
最上級グレードのe-POWERルキシオンには、ハンズフリー走行も可能なプロパイロット2.0が標準装備されますが、試乗車のe-POWERハイウェイスターVはプロパイロットを標準装備。さらにニッサンコネクトナビゲーションシステムと連動し、予めカーブやジャンクションを把握し、スムーズに曲がれるように車速をコントロールするナビリンク機能付プロパイロットを搭載しています。新東名に比べて、アップダウンだけでなく、カーブの多い東名高速ですが、ナビリンク機能付プロパイロットを採用したe-POWERハイウェイスターVは、非常にスムーズな走行を行います。
先行車との距離が縮まった際には、早めにブレーキを掛けるのがセレナのプロパイロットの特徴です。これはセカンドシートにお子さんが乗ることが多いファミリーカーであり、車高が高いミニバンだからこその配慮。軽くブレーキを掛け始めることで、クルマの前後の揺れを極力抑えようという開発者の意図が伝わってきます。個人的にはずいぶん早くブレーキを掛けるなと感じましたが、お子さんを乗せる機会の多いミニバンであることを考えると高いホスピタリティだと頷けます。
e-POWER車専用の足回りで滑らかな乗り心地
現行型セレナは、ボディの骨格となるプラットフォームは旧型からのキャリーオーバーですが、e-POWER車に採用された高剛性サスペンションが車体の動きを滑らかにしています。加えて新開発のシートによって車体の揺れの伝達を抑えて、クルマ酔いにつながる頭の急な揺れを抑制してくれます。フロントシートだけでなく、セカンドシートさらにサードシートに座って移動しましたが、ややサードシートは滑りやすい感じがありましたが、前後にスライドするのでスペース的には十分。セカンドシートは床面からの振動も少なく、快適に移動できます。
ドライバーシートは、非常に見晴らしの良い視界が確保されています。ややアップライトのシートポジションとなっていることで、上から見下ろすような感覚で、非常に快適です。ボタン操作で行うシフトチェンジも最初は戸惑うこともありましたが、すぐに馴れました。前回ロングドライブを行ったステップワゴンと比べると車幅がないためぱっと見は不安定に感じますが、高剛性ステアリングの採用やふらつきを抑える車体構造を採用することで走行安定性を高めています。
新東名の120km/h巡航でも燃費悪化は少ない
現行型セレナe-POWERハイウェイスターVの最大の特徴は新開発の1.4Lエンジンを採用したe-POWERです。車両重量の重いセレナe-POWERハイウェイスターVをスムーズに加速させるだけでなく、高い静粛性や振動も抑えているのが魅力です。エネルギーインジケーターを見ていてもいつエンジンが掛かったのかがわからないほどでした。また、燃費性能も雨の中東名高速を走行した往路が15.2km/L。晴天の中新東名高速を走行した復路が17.8km/L。約1,000km走行した結果15.8km/Lでした。新東名高速の浜松~御殿場間ではプロパイロットを使用し120km/h走行していますが、燃費の悪化はほとんど見られませんでした。このあたりは、ライバル車と比べるとセレナが有利と言えるかもしれません。
その実力はベストセラーモデルのノア/ヴォクシーに肉薄
近江八幡では地元の牧場が経営する焼肉屋カメチクで、リーズナブルな価格で近江亀井牛を食べ、翌朝は当時の近江商人の街並みが残る場所で記念写真を撮影し、クルマの歴史が見学できるトヨタ博物館に立ち寄りました。
e-POWERハイウェイスターVの高い静粛性と無駄な動きの少なさ。そしてドライバーの負担を軽減する最新の運転支援システムはファミリーカーに求められる全ての要素が備わっており、その実力はベストセラーモデルのノア/ヴォクシーに肉薄しています。さらに、ノア/ヴォクシーに比べてセレナの納期が短いこともセレナの魅力の一つと言えるでしょう。
※記事の内容は2023年7月時点の情報で制作しています。