2017年12月より販売開始したマツダCX-8は国内市場におけるマツダのフラッグシップモデルです。そしてミニバンを車種ラインナップにもたないマツダの中で3列シートを設定している唯一のモデル。3列シートSUVのCX-8は、走りに不満をもつミニバンユーザーを獲得に成功し、2018年、2019年の国内3列シートSUV販売台数No.1に輝くなど3列シートSUVブームのパイオニアとなりました。販売開始から5年が経過したCX-8は2022年11月に大幅改良を実施、その改良モデルの試乗インプレッションを萩原文博さんが紹介します。
内外装の変更、走りの進化、新グレードの追加
2017年12月に販売開始したCX-8ですが、現在マツダのSUVの中では、コンパクトSUVのCX-3に続く長いライフのモデルです。しかし毎年のように改良が加えられて進化、熟成が進んでいます。2022年11月に実施された大幅改良は、内外装のデザイン変更をはじめ、新世代商品で開発した技術の採用によるダイナミクス性能の進化や利便性と安全性の向上。そして、ユーザーの選択肢の幅を拡げる特別仕様車やグレードの追加という3点がポイントとなっています。
フロントとリアにマツダの最新デザインを取り入れた
まず内外装の変更から紹介します。外観では、SUVらしい力強さと都会的でエレガントな美しさを融合するために、フロント&リアバンパー、フロントグリル、前後ランプをマツダ最新のデザインに変更しています。
フロントグリルは、シャープでモダンなブロックメッシュパターンを採用。バンパーと連続した造り込みにより、フラッグシップSUVにふさわしい力強さと上質さを表現しています。リアはバンパーとランプのコーナーをより広げて、水平なキャラクターとの相乗効果で、ワイドな全幅を活かした重厚感と安定感を強化しました。さらに最新のランプシグネチャーとソリッドなメッキシグネチャーと合わせて、CX-8のプロポーションを活かしきるスタンスへと進化しています。
インテリアでは、利便性の向上を目指して、Apple CarPlayにワイヤレス接続機能を追加するとともにUSB タイプC端子を採用しています。
サスペンションやシートの改良で乗り心地はさらに向上
続いては、ダイナミクス性能の進化と安全性の向上です。大幅改良されたCX-8はスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャの考え方の適用に加えて、CX-60から始まる新世代ラージ商品群で導入された技術を採用してダイナミックス性能を進化させています。
走行安定性や乗り心地を左右するサスペンションは、スプリング・ダンパー特性の見直しにより、段差やうねりのある路面などで、すべての乗員の揺れが軽減され、疲れ・クルマ酔いを低減。狙ったラインを思いどおりに走行できるようにコントロール性を向上させています。さらに、フロントシートは骨盤を立たせて着座姿勢を安定させるよう、シートクッションやバネを改良し、コーナリング中などでの乗員状態の安定性を向上させています。
また、マツダらしい人馬一体感を高める「マツダ・インテリジェント・ドライブ・セレクト略称Mi-DRIVE)」には、ノーマル、スポーツに加えて一部グレードにオフロードモードを設定。2.5L直列4気筒ガソリンターボエンジンは、豊富な低速トルクを微細にコントロールできるように、アクセルペダルの操作力を最適化。さらに、素早いアクセル操作に対して、ドライバーの求める加速力を瞬時に発揮できるように、AT変速タイミングとロックアップ制御を変更し、よりダイナミックな走りが楽しめるようになっています。
安全装備では、アダプティブ・LED・ヘッドライトを進化させています。グレアフリー(防眩)ハイビームLEDを12分割から20分割として、夜間の視認性を向上。ドライバーの危険認知能力を高めています。また、クルージング&トラフィック・サポート機能を採用し、追従走行機能とステアリングアシスト機能により、高速道路などでの渋滞時の運転による疲労軽減をサポートしてくれます。
アウトドア、スポーツに特化した特別仕様車&新グレード
3つ目のポイントが特別仕様車や新グレードの設定です。特別仕様車として、スマートエディションをベースとしたアウトドアテイストを強めた「グランドジャーニー」を追加しました。専用の外観を採用し、Mi-DRIVEにオフロードモードを設定しています。2.5L自然吸気と2.2Lディーゼルターボの2種類のエンジンを用意し、駆動方式は4WDのみとなっています。
そして全身をブラック加飾でコーディネイトし、成熟した大人のスポーツマインドを刺激しつつ、上質さを表現した新グレードが「スポーツアピアランス」です。こちらも、2.5L自然吸気と2.2Lディーゼルターボ2つのエンジンに設定され、駆動方式は2WD、4WDが選べます。
最上級グレードのエクスクルーシブモードも進化しました。ホイールアーチやボディロアガーニッシュまでボディカラーと同一でコーディネイトされ、専用のガンメタリックフロントグリルを採用。
インテリアはキルティングを施されたピュアホワイト、もしくはブラックのナッパレザーを使用するなど上質さに満ちたラグジュアリーなグレードです。エクスクルーシブモードは2.5L自然吸気と2.2Lディーゼルターボでは6人乗りと7人乗りが選べ、2.5Lターボは6人乗りのみとなります。駆動方式は全モデルで2WDと4WDが選べます。
CX-60にも並び負けしない存在感
今回試乗したのは、CX-60から導入された匠塗の第3弾「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」を纏ったXD エクスクルーシブモードの2WD 6人乗り車。車両本体価格は487万7,400円で、オプション装備として8万8,000円の電動スライドガラスサンルーフ(チルトアップ機構付)を装着し、合計496万5,400円という仕様です。
CX-8のボディサイズは、全長4,925mm×全幅1,845mm×全高1,730mm。撮影場所にCX-60が置いてありましたが、ロジウムホワイトプレミアムメタリックのボディカラーの効果もあって、圧倒的な存在感を誇っています。フロントバンパーやヘッドライトそしてグリルが変更されたCX-8のフロントマスクはよりシャープな印象を受けます。一方のリアスタイルは、安定感が強化されました。最上級グレードのエクスクルーシブモードは上質なナッパレザーを採用。セカンドシートも左右が独立したキャプテンシートとなっており、豪華な仕様となっています。
ファミリーカーに求められる乗り心地の良さを実現
マツダは国産メーカーの中で、SUVに力を注いでいるメーカーです。最近はFRレイアウトを採用したラージ商品群のCX-60が話題となっていますが、今回大幅改良を行ったCX-8は、乗り味が明確に分けられています。そしてCX-8は今回の大幅改良によって、さらにファミリーカーに求められる乗り心地の良さを実現しているのが大きなポイントといえるでしょう。
スプリングやダンパー特性を見直したサスペンションは、マツダらしい人馬一体感を維持しながらとにかく前後、左右の揺れを抑えているのが特徴です。CX-5やCX-60は揺れが少ないものの、やや硬めのスポーティーなセッティングとなっています。CX-8は2,930mmというロングホイールベースを活かした、おおらかな乗り味が特徴です。
このおおらかな乗り味がセカンドシートに乗るお子さんをはじめとした乗員に安心感を与えて、クルマ酔いを抑えることができると思います。また、3列シートSUVのCX-8はセカンドシートがリクライニングする角度が大きいというメリットもあります。
ハンドル操作に対してクルマの挙動が非常におおらか
ファミリーカーとしての進化を感じたのがハンドル操作です。CX-5やCX-60はドライバーのハンドル操作に対して、すぐに反応するのですが、CX-8はハンドル操作に対してクルマの挙動が非常におおらかです。やや反応が鈍いかなとも思いますが、5m近い大きなボディであることやお子さんを乗せる機会の多いファミリーカーであることを考えると、このおおらかなステアリングフィールは正解といえるでしょう。
同じクルマとは思えないほど全方位に進化
安定感の向上したサスペンションに加えて、渋滞時の運転疲労を軽減するクルージング&トラフィック・サポートの採用によってロングドライブもラクラクこなすことができます。そうなるとWLTCモード15.8km/Lという低燃費を誇る2.2L直列4気筒ディーゼルエンジンの太いトルクは、大きなメリットとなるはずです。
熟成が進み、ユーザーの多様なリクエストに応えられるようにグレードを充実させたファミリーカーのCX-8。初期型のCX-8から乗り換えると、同じクルマとは思えないほど全方位に進化していることがわかると思います。
※記事の内容は2023年2月時点の情報で制作しています。