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S660と並んで貴重な軽自動車のオープンスポーツ、ダイハツコペンにGR SPORTが加わった。GRがレースで培ったノウハウが投入されたコペンGR SPORTは、事前のイメージとは違う上質な乗り味をもっていた。岡崎五朗さんの試乗レポートをお届けしよう。
トヨタとダイハツの両方で買える
コペンにGRバージョンが加わった。モデルラインナップの拡充を図りたいGRと、販路拡大&開発ノウハウが欲しいダイハツの利害が一致した結果のコラボである。従来のコペンは引き続きダイハツの販売店で扱うが、GRコペンはダイハツだけでなくトヨタの販売店でも入手可能だ。
GRはいずれレクサスのような独立したブランドを目指す
話を進める前に、まずはGRについて解説しておく必要があるだろう。GRとはトヨタのモータースポーツ部門であるガズーレシングの略。レース活動に加え、チューニングカーやスポーツカー開発も手掛ける。
その存在感と規模は外から見ているよりはるかに大きく、トヨタ社内の1部署というよりは、独立したブランドに近い。レクサスがみずからのエンジニアやマーケティング部門、PR部門をもっているのと同じで、GRにも各種機能が備わり、将来的にはモータースポーツ参戦費用をスポーツカーやチューニングカーによる収益で賄う計画だという。
ちなみにスープラの正式名は「トヨタGRスープラ」。トヨタのGRが手掛けたモデルという意味であり、今後トヨタからスポーツモデルが登場する際は、GRのネーミングがつくことになる。
意外なことにノーマルのコペンよりも上質感がある
ご存じのように、GRにはルマン24時間レースやWRCといった世界最高峰のモータースポーツを通して培った有形無形のノウハウが蓄積されている。それをコペンに注入するとどうなるか? 意外なことに、コペンGRスポーツの足回りはしなやかだ。フワフワとしたソフトタッチではないけれど、ガチガチに固めた硬派なスポーツタッチでもない。
路面の凹凸に対し足をしなやかに追従させつつも余分な揺れはスッと収める…そんなイメージの乗り味だ。言い換えれば、ノーマルのコペンより上質感がある。
ニュルブルクリンクからのフィードバック
このあたりが、スープラや86GRスポーツといった他のモデルにも共通する「GR味」だ。平坦なサーキットであれば足は固めた方がタイムを出しやすいが、そういう足はさまざまな路面が混在する一般道ではタイヤが跳ねて接地性が悪くなるし、コントロールもしにくくなる。足はしなやかに動かしつつ、ボディの余計な動きはスッと収束させる。
これが、ニュルブルクリンク24時間レースへの参戦などを通して彼らが得た足回り作りのノウハウだという。
強靭なボディ剛性が生むしなやかな足
ではどうやって足をしなやかに動かすか。実はここがキモで、ダンパーの特性をいくら調整したところでボディがしっかりしていないと足はきれいに動かない。
そこでコペンGRスポーツは下回りに補強を加えた。走りだした瞬間から体感できる上質感、荒れた路面での優れた接地感、ガッチリ感、コーナーでの粘り強さなどは、強靱なボディ剛性によるところが大きい。
エンジンに手を加えなかった理由
一方、エンジンには手を入れていない。軽自動車の自主規制値である64psを守りつつ性能を上げるには低中速トルクのアップしかないが、それをすると相対的に高回転域での伸び感が鈍り、上まで回したときのおもしろ味に欠ける特性になってしまう。そういう意味で、あえて手を加えなかったのは正解だと思う。
多用途なコペンにさらに加わった魅力
ライバルはミッドシップを採用するホンダS660だが、FFならではのスペース効率を活かし、実用的なラゲッジスペースを備えているのがコペンの特徴。たくさん買い物しても積み込めるし、カップルでの一泊旅行にも対応してくれる。そんな多用途性に加え、走りに磨きをかけたGRスポーツの登場によって、コペンの魅力はさらに高まった。
※記事の内容は2019年12月時点の情報で制作しています。