ページトップへ戻る
キーワードから記事を探す
車種から記事を探す

パワーがある?低燃費?「ターボ車」ってナニ?

パワーがある?低燃費?「ターボ車」ってナニ?
パワーがある?低燃費?「ターボ車」ってナニ?

ターボはパワーの源なのか?燃費改善のためのものなのか?

車の記事によく登場する単語で、一般の方にもなじみ深いものの一つが「ターボ」かもしれません。なんとなくパワーがある車に付いている装置、というイメージの方も多いと思いますが、おおむねそれで合っています。しかし最近は低燃費をうたうダウンサイジングターボなるものも現れ、「パワーアップ」のためなのか、「燃費改善」のためなのか、少々わかりにくくなってきています。今回はそんなターボについて詳しく解説をしてみましょう。

タービンがターボの語源

タービンがターボの語源

正式にはターボチャージャーという名前を持つターボですが、ターボは英語のタービンに語源があり、チャージャーは日本語に直すと過給器となります。さらっと書きましたがみなさんはタービンや過給器ってわかりますかね?

タービンは風とか水とかの流れを羽根などで受けて回転エネルギーに変えるものの総称です。だから水車や風車もタービンの一種です。車に使われているターボの場合は排気ガスの流れで羽根を回すので排気タービンとも呼ばれます。排気によって回された軸の反対側にも羽根が付いていて、その羽根がコンプレッサー(圧縮機)となりエンジンに空気を通常以上に送り込みます。コンプレッサーから先はチャージャー、すなわち過給器の話になるのですが、大丈夫ですか、みなさん、ついてきていますか?(笑)

エンジンにたくさん空気を送り込みパワーを高める

エンジンは燃焼室で燃料と空気の混合気を燃焼させることでパワーを発生させますが、ターボなどの過給器は空気を圧縮することでより多くの空気、つまり酸素を燃焼室に送り込むことを目的にした装置です。より多くの酸素があれば燃焼力が高まり、エンジンパワーも高まるのです。

ターボの付いていない普通のエンジンのことを自然吸気(NA:ノーマルもしくはナチュラルアスピレーション)エンジンと呼びますが、これはターボなどの過給器付きエンジンが「自然に吸気する」以上の空気を送り込んでいるので、対比的にそう呼んでいるのです。

航空機用から自動車用へ

航空機用から自動車用へ

1979年東京モーターショー、熱気あふれるセドリックターボの展示(写真:日産)

ターボチャージャーの歴史を語るうえで外せないのが第二次世界大戦時の航空機用レシプロエンジンです。たぶんみなさんも知っていると思いますが高度が上がるほど空気は薄くなります。高い山に登ると息が切れたり、ポテチの袋がパンパンになったりするアレです。空気の薄い1万メートル上空を飛ぶ航空機にとって過給器の有無によるパワーの差は大きく、ターボの開発の遅れが日本の敗戦の遠因の一つに数えられることもあります。ちなみに日本で一番高いところにある道路、標高約3000m弱の乗鞍スカイラインは戦時中にターボチャージャーの実験のために作られた道路です(現在はマイカー規制が行われており、バスでしか訪れることはできません)。

航空機用から自動車用へ2

フルラインターボで一世を風靡した三菱。写真の1981年ランサーEXのフロントエアダムスカートには逆さ文字のTURBOステッカー。先行車のルームミラーから見たときにTURBO(=速いぞ!)と認識させる穏やかな煽り運転(?)のためのもの(写真:三菱)

話を元に戻すと、当初は航空機や船舶に普及したターボを最初に導入した市販車は1973年のBMW2002、現在の3シリーズのご先祖様です。国産車でも1979年の日産セドリック/グロリアを皮切りにターボは一気に広まりました。三菱は日産に続く早いタイミングでターボ車を次々と投入、軽自動車から高級車までターボ車を用意することで、「フルラインターボ」をアピールしたものです。

排気量が少なくてもパワーを出せる

ターボが普及した理由は、石油ショックや排気ガス規制の影響から立ち直り、自動車にパワーを求める声が高まっていたことに加えて、日本の場合は当時の自動車税制の影響が大きかったこともあります。そのころ排気量2L以上は贅沢品として扱われ、非常に高い税金が課せられていました。それゆえ国産車の排気量はクラウンやセドリックなどの高級車を除いて上限が2Lだったのです。

エンジンパワーを上げるにはいくつか方法がありますが、手っ取り早いのは排気量アップとそれに伴う多気筒化(6気筒や8気筒など)です。4Lや5LのV8エンジンを搭載していたアメ車などがその典型ですね。排気量アップが使えない日本では、2L4気筒エンジンを当時の高級エンジンだった2.8L6気筒エンジン並みにパワーアップできるターボが歓迎されたのです。

当時のターボは燃費とレスポンスに難があった

当時のターボは燃費とレスポンスに難があった1

1979年に登場したセドリックのL20ETエンジン。ヘッドカバーに光るTURBOの文字が誇らしげだ(写真:日産)

ターボチャージャー以外にも過給器にはスーパーチャージャーもあります。これは排気ガスではなくエンジンの回転を動力源とするので、低回転域からの過給が得意な反面、機械的なロスが発生します。ターボチャージャーのメリットは高温の排気ガスのエネルギーを再利用している点にあるとされていました。

初期のターボ車の加速はターボチャージャーの存在を感じさせる独特のものでした。アクセルを踏み込むと少し経ってからヒュイーンとタービン音が高まり、エンジン回転の上昇につれ2次曲線的にパワーが盛り上がる。そんなフィーリングが車好きたちを夢中にさせたものです。

当時のターボは燃費とレスポンスに難があった2

上の写真からわずか8年でずいぶん賑やかになった1987年日産セドリックのVG20DETエンジン。すでにターボはセラミックターボになり「TWIN CAM」(=DOHC)や「24バルブ」もアピールされているが、まだこの時代はターボが主役だった(写真:日産)

しかし、この時代のターボ車は実際のところパワーは出るのですが燃費が悪く、またターボラグと呼ばれるアクセルレスポンスの悪さなどのデメリットもあって、次第に「DOHC」「4バルブ」「可変バルブコントロール」など他のパワーアップ技術、燃焼効率化技術の進化に押され気味となっていきます。日本でも税制が2L以上の禁止税的な課税が500cc刻みの段階的なものに変わったため排気量にこだわる必要性が薄れました。そしてパワーよりも燃費を重視する時代の訪れがターボ衰退を後押ししたのです。

現代のダウンサイジングターボは技術の進化で実用性抜群

現代のダウンサイジングターボは技術の進化で実用性抜群1

ポルシェも2016年、718ボクスターに切り替わったタイミングで2.7&3.4L水平対向6気筒から2.0&2.5L水平対向4気筒ターボへと換装(写真:ポルシェ)

ところがターボは滅びることなく、現在も多くの車に採用されています。10年ちょっと前からターボは環境対策として、特に欧州メーカーで重視されています。自然吸気エンジンをより小さな排気量のターボエンジンに切り替える、ダウンサイジングターボ化と呼ばれる一連のこの流れは、ターボチャージャー自体の改良、電子制御の緻密化、直噴エンジンや多段ATの普及といった技術革新と合わせて語られるべきですが、そこまで話を掘り下げてしまうと寝てしまう人が出そうなので割愛します。

結果的に欧州車のエンジンは4L前後の自然吸気8気筒が3L前後の6気筒ターボになり、3L前後の自然吸気6気筒が2L前後の4気筒ターボに、2Lの自然吸気4気筒は1.6L程度の4気筒ターボに、1.6L自然吸気4気筒も1.2Lの3気筒ターボなどへと置き換えられました。この手のダウンサイジングターボエンジンは低回転からレスポンス良く過給効果を発揮し、6段から9段の多段ATを駆使して、比較的低い回転域でエンジンを回すことで燃費の改善を図っています。

現代のダウンサイジングターボは技術の進化で実用性抜群2

2019年10月に追加されたメルセデス・ベンツE200には従来の2Lダウンサイジングターボに代えて、さらに小排気量化された1.5Lターボ+48Vマイルドハイブリッドが搭載された(写真:メルセデス・ベンツ日本)

発進・停止が多く、速度域の比較的低い日本ではハイブリッドが燃費改善策の主力です。いっぽう速度域の比較的高い欧州では、ハイブリッドの開発に出遅れたこともあり、その速度域での実用燃費に優れたクリーンディーゼルやダウンサイジングターボが主流となりました。ただクリーンディーゼルが排ガス不正問題でイメージダウンしたこと、絶対的な燃費性能ではトヨタなどのフルハイブリッドには及ばないこと、そしてCO2排出量規制がきびしさを増すことなどの理由で、欧州ではSUVや高級車を中心にダウンサイジングターボと48V高電圧タイプのマイルドハイブリッドを組み合わせるものも出てきています。

現代のダウンサイジングターボは技術の進化で実用性抜群3

スバルのフォレスター(2016年モデル)用自然吸気2.0Lエンジンの性能曲線。最高出力は148ps、最大トルクは196Nmだが、トルクカーブ(上の赤い実線)が1500回転では150Nmちょっと、そこから196Nmを発揮する4000回転まで緩やかに上昇しているのがわかる。(資料:スバル)

現代のダウンサイジングターボは技術の進化で実用性抜群4

こちらは同じスバルのレヴォーグ用1.6Lダウンサイジングターボの性能曲線。最大出力は170ps、最大トルクは250Nmと自然吸気2.0Lを上回るうえに、1800回転から4800回転まで最大トルク250Nm(青い実線)を発揮している。(資料:スバル)

現代のダウンサイジングターボは技術の進化で実用性抜群5

参考までに同じレヴォーグの2.0Lターボ。こちらはパワー志向のターボエンジンで最大出力300ps、最大トルク400Nmと、自然吸気2.0Lと比べて2倍のパワーが出ている。(資料:スバル)

ダウンサイジングターボはハイブリッドへの対抗技術ではなく、あくまでも同程度のパワーを持つ自然吸気エンジンの環境性能改善のためのものという位置付けと考えるべきでしょう。

国産車でも増えつつあるダウンサイジングターボ

国産車でも増えつつあるダウンサイジングターボ1

国産車でも排気量に制限がある軽自動車ではターボの存在感は高く、多くの軽自動車にターボエンジンが設定されています。軽自動車のターボエンジンも一時期のようなスポーツタイプではなく、ダウンサイジングターボに近い実用性重視のものが今では多数派です。軽自動車以外にもトヨタC-HR、カローラスポーツ、RAV4、クラウン、レクサスNX、RX、ホンダステップワゴン、スバルレヴォーグ、マツダCX-5、CX-8などにはダウンサイジングターボと呼べるエンジンが設定されています。
国産車でも増えつつあるダウンサイジングターボ2

国産車でも増えつつあるダウンサイジングターボ3
日産GT-RやスバルWRX-STIのようにハイパワー型ターボも存在はしますが、現在では少数派となりました。ちなみにここまで基本的にガソリンエンジンとターボの話でしたが、ディーゼルエンジンとターボは構造的に非常に相性が良く、現在販売されているディーゼルエンジン車はほぼターボ付きです。

現代のターボのメリット、デメリット

現代のターボのメリット、デメリット

CX-5、CX-8、マツダ6に搭載されている2.5Lターボは4.0LのV8エンジン並みのトルクを誇る。最大出力回転数が4250回転/分と低いのも特徴的

改めて現代のターボの魅力、メリットをまとめるとエンジンの小型・軽量化、そして過給効果がもたらす低回転域からの力強さ、燃費の改善という点に集約できるかと思います。燃費の点ではフルハイブリッドに及ばないものの、低コストで高速域での燃費悪化が少ないこともメリットでしょう。

一方でデメリットも存在します。ターボチャージャーのタービンは非常に高回転で回っているため、エンジンオイルは良いものを短いサイクルで交換する必要があります。またターボのために追加される部品点数が多く、タービン本体はともかく、それら補機類の故障・交換リスクはノーマルのエンジンに比べると高くなります。多くの人には関係ありませんが、前述のように多段ATを活用し低回転域の力強さで走るセッティングなので、自然吸気エンジンの高回転域のパワーや甲高い排気音に快感を見出していた人の期待には応えきれないでしょう。

 

ターボはパワーアップにも低燃費にも使える!

ターボはパワーアップにも低燃費にも使える!

ターボがパワーの源であるのは、いまも昔も変わりません。同じ排気量同士ならターボ付きエンジンの方がパワーは出るからです。一方で大排気量の自然吸気エンジンと比べると、同じ程度のパワーを発揮する小排気量のダウンサイジングターボの方が燃費の点で優れています。ゆえにターボは使い方次第でパワーアップにも役立ち、燃費のためにも貢献するということになるのです。

 

※記事の内容は2019年12月時点の情報で制作しています。

車種から記事を探す

注目のキーワード
LINEで無料診断してみる

©2024 Nyle Inc.