中古車選びの購入予算の中心が100万円です。新車では買える車がほとんどない予算100万円ですが、中古車ではさまざまなボディタイプ、さまざまな車種から選ぶことが可能です。今回は中古車についても長年、取材・執筆を続けている自動車評論家の萩原さんに、100万円以下で買える中古車について詳しく解説してもらいましょう。
100万円は中古車購入予算の中心、さまざまな車種が選べる
中古車購入の予算の目安としてよく言われるのが100万円。現在、新車だと予算100万円で購入できるのは軽自動車のスズキアルトとダイハツミライースぐらいですが、中古車ではさまざまなボディタイプのさまざまな車種が、旧型モデルだけでなく現行型ですら選択が可能となります。
車の購入価格として100万円は決して高いものではありませんが、中古車では自分の使い方や目的など、何を重要視するかによって選択肢が広がります。軽自動車はもちろん、コンパクトカーやセダン、ミニバンやSUV、そしてスポーツカーなどが圏内となり、購入できないのはFCHV(燃料電池車)のトヨタミライぐらいでしょう。
先進安全装備は気にかけたい
そんな予算100万円で購入できる中古車の中で、いまおすすめしたいのは安全運転支援システム(先進安全装備)が充実している車です。衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い防止装置などの先進安全装備は、100万円以下という低価格の中古車においても装着車が増えてきました。軽自動車やコンパクトカーはもちろん、ボディサイズが小さなセダンやSUVであれば、かなり多くの車種が先進安全装備を装着しています。
さまざまな選択肢のある100万円以下の中古車ですが、今回は事故の軽減効果が立証されている先進安全装備を考慮しつつ、おすすめ車種をボディタイプ別にチョイスしてみましょう。
【軽自動車】現行型ホンダN-BOXも候補に、狙いやすいのはダイハツタントやスズキワゴンR
まずは、軽自動車です。人気の高い軽スーパーハイトワゴンからピックアップしましょう。圧倒的な販売台数でNo.1を続ける現行型ホンダN-BOXも予算100万円で購入できます。まだ流通台数は37台と少ないですが、標準モデルのG Lホンダセンシングならば、黒やシルバーといった人気色の中古車が手に入ります。現行型なので先進安全装備はACC(アダプティブクルーズコントロール)も用意されるなど十分です。
2019年にフルモデチェンジを行い旧型になったばかりのダイハツタント。こちらは年式によってスマートアシスト、スマートアシストII、スマートアシストIIIと採用されている先進安全装備が異なりますが、スマートアシストIIとIIIならばその実力は十分です。全部で約4400台流通している先代タントのうち、予算100万円でしぼっても1200台以上もあります。標準モデルの660Lならば、ステレオカメラ方式の最新バージョンであるスマートアシストIII搭載車で走行距離5000kmという好コンディション物件にも手が届きます。
続いて軽自動車のスタンダードモデルと言えるスズキワゴンRの2017年に登場した現行モデル。3種類のフロントマスクデザインを採用し、先進安全装備は多機能なものとなっています。現在約4200台の中古車が流通していますが、そのうち100万円以下の中古車は約1800台にのぼります。FXやFZが主流でスティングレーはあまり流通していません。ボディカラーは白や黒、ブルーといった色が多くなっています。
軽オープンカーのダイハツコペンの中古車も予算100万円以下で手に入ります。流通台数はわずか5台で、いずれも走行距離は10万kmと年式の割に走行距離は延びていますが、セカンドカーとして手に入れると運転する楽しさに目覚めてしまうかもしれません。
【コンパクトカー】ハイブリッドのトヨタアクア、日産ノートe-POWER、ホンダフィットなど人気車も揃う
予算100万円でコンパクトカーの中古車を探すと、ほとんど全メーカーのコンパクトカーが対象となります。まずはハイブリッドコンパクトカーのトヨタアクアです。アクアの中古車の流通台数は約8200台と豊富で、そのうち半数を超える約4400台が予算100万円で購入可能です。特別仕様車のSスタイルブックやクロスオーバーテイストをプラスしたX-アーバンなどさまざまなグレード、そして多彩なボディカラーから選ぶことができます。
2018年新車登録台数No.1に輝いた日産ノート、その栄光の原動力となったe-POWERも予算100万円で狙えます。総流通台数約6000台のうち100万円以下のプライスを付けた車が約2650台。そのうち約80台がe-POWER。また、スポーティモデルのNISMOも13台と少ないですが、手に入れることができます。
コンパクトカーながら、ミニバン並みのシートアレンジが特徴のホンダフィット。東京モーターショーに新型モデルが出展され、2020年2月にフルモデルチェンジが予定されています。2013年に登場した現行型フィットの中古車の流通台数はトータル約4500台。そのうち約1650台が100万円で購入可能です。中古車は前期モデルが中心となりますが、ハイブリッド車も狙えますし、台数はわずかですが、ホンダセンシングを搭載した後期型も見つかります。
2019年にマツダ2へと名称変更しましたが、実質同じモデルである2014年登場のマツダデミオも手に入ります。トータルで約2200台の中古車が流通していますが、そのうち約560台が予算100万円の圏内となっています。1.3Lのガソリンンエンジン車だけでなく、燃費性能に優れた1.5 Lディーゼルターボ車も数多く流通しています。
コンパクトカーで最後に紹介するのがスズキスイフトです。2016年に登場した現行モデルの中古車は約1050台流通していますが、300台が予算100万円で狙えるようになっています。走行距離が少ない物件も多いので、スイフトは特に狙い目のモデルです。
【ミニバン】数は少ないが現行型トヨタシエンタや高級ミニバンの日産エルグランドも選択肢に
国産車のミニバンの中で最もボディサイズがコンパクトなのがトヨタシエンタです。サードシートを畳むとセカンドシートの下に収納できるなど、優れたパッケージングで人気車種となっています。2015年に登場した現行型の中古車はすでに約2300台流通していますが、人気モデルだけに、予算100万円で購入できるのはわずか7台となっています。
惜しまれつつ2019年11月に新車販売の幕を下ろしたエスティマ。独特なワンモーションフォルムでファンの多い車です。2006年登場とモデルライフが長いので、流通台数は約2200台と豊富です。そのうち約1200台が予算100万円以下で購入可能となっています。箱型ミニバンが多い中、スタイリッシュなエスティマはオシャレですね。
日産のフラッグシップミニバンであるエルグランド。2010年に登場したロングセラーモデルの現行型も予算100万円で購入できるようになっています。走行距離は最も少ないものでも5万kmと多めですが、約90台も見つけることができます。
SUVに匹敵する悪路走破性を備えた個性派ミニバンの三菱デリカD:5も約380台の中古車が予算100万円以下で購入できます。さすがに2.2Lディーゼルターボ車は流通していませんが、2WD車だけでなく、4WD車も手が届きます。
そして現行型ミニバンで人気の高い車種の1つであるトヨタヴォクシー。まだ13台と少ないですが、予算100万円で手に入る中古車が流通し始めました。走行距離が延びた中古車が多いですが、ガソリン車だけでなく、優れた燃費性能を発揮するハイブリッド車も見つけられます。
アイサイト搭載のスバルフォレスターや、好燃費のマツダCX-5ディーゼルも
SUVではミドルクラスSUVの人気モデル、日産エクストレイル。現行モデルは2013年に登場し、現在2650台の中古車が流通しています。そのうち15台が100万円以下のプライスを付けており、運転支援システムのエマージェンシーブレーキ装着車も多く流通しています。
ホンダのコンパクトSUV、ヴェセルの中古車も100万円以下の車が流通しはじめました。現在はまだ3台と少ないですが、ガソリン車だけでなく、ハイブリッド車も流通しているのは魅力です。
コンパクトカーのデミオをベースとしたSUVモデルが、2015年に登場したCX-3です。100万円以下のプライスを付けた中古車はわずか1台で、しかも6速MT車です。MT車に乗りたいという人にはおすすめです。
同じマツダでも新世代商品の第1弾として2012年に登場した初代CX-5ならば、100万円以下で購入できる中古車は約110台と豊富です。ガソリンンエンジン車もありますが、燃費性能に優れたディーゼルターボ車が多く出回っているのが特徴です。
独自の4WDシステムにより高い悪路走破性を実現し、日本だけでなく世界で評価されているのがスバルです。そんなスバル車の中で最もオフロード性能が高いのがフォレスターです。予算100万円では2012年に登場した旧型モデルがターゲットとなり、31台流通しています。スバル独自の運転支援システム、アイサイト搭載車もあるので、このモデルを積極的に狙いたいところです。
100万円中古車選びで注意したいポイント
100万円以下で購入できる中古車購入時で、最も気をつけたいのは走行距離と年式です。価格が安くても半年後に車検を迎える車であれば、すぐに大きな出費がありますし、走行距離が多い場合はこれまでのメンテナンスの頻度によって交換するパーツが変わるため、大きな出費の可能性があるからです。
そういった場合には定期点検記録簿を確認すると不安は解消されます。この記録簿は人間でいうカルテのようなもので、いつどんなパーツの交換を行ったかが書かれています。気に入った中古車を見つけたら、ぜひこの記録簿を見せてもらうようにしましょう。
価格が安い中古車には理由があり、その最たる例が修復歴です。先ほど紹介した車種のなかでも100万円以下がまだ少ないフォレスターやヴェゼルなどは、修復歴車の比率が高いのは事実です。修復歴車の場合は販売店にどこを修理したのかを聞いて、自分が納得できるかどうかが重要です。少しでも不安がある場合、修復歴車は候補から外したほうが良いでしょう。
これまで保証というとメーカーディーラー系販売店での購入時の話でしたが、最近では普通の販売店でも保証を付けることが可能となってきました。多少、予算オーバーになっても保証は安心材料のひとつです。突然の大きな出費を避けたいのであれば、付けるに越したことはありません。
100万円なら輸入車も候補に入るが…
今回は予算100万円で購入できる国産車を中心に話をしてきましたが、もちろん輸入車も候補に上がります。人気の高いミニやフィアット500などのコンパクトカーをはじめ、年式は古くなりますが、BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスなど、人気の高いプレミアムブランドの車も手に入れることが可能です。輸入車の場合は故障した際の修理費用などメンテナンスコストが国産車より高いことが多く、その点でのリスクはやはりありますが、好きな車であれば故障しても許せる、という方なら狙ってみてもいいのではないでしょうか。
譲れる条件をなるべく増やすことが成功への近道
予算100万円以下の中古車購入に限らず、中古車購入での成功への近道はとにかく条件を緩くすることです。車種やボディカラー、グレードなどはできるだけ人気の高い条件を外すことが大切です。中古車は需要と供給のバランスで価格が決まりますので、人気の高い車やボディカラーは価格が高くなりやすいのです。どうしてもこのデザインじゃなければということであればやむをえませんが、予算100万円で自分の使い方にあったベストの車を探したい!というのであれば、車種やボディカラーなどは一番人気ではなく、二番、三番手ぐらいだと期待以上に良い車が見つかる可能性が高くなります。
※記事の内容は2019年12月時点の情報で制作しています。