試乗前は「あの爽快シビックのe:HEVか。なんとなく乗り味が想像つくなぁ」と思っていましたが、ホンダさん、すみませんでした!見事に予想がはずれました!これはヤバいです!
というわけで、2022年6月30日に発売されたホンダ「シビック e:HEV」の試乗会が、八ヶ岳山麓で開催されましたので、そのレポートをお届けします。
「e:HEV」とは?
※e:HEVについてご存じの方は、どうぞお読み飛ばしください。
「e:HEV」は「イー・エイチイーブイ」と読みます。ホンダの最新型ハイブリッドシステムの名称で、フィット、ヴェゼルなどホンダの新しい主要モデルに採用されています。
e:HEVの特徴は、「シリーズ式」ハイブリッドと「シリーズ・パラレル式」の両方のおいしいとこどりをしたところになります。
シリーズ式とは?
シリーズ式は、エンジンが発電専用となり、100%モーター駆動で走るハイブリッド方式です。日産「e-POWER」はこの方式です。
駆動力はすべてモーターとなるため、EVと同じような優れた加速力があるのが特徴です。また、雪道など滑りやすい路面での駆動力制御は、エンジンよりモーターのほうが緻密にできるため、走破性・安定性に優れているのも特徴です。
シリーズ・パラレル式とは?
シリーズ・パラレル式は、2つのモーターとエンジンが組み合わされたハイブリッド方式で、「ストロング・ハイブリッド」とも呼ばれています。
ちなみに、「マイルド・ハイブリッド」は、パラレル式ハイブリッドのこととなり、上の2つの方式に対してシンプルで、モーター(ガソリン車の始動・発電用モーターの容量を大きくして併用する方式が多い)を単に加えただけの方式となります。
シリーズ・パラレル式は、文字どおりシリーズ式とパラレル式をミックスしたタイプとなります。機構は複雑になりますが、モーターが得意とする低速域と、エンジンが得意な高速域をコンピューター制御で使い分けて、最も効率が良いパワー配分で走行することができます。また、シリーズ式で走行するときは、モーターだけの駆動となるEVモードになり、より低燃費にすることができます。
シリーズ・パラレル式の「トヨタ式」と「ホンダ式」の違いとは?
主なシリーズ・パラレル式に、いわゆるトヨタ式の「THSⅡ」と、ホンダ式の「e:HEV」があります。
トヨタ「THSⅡ」のキモはエンジンとモーターの駆動力をミックスして駆動輪に伝える「スプリットギア」で、非常に高度で緻密な制御をしています。トヨタのハイブリッド機構は非常に高度で、欧米の自動車メーカーは太刀打ちできなかったと言われています(これが、EVシフトを引き起こした背景の1つとも言われているほどです)。
THSⅡの最大の特徴は燃費の良さ。THSⅡを搭載したヤリス ハイブリッドはクラスNo.1の低燃費記録をもっています。
ホンダ「e:HEV」は、モーターが得意な低〜中速域では、モーター駆動100%で走行し、パワーが必要なときには、エンジンを回し発電量を増やしてモーターへ供給、高速域ではエンジン100%で駆動します。e:HEVは基本、シリーズ式で走行、高速域ではエンジンのみで走る方式です。ちなみに三菱のアウトランダーなどが採用するPHEVシステムもプラグイン機能を除くと同じような仕組みです。
e:HEVの最大の特徴は、走りの良さ。燃費ではTHSⅡに軍配が上がりますが、ドライビングプレジャーは、e:HEVに軍配が上がります。かといって、e:HEVの燃費が悪いわけではありません。走りを楽しみたい方には、e:HEVがおすすめですね。
モーターとエンジンのパワー特性の違い
モーターは、理論上0回転のときが最もトルクが太くなり、回転数が上がるに従ってトルクが落ちていく特性があります。グラフにすると右肩下がりになります。
エンジンのパワー特性をグラフにすると山形になりますが、高回転域でもパワーの落ち方が少なく、速度に対して効率のいい(燃費がいい)走行が可能となります。
モーターが苦手な高速域では、空気抵抗も大きくなります(空気抵抗は速度の2乗で大きくなる)。EVが高速巡航が苦手といわれているのは、このためです。
シビック「e:HEV」の予想外の走り!
冒頭でお伝えしましたが、試乗前は「なんとなく乗り味が予想つくなぁ」と思っていました。
2021年8月に発売された新型シビックのガソリン車は、すでに試乗を済ませています。シビック e:HEVに試乗する数週間前には、新型ステップワゴンのe:HEVに乗っていたこともあり、なんとなく乗り味の予想ができました。
e:HEVは、2020年2月に発売された新型フィット以降、一皮むけてとても良くなったと思っています。新型シビック(ガソリン)も、「爽快シビック」の名のとおり、気持ちのいい走りと、四輪がしっかりと地面についた安定感ある走りで、筆者はとても高く評価しています。特に長距離運転でも疲れが少なかったのは特筆すべきポイントでした。
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シビック e:HEVに初めて試乗して、たった数百mで、思わず「おーーーっ!」と声を上げてしまいました。
アクセルを踏み込むと、なんと!マニュアル車のようなエンジンの回転音の高まりと、シフトチェンジする心地よい音が耳に入ってくるではありませんか!
アクセルを全開にすると、これぞホンダ!エンジンの咆哮が聞こえてくるのです!
いや、もう、参りました。筆者の予想はまったくはずれました。
e:HEVは、前述したとおり低〜中速域ではモーター100%駆動ですし、そもそもハイブリッドなのでトランスミッションがなく、シフトチェンジはありません。まるでマニュアル車やステップ式ATのようなギアチェンジに合わせたエンジン音の演出をしているのです。
シビック e:HEVは、ノイズキャンセル機能とアクティブサウンドコントロール機能を有しており、作られた音がスピーカーから流れる構造をもっています。人工的なエンジン音ではありますが、まったく自然な音です。
これからシビック e:HEVの試乗をされる方、どうかディーラー担当者にお願いして、強めの加速をさせてもらってください。シビック e:HEVの価値がそれですから。
※記事の内容は2022年7月時点の情報で制作しています。