人気の軽自動車スーパーハイトワゴンのなかでも個性的な内外装が光るスズキスペーシア。標準車、カスタム、ギアと3つのスタイルを用意し、ホンダN-BOXやダイハツタントとは少々方向性の異なるモデルだ。今回はそんなスペーシアの徹底レビューをお届けしよう。
現行型で一気に人気モデルとなった
現在軽自動車の主力モデルとなっているスーパーハイトワゴン。軽自動車最大級の室内空間をもち、リアには利便性の高いスライドドアを採用しているのが特徴です。ホンダN-BOX、ダイハツタント、日産デイズルークス/三菱eKスペース、そしてスズキスペーシアが代表車種となります。
先代スペーシアのときは、圧倒的な人気を誇るN-BOX、助手席側のセンターピラーレスでパノラマオープンドアを採用するタント、そしていち早く運転支援システムを採用し、車内の空気を循環させるサーキュレーターを採用するなど快適装備が充実したデイズルークス/eKスペースが3強を形成し、スペーシアは常に4番目のポジションに甘んじていました。しかし、その3強+スペーシアという勢力図は2017年2月のスペーシアのフルモデルチェンジで塗り替えられます。モデル末期ということもあり、タントやデイズルークス/eKスペースの販売台数が伸び悩む中でスペーシアは第2位に躍進し、一時は王者N-BOXに肉薄した時もありました。今回はその大躍進の理由を紹介しつつ現行型スペーシアを徹底レビューします。
スーツケースをモチーフにした個性的なスタイル
2017年12月に登場した2代目となる現行型スペーシアはプラットフォームと呼ばれるクルマの基礎から一新。軽くて強い高張力鋼板の使用を拡大し、ボディ剛性の向上と軽量化を両立しました。登場時のモデルラインナップは標準車と迫力のあるデザインを身にまとったカスタムの2種類。外観デザインは旅の道具を詰め込むときのスーツケースがモチーフで、遊び心があり愛着のわくデザインとなっています。
標準車のスペーシアは「ワクワク、楽しさ」を感じる新しいスタイルを採用しています。特徴的な塗り分けをされたツートーンルーフ車には、「ワクワク感」を演出するルーフレールを装備しアウトドアテイストを強調。
一方のスペーシアカスタムはボリュームのある大型メッキフロントグリルやLEDヘッドランプにより、精悍で迫力あるデザインとなっています。さらに、ワイド感を強調するアンダーグリルやLED加飾、低く構えたサイドアンダースポイラーやリアバンパーを採用し存在感を高めています。
インテリア雑貨のような室内空間
インテリアは水平基調のデザインを採用。伸びやかさと見晴らしの良さを表現したインパネ形状により、運転席前の視界を確保し、開放感のある広々とした室内空間を演出しています。
外観同様、スーツケースのモチーフをインテリアにも採用することで一体感を表現しています。室内には天井に車内の空気を循環させるスリムサーキュレーターを採用しリアシートへの空調も配慮しています。
標準車は引き締まった印象のブラック内装が基本。エアコンルーバーやドアトリムなどに赤色のアクセントカラーを取り入れ、遊び心を盛り込んだ空間としています。(上級グレードでは上の写真のようなベージュ内装も選択可能)。
スペーシアカスタムは、ブラックを基調とし、ブラックパールのカラーパネルを採用したのに加えて、上品なピアノブラックや華やかなメッキ加飾、存在感のあるシルバー加飾を随所に施して、迫力のあるインテリアとしています。
SUVライクなスペーシアギアを追加、3つのスタイルで差別化に成功
スペーシアの大躍進を支えたのはN-BOXやタントと方向性の違う雑貨ライクな内外装ですが、さらに2018年12月に追加されたスペーシアギアも人気に拍車をかけました。スペーシア第三の矢として登場したスペーシアギアはSUVテイストを利かせたクロスオーバーモデルです。
外観はジムニーやハスラーといったスズキのSUV車共通の丸型のヘッドランプを採用。そしてフロントグリル、フロント・リアバンパー、サイドドアガーニッシュ、ルーフ色などをガンメタリック色で統一した専用装備や、積載に便利なルーフレールを標準装備し、SUVらしいタフでアクティブなデザインとなっています。
ブラックを基調としたインテリアには、メーターやシートステッチなどにオレンジのアクセントカラーを施し、ツールボックスをモチーフにしたインパネアッパーボックスを採用。撥水加工を施したファブリックシートとあわせてタフでアクティブな中にも遊び心が感じられる空間を演出しています。
現行型スペーシアは3モデル共通してアウトドアテイストを利かせて、アクティブなファミリーが乗るクルマというイメージ戦略でN-BOXとの差別化に成功し販売台数が伸びたと言えるでしょう。
マイルドハイブリッドの採用でパワーと燃費を両立
スペーシアファミリーに搭載されるエンジンは660ccの直列3気筒DOHCと直列3気筒DOHCターボの2種類で、いずれもISGと呼ばれるモーター機能付き発電機とリチウムイオン電池を組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載。発進時はモーターのみで走行可能となっています。組み合わされるトランスミッションはCVTで、駆動方式は全グレード2WDと4WDを用意。燃費性能は一部のグレードはJC08モード燃費で30km/Lを超えており、軽スーパーハイトきっての優れた燃費性能を発揮します。
安全装備は充実しているがライバルたちの進化も速い
安全装備は前方の車両や歩行者の検知を可能とした衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキ」に加え、後退時の衝突被害軽減ブレーキ「後退時ブレーキサポート」を全車に標準装備。またフロントガラス投影式の「ヘッドアップディスプレイ」をメーカーオプションとするなど、軽自動車の枠を超えた装備が魅力となっています。
しかし日進月歩の安全装備、ダイハツタントが2019年7月にフルモデルチェンジを行い「次世代スマートアシスト」で多彩な運転アシスト機能を設定しました。そして2020年2月頃には日産デイズルークス/三菱eKスペースのフルモデルチェンジが予定され、「プロパイロット」が用意されることは間違いないでしょう。スペーシアを除いたスーパーハイトワゴンの各モデルは高速道路での追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールを採用していますので、次回のマイナーチェンジでは、そのあたりを改良してくると考えられます。
街乗りに最適なやわらかい乗り心地
標準車のスペーシアをはじめ、スペーシアカスタム、スペーシアギアと3モデルすべてに乗りました。マイルドハイブリッド機能により、実際の燃費性能には目を見張るものがあります。
足回りは街乗りをメインに置いた非常に乗り心地重視のソフトな味付けとなっています。荒れた路面の通過や段差を乗り越えるときの衝撃を和らげてくれるのは、室内、特に後席によるお子さんへの配慮と思われます。その半面、高速道路など速度が上がるとやや落ち着きがなくなる傾向が見られました。そう考えるとスペーシアは街乗り中心という人にピッタリではないでしょうか。
スペーシアファミリーの車両本体価格は標準車のスペーシアが135万8500円〜161万9200円、スペーシアカスタムが160万6000円〜194万3700円。そしてスペーシアギアは164万4500円〜184万6900円となっています。
プラットフォームが軽量化されたこともあり、自然吸気エンジンでもストレスなく走り、好燃費を誇るスペーシア。個性的な内外装もライバルたちとの差別化という点で魅力的です。
※記事の内容は2019年12月時点の情報で制作しています。