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スーパーハイトワゴンに押されているものの
最近の軽自動車の売れ線は、ダイハツのタント、スズキのスペーシア、ホンダのN-BOXといったスーパーハイト系と呼ばれるモデルたち。スーパーハイト系の持ち味はなんといっても広大な室内空間で、約1.8mという高い車高と四角いボディ形状が生みだす広々感は圧倒的だ。室内で立ったまま子供を着替えさせたり、雨の日にお子さんを塾まで迎えにいって自転車ごと回収したりと、特に子育て層にとっては便利この上ない。また、最近増えている小型車や普通車からの乗り換え組にとっても広大な室内は大きな意味を持っている。下手な3ナンバー車よりも広いスペースには、軽自動車に乗り換えたデメリットを忘れさせてくれるほどの説得力がある。
そんなスーパーハイト系に押されつつあるのがハイト系と呼ばれる車高1.7m弱のジャンルだ。低めの車高なのにハイト系と呼ばれるのは、アルトやミライースといったセダン系と呼ばれるジャンルと比べて背が高いから。スズキのワゴンR、ダイハツのムーヴ、日産/三菱のデイズ/eK、そしてホンダN-WGNがハイト系にあたる。
ハイト系はスーパーハイト系よりは価格が控えめだし、室内も決して狭くはない。そういう意味ではバランスの取れたジャンルなのだが、圧倒的な広さとスライドドアというわかりやすい魅力を持つスーパーハイト系と比べるとサプライズを演出しにくいのが苦戦の理由だろう。
毎日乗る人なら気付く「こだわり」が盛り込まれている
そこでホンダがN-WGNで提案してきたのが「毎日の大切へのこだわり」だ。これだけだとちょっとわかりにくいが、要するに通勤や通学などで毎日乗る人にとって重要な部分に磨きをかけたということ。
具体的にはフロントのピラーをできるだけ細くすることで死角を減らしたり、ホンダの軽自動車としては初めてステアリングを上下&前後に調整できるようにしたり、小物類の収納を充実させたりと、運転のしやすさや日常的な使い勝手にとことんこだわった。
1人で、カップルで乗るならおしゃれなのはこちら
室内に乗り込むと、正直N-BOXのような圧倒的な広さ感はない。リアドアも普通のスイング式だ。しかし、だからといって狭いかというと決してそんなことはなく、足元も頭上も後席も十分広々としているし、シートの着座感もゆったりしている。
家族でお出掛けするならスーパーハイト系を選ぶ価値はあるけれど、カップルで乗るならむしろN-WGNのほうがちょうどいいというか、しっくりくるなと思った。ましてや通勤や通学に1人で乗るなら、四角い箱よりもこちらのほうがずっとおしゃれな感じがある。
見慣れるほどに素敵に見えてくるデザイン
おしゃれと言えば、デザインの進化も特筆点だ。無駄な線を省いたシンプルな造形でありながら貧相な感じがまったくないのは、ボディサイドの面を微妙にうねらせ表情を与えているから。線ではなく面でアクセントを付ける手法は新型FITにも採り入れられたホンダデザインの新しい方向性で、最初は物足りなく感じるかもしれないが、見慣れていくにつれどんどん素敵に見えてくるだろう。
とりわけ数が売れるクルマの場合、強すぎるデザインは街の風景を乱してしまう。N-WGNのようなシンプルなデザインが街に増えれば、日本の風景はいまより美しくなるはずだ。
カスタムの最上級グレードのターボモデルの走りは驚くほど上質
エンジンは自然吸気とターボの2種類。街中の流れに乗って走る分には自然吸気でもなんら不足はない。ただし、ターボは低中速トルクがより太くなるので、絶対的な加速力だけでなく、日常域での余裕も大きくなる。予算に余裕があればターボを選ぶのも大いにありだと思う。
特にターボを積んだ「カスタム」の最上級仕様には15インチタイヤと上質なダンパーがおごられ、こいつの乗り味は驚くほど上質だ。乗り心地や静粛性は軽自動車とは思えないレベルに達している。標準モデルにもターボはあるが、15インチタイヤと上質ダンパーの組み合わせがないのはなんとも残念。シンプルなデザインと上質な走りのコンビネーションが登場すれば、N-WGNの魅力はさらに向上すると思う。
※2019年11月の情報で制作しています。